もちもちした食感が特徴の裸麦(ハイランドバーレー)は、食物繊維が豊富な穀物として注目されています。しかし、小麦粉と違ってグルテンを含まず、でんぷんの中でも枝分かれの多い「アミロペクチン」という成分が多いため、生地がまとまりにくく、パンや麺などへの加工が難しいという課題がありました。今回紹介する研究では、この裸麦粉を乳酸菌の一種であるラクトバチルス・プランタルムによる発酵と、でんぷん分解酵素であるプルラナーゼによる処理を組み合わせることで、加工しやすい粉に改質できるかどうかが調べられました。
研究では、酵素処理と発酵をさまざまな順序や組み合わせで裸麦粉に施し、粉の見た目や成分、構造がどのように変化するかが比較されました。その結果、これらの処理によって裸麦粉の見た目や栄養成分が大きく変化し、アミロース(でんぷんの直鎖状の成分)の含有量が増加することが示されました。特に、酵素で分解した後に発酵させた処理群では、アミロース含量が最も高い29.09%に達し、逆にアミロペクチン含量は39.99%まで減少したと報告されています。また、水に溶けやすい食物繊維である「水溶性食物繊維」の含有量は、無処理の18.32%から60.64%へと大きく増加したことも示されました。
構造を詳しく調べたところ、酵素処理と発酵によって、でんぷんを構成する水素結合のネットワークや二重らせん構造が壊されることが分かり、これに伴ってでんぷんが糊化する際の各種パラメータが低下したとされています。この変化は、酵素処理を先に行い、その後に発酵させた組み合わせで最も顕著だったと報告されています。加工特性については、この組み合わせ処理によって粉の保水力が高まる一方、油を保持する力は低下したことが示されました。さらに、生地の弾力性や噛みごたえ(チューイネス)、粘弾性、そしてレオロジー特性(生地の変形しやすさに関する性質)についても、この組み合わせ処理が最も大きく改善する効果を示したとされています。
この研究の位置づけと読むうえでの注意
この研究は、乳酸菌発酵と酵素処理を組み合わせることで、裸麦粉の栄養面や加工のしやすさを改善できる可能性を示したものです。ただし、これは特定の条件下で行われた一つの研究であり、実際の食品への応用や、こうした改質を経た裸麦粉を使った食品が健康にどのような影響を与えるかについては、この要旨だけからは分かりません。今後さらに研究が積み重ねられることで、裸麦粉の新たな活用方法が見えてくることが期待されます。
まとめ
裸麦粉は栄養価が高い一方で加工しにくいという弱点がありましたが、今回の研究では、乳酸菌発酵と酵素処理を組み合わせることで、アミロースや水溶性食物繊維の含有量が増加し、生地の弾力性や粘弾性といった加工特性も改善される可能性が示されました。裸麦を使ったパンや麺などの食品開発において、こうした改質技術が今後どのように活用されていくのか、注目される分野と言えそうです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:ラクトバチルス・プランタルムおよびプルラナーゼ修飾がハイランドバーレー粉の理化学的特性と機能特性に及ぼす影響(フーズ・2026年08月)