著者の所属・活動拠点の国は、レソトです。
掲載誌:Zenodo (CERN European Organization for Nuclear Research)
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的:ソルガムを加工したら成分はどう変わるか
ソルガム(モロコシ、Sorghum bicolor)は、干ばつややせた土地にも強いアフリカ原産の穀物です。世界では小麦、トウモロコシ、米、大麦に次ぐ重要な穀物で、グルテンを含まない点も特徴です。レソトでは現地語で「マベレ」と呼ばれていますが、伝統的な調理に手間と時間がかかることや食習慣の変化から、利用が減っていると論文は述べています。
ソルガムの粒には、タンニンなどのポリフェノールが含まれます。タンニンは苦味や渋みのもとになるほか、たんぱく質やミネラルと結びついて栄養素の利用を妨げうるため、「抗栄養因子」とも呼ばれます。
著者は、ソルガムの利用を広げる方法として、保存性のある焼き菓子「ラスク」に加工する方法に注目しました。ここでいうラスクは、生地を焼いたあと切り分け、低い温度で再び焼いて乾燥させる二度焼きの食品です。レソトでは、全粒ソルガム粉をラスクに加工したときに栄養成分がどう変わるかを調べた情報が限られていました。そこでこの研究では、粉とラスクの基本的な栄養成分とタンニン量を比べました。
何を調べたか
材料のソルガムは、レソトの地元農家から購入しました。粒を選別・洗浄・乾燥させたあと、小型のハンマーミルでひき、ふすま(外皮)、胚芽、胚乳をすべて残した全粒粉にしました。
ラスクは、この粉にカボチャ、卵、牛乳、マーガリン、レーズン、砂糖、塩、重曹を加えて作りました。生地を180℃で焼いたあと切り分け、80℃でゆっくり再加熱して乾燥させています。
粉とラスクのそれぞれについて、水分、灰分(ミネラル全体の目安)、粗繊維、脂質、たんぱく質を標準的な分析法で測りました。炭水化物はこれらを100から差し引いて求め、エネルギーは計算で算出しています。タンニンは、試薬を加えたときの発色の強さから量を求める方法で測定しました。測定はそれぞれ3回行い、統計的に差を検定しています。
主な結果:ラスクではたんぱく質と脂質が多く、水分とタンニンが少なかった
測定したすべての成分で、粉とラスクのあいだに統計的に意味のある差が見られました。ラスクのたんぱく質は100gあたり16.65gで、粉の8.89gより多くなっていました。脂質は粉の2.60gに対しラスクは14.71g、灰分は1.22gに対し2.14gで、いずれもラスクのほうが多い結果でした。エネルギーもラスクのほうが高くなっています。著者は、これらが増えた主な理由を、卵や牛乳、マーガリン、カボチャなどの材料を加えたことにあるとしています。
一方、粉のほうが多かった成分もあります。水分は粉が10.9g、ラスクが6.5gでした。著者は、焼成と乾燥の工程で水分が抜けたことと矛盾しない結果だと説明しています。炭水化物は粉が71.29g、ラスクが56.26gでした。粗繊維は粉が5.10g、ラスクが3.74gで、他の材料が加わって粉の割合が薄まったことが主な理由として考えられるとしています。
タンニン量は、粉の100gあたり3.90gから、ラスクでは3.30gに減っていました(カテキンに換算した値)。この差も統計的に意味のあるものでした。ただし著者は、この減少を加熱だけの効果とは断定していません。焼成や乾燥の影響に加え、他の材料が加わった影響も含めた、粉と完成品のあいだの違いとして示しています。
この研究が示すこと
この研究は、全粒ソルガム粉をラスクに加工すると、たんぱく質や脂質が多く、水分とタンニンが少ない食品になることを、実際の分析値で示しました。著者は、ラスクへの加工がソルガムの利用を広げ、手軽な加工食品を作るための付加価値づけの方法になりうると結論づけています。
一方で、確かめられていない点もあると論文は明記しています。水分の低さは保存性の向上につながる可能性がありますが、実際の日持ちや微生物に対する安定性は評価していません。また、タンニンの減少にも栄養上の意味がありうるものの、ミネラルの吸収率やたんぱく質の消化性は測っておらず、栄養素の吸収が良くなった直接の証拠とは見なせないとしています。今回の結果は、加工によって成分の量がどう変わったかを示したものであり、ソルガムを身近な食品に生かすための基礎的な情報といえます。
著者:Pulane Nkhabutlane(Department of Agricultural Economics and Extension, Consumer Science Unit, National University of Lesotho, Roma, Lesotho)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Pulane Nkhabutlane. Proximate Composition and Tannin Content of Whole Grain Sorghum Flour and Formulated Sorghum Rusks. Zenodo (CERN European Organization for Nuclear Research) 2026-09-17. DOI: 10.5281/zenodo.23367699. 原著ライセンス:CC BY.