著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。
掲載誌:Indonesian Journal of Legal and Forensic Sciences (IJLFS)
ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF
食品保存と腐敗に関わる細菌を調べる
研究チームは、加熱した水産食品、とくに焼きマグロに関わる細菌バチルス・ベレゼンシスについて、正確な識別方法や腐敗の仕組み、汚染源を追跡する方法を文献から整理しました。この細菌には、ほかの微生物を抑える物質を作る一方、魚肉の腐敗にも関わるという二面性があります。
著者らは、2020年から2026年初めまでを対象に複数の学術データベースを検索し、最初に見つかった1,565件から84件の研究論文を選びました。食品や海洋、加熱環境に由来する菌を扱った研究をまとめたもので、今回新たに焼きマグロから菌を採取して実験した研究ではありません。
近縁の菌を見分けるには広い遺伝情報が必要
レビューの主要な論点は、細菌の識別によく使われる16S rRNA遺伝子だけでは、この菌を近縁種から十分に見分けられないことです。著者らによると、この遺伝子の配列は近縁種との類似度が99%を超えており、別の菌名として判定されることがあります。
そこで論文は、複数の遺伝子を組み合わせて比べる方法や、遺伝情報全体を読む全ゲノム解析の重要性を示しています。さらに、菌株どうしのゲノムの細かな違いを、採取した場所や時期の情報と照合することで、製造工程のどこから汚染が広がったかを追跡する枠組みを整理しました。
加熱後に残る芽胞と、腐敗につながる働き
著者らは、この菌が作る芽胞に注目しています。芽胞とは、厳しい環境に耐える休眠状態の構造です。論文は、加熱を生き延びた芽胞が保存中の焼きマグロで再び増殖を始め、タンパク質や脂質を分解する酵素によって、身の軟化や崩れ、異臭につながるとまとめています。また、加工設備の表面に、菌を包んで守る膜状の集まりであるバイオフィルムを作ることも、汚染が持続する要因として挙げています。
このため、完成品から菌が見つかっても、それだけで加熱後の衛生管理に問題があったとは判断できないと著者らは説明しています。原料などに含まれていた芽胞が加熱を生き延びた場合と、加熱後に設備などから付着した場合を区別する必要があります。
有用性と腐敗への関与を分けて捉える
一方で、レビューは、この菌が食品中の病原菌などを抑える多様な物質を作ることも紹介しています。ただし、食品保存に利用する候補の菌株については、毒素に関わる遺伝子や、ほかの細菌へ移り得る薬剤耐性遺伝子の確認が必要だとしています。
この研究が伝えるのは、同じ菌種でも、有用な働きと食品を傷める働きの両方を捉える重要性です。著者らは、正確な菌の識別と汚染経路の追跡を組み合わせることを、水産食品の管理を考えるための基盤として位置づけています。
原著論文の著者・所属:Adnorita Fanda Oktariani(State University of Padang)、Abelissa Abellisa(Department of Veterinary Medicine, Faculty of Medicine, Universitas Negeri Padang, Bukittinggi, 26181, Indonesia)、Riki Kristanto(Department of Forensic Odontology, School of Dentistry, Faculty of Medicine, Universitas Udayana, Bali, 80234, Indonesia)、Asri Asmita Pradnyana Putri Kadek、Mirah Meliana Dewi Ida Ayu、Ni Made Ista Prestiyanti(Department of Forensic Odontology, School of Dentistry, Faculty of Medicine, Universitas Udayana, Bali, 80234, Indonesia)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Adnorita Fanda Oktariani, Abelissa Abellisa, Riki Kristanto, et al. Molecular Identification and Forensic Characterization of Bacillus velezensis Isolated from Tuna Grills: A Systematic Review. Indonesian Journal of Legal and Forensic Sciences (IJLFS) 2026-11-04. DOI: 10.24843/ijlfs.2025.v15.i02.p06. 原著ライセンス:CC BY.