「感謝の気持ちを持つこと」は、これまでにも心の健康や幸福感との関連が指摘されてきたテーマです。では、感謝の気持ちの強さは、日々の食事とも関係しているのでしょうか。一見つながりが見えにくいこの2つのテーマについて、フランスの大規模コホート研究「NutriNet-Santé」のデータを使って調べた研究が、科学誌サイエンティフィック・リポーツに2026年08月に掲載予定です。
研究でわかったこと
この研究は横断的研究と呼ばれる手法で行われました。2017年に、NutriNet-Santéコホートに参加していた20,190人が「感謝の気持ちの強さ」を測る質問票(Gratitude Questionnaire-6)に回答し、あわせて少なくとも3回分の24時間食事記録を提出しました。食事の質は、フランスの国の栄養健康プログラムが定めるガイドラインへの遵守度を示す指標(mPNNS-GS)で評価されたほか、食品の加工度(NOVA分類による超加工食品の摂取量)、植物性食品を中心とした食事かどうかを示す指数、そして有機食品の摂取割合なども調べられました。分析にあたっては、性別ごとに分けたうえで、社会人口統計学的な特徴や生活習慣の違いを考慮した統計処理(ロジスティック回帰・線形回帰)が行われています。mPNNS-GSに関する分析には17,992人分、有機食品に関する分析には14,222人分のデータが用いられました。
結果として、感謝の気持ちが強い人ほど、食事ガイドラインへの遵守度が高い傾向が見られました(GQ-6のスコアが1点上がるごとの関連の強さを示すβ値は、女性で0.07、男性で0.09)。また、感謝の気持ちが強い人ほど健康的とされる食品群の摂取が多く、超加工食品の摂取は少なく、有機食品や植物性食品が食事に占める割合も高い傾向が示されました。一方で、女性においては、感謝の気持ちの強さがファストフード、アルコール飲料、加糖飲料といった、いわゆる「あまり健康的とはいえない」食品群の摂取の多さとも関連しており、単純に「感謝の気持ちが強い=食生活が全て健康的」とは言い切れない、やや複雑な結果も見られたと報告されています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究はある一時点でのデータをもとにした横断的研究であり、感謝の気持ちと食生活の関連が示されたとしても、どちらが原因でどちらが結果なのか、あるいは両者が別の要因によって同時に影響を受けているだけなのかは、この研究だけでは判断できません。論文の著者らも、両者の時間的な関係を明らかにするためには、追跡調査や介入研究といった今後のさらなる研究が必要だと述べています。あくまで一つの研究であり、これによって結論が確定したわけではない点には注意が必要です。
まとめ
感謝の気持ちの強さと、健康的とされる食事パターンや有機・植物性食品の摂取割合の高さとの間に関連が見られたことは、心のあり方と食生活のつながりを考えるうえで興味深い手がかりといえそうです。ただし女性では一部の「健康的とは言えない」食品群との関連も見られており、両者の関係は単純ではないことも示されました。今後の追跡調査や介入研究の進展が待たれるところです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:NutriNet-Santé研究における感謝の気持ちと健康的な食事および有機・植物性食品摂取量増加との関連(サイエンティフィック・リポーツ・2026年08月)