この研究は、デンマークの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Food Research International
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
植物由来のチーズ代替品を求める消費者は増え続けていますが、チーズづくりに必要な構造や機能をそなえた高タンパク質のゲルをつくることは、依然として難しい課題だと著者らは述べています。
そこで研究チームは、エンドウ豆タンパク質分離物(PPI、エンドウ豆からタンパク質を取り出して濃縮した原料)を使い、酵素でタンパク質に手を加えることで、高タンパク質のゲルをつくることを目指しました。ここでいうゲルとは、タンパク質どうしがつながってできた網目に水や脂肪が取り込まれ、固形状になったものを指します。
何をどう調べたか
論文によると、著者らは三つの酵素的な処理を組み合わせました。一つは部分的な加水分解で、タンパク質を酵素で部分的に切り分ける処理です。二つ目は部分的な脱アミド化で、タンパク質の一部の構造を変えて水になじみやすくする処理にあたります。三つ目はトランスグルタミナーゼ(TG)という酵素による架橋で、タンパク質どうしを結びつけて網目を強める働きをします。
これらの処理を発酵の過程で行い、そのあとプレス(圧搾)をかけてゲルを仕上げました。できあがったゲルについては、水分や結合水の割合といった組成、硬さや弾性といった物性、そして見た目の構造が調べられ、比較の基準として市販のデンボチーズが用いられました。
報告された主な結果
著者らは、すべての配合でタンパク質を最大17%、脂肪を20%含むゲルが得られたと報告しています。プレスによって水分は76%から62〜65%へ下がり、最終的なゲルには約10%の自由水が残りましたが、この点は酵素処理の違いによらなかったとされています。一方でTG処理をしたものは結合水(タンパク質の網目につかまった水)の割合が増えており、網目の中に水がより強く保たれていることを示すと説明されています。
組成がほぼ同じでも、酵素処理によって硬さは大きく変わりました。未修飾のPPIにTGを加えると硬さは257 gから767 gへ増え、基準としたデンボチーズの804 gに近い値になったと報告されています。脱アミド化は硬さへの影響が限られていた一方、部分加水分解を行ったものはより柔らかく、TGありで406 g、TGなしで138 gでした。弾性については、脱アミド化によってG′(弾性を表す指標)がTGありの条件で28,000〜50,000 Paから33,000〜61,000 Paへ上がり、デンボチーズに近い値に達したとされています。
見た目の観察では、TG処理をした未修飾のPPIは表面が粗く多孔質になったのに対し、脱アミド化したPPIはより滑らかで均一な表面になり、網目の組織化が改善していることを示したと述べられています。
この研究が示すこと
著者らは、脱アミド化または部分加水分解とTGによる架橋を組み合わせることで、栄養組成を損なわずにゲルの硬さと弾力を調整でき、柔らかいものから半硬質のものまで幅のある食感をつくり分けられたとまとめています。
つまり、原料の配合を変えずに酵素処理の選び方だけで物性を動かせる、という道筋が示されたことになります。これは、植物由来のチーズ代替品の開発に向けて有望な物理化学的特性をもつ、高タンパク質のエンドウ豆タンパク質ゲルが得られたことを意味すると論文は述べています。
著者:Ashwitha Poojary(Department of Food Science, University of Copenhagen, Rolighedsvej 26, 1958 Frederiksberg, Denmark)、Ourania Gouseti(Department of Food Science, University of Copenhagen, Rolighedsvej 26, 1958 Frederiksberg, Denmark)、Tomasz Pawel Czaja(Department of Food Science, University of Copenhagen, Rolighedsvej 26, 1958 Frederiksberg, Denmark)、Radhakrishna Shetty(Research Group for Microbial Biotechnology and Biorefining, National Food Institute, Technical University of Denmark, Henrik Dams All'e, Building 202, 2800 Kongens Lyngby, Denmark)、Signe Munk Rydtoft(Arla Foods Innovation Centre, Aarhus, Denmark)、Poul Erik Jensen(Department of Food Science, University of Copenhagen, Rolighedsvej 26, 1958 Frederiksberg, Denmark)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Ashwitha Poojary, Ourania Gouseti, Tomasz Pawel Czaja, et al. Development of high-protein pea-based gels for cheese alternatives: Modulating gel properties via enzymatic modification. Food Research International 2026-08-30. DOI: 10.1016/j.foodres.2026.120615. 原著ライセンス:CC BY.