オンラインでスーパーの買い物をしていると、「こちらの商品はいかがですか」といったおすすめ表示を目にすることがあります。こうした提案の仕組みを応用し、より健康的な商品や環境負荷の低い商品への「置き換え(スワップ)」を勧めたら、実際に人々の買い物の中身は変わるのでしょうか。米国スタンフォード大学医学部やノースカロライナ大学、スイス連邦工科大学チューリッヒ校などの研究者らが、この問いをランダム化比較試験で検証しました。
研究チームは2025年5月から6月にかけて、米国の成人1,201人を対象に、実験用に作られたオンライン食料品店で模擬的な買い物課題を週1回、合計3回実施しました。1回目は全員が介入なしで買い物を行い、その後参加者は「気候スワップ」「健康スワップ」「気候+健康スワップ」「対照群(介入なし)」の4つのグループにランダムに割り付けられました。気候スワップ群には炭素排出量の少ない商品への置き換えが、健康スワップ群には栄養面で優れた商品への置き換えが提案され、両方を組み合わせた群も設けられています。買い物かごの中身は、英国の放送通信規制機関Ofcomが定める栄養プロファイルスコアで健康度を、二酸化炭素換算kgという単位で環境負荷(炭素排出量)を、それぞれ評価しました。
スワップ提案で買い物内容はどう変わったか
結果として、気候スワップ・健康スワップ・気候+健康スワップのいずれの提案を受けたグループも、対照群と比べて購入食品の健康度が改善したと報告されています。特に健康スワップ群と気候+健康スワップ群では、気候スワップ単独の群よりも健康度の改善幅が大きかったとされています。
一方、炭素排出量については異なる傾向が見られました。気候スワップ群と気候+健康スワップ群では対照群と比べて炭素排出量が有意に減少しましたが、健康スワップのみを提案されたグループでは、炭素排出量の削減効果は確認されなかったとのことです。つまり、健康的な商品への置き換えが自動的に環境負荷の低い買い物につながるわけではなく、環境面での効果を狙うのであれば、それに特化した提案が必要になる可能性が示唆されています。また、参加者の年齢や、もともとの健康意識・環境意識の高さによって、これらの効果に違いは見られなかったと報告されています。
この研究を読むうえで気をつけたいこと
この研究は、実験用に用意された「模擬的な」オンライン食料品店での買い物課題をもとにしています。研究チーム自身も、参加した1,201人の米国成人のサンプル構成が米国全体の人口構成と一部異なっていること、そして実際の店舗(実店舗やリアルなオンラインストア)でも同様の効果が得られるかどうかは明らかではないことを、研究の限界として挙げています。今回の結果はあくまで一つの実験環境での知見であり、そのまま実社会でのスーパーの買い物行動に当てはめられるとは限らない点に留意が必要です。
まとめ
今回の試験では、オンライン食料品店における食品スワップの推奨が、購入食品の健康度を高める方向に働く可能性、また気候に配慮したスワップであれば炭素排出量の削減にもつながる可能性が示されました。ただし健康面への提案だけでは環境負荷の低減にはつながらなかったとされており、目的に応じて提案内容を使い分ける必要がありそうです。この結果は一つの研究から得られたものであり、実際の店舗環境でも同様の効果が再現されるかどうかは今後の検証を待つ必要があります。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。出典(原著論文):Anna H. Grummon, K. O’Sullivan, Amanda B. Zeitlin, et al. Effect of food swap recommendations on the healthfulness and carbon footprint of grocery purchases in a naturalistic online store: A randomized parallel trial. プロスメディシン (2026). DOI: 10.1371/journal.pmed.1004847. 原著ライセンス: cc-by.