著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。

掲載誌:ENGAGEMENT Jurnal Pengabdian Masyarakat

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF

研究の目的

飲食は誰にとっても欠かせないため、食品ビジネスは需要が大きく成長を続ける分野だと、著者らは指摘しています。インドネシアでは、零細・中小企業(UMKM)が経済の重要な担い手であり、雇用や家計収入を支える存在とされています。

この研究は、インドネシア・マドゥラ地域のスムネプで営まれている小規模なデザート販売事業「Terro Pole」のデザートボックスを取り上げました。デザートボックスとは、容器に詰めて販売する菓子類のことです。研究チームは、この事業を今後発展させられるかを「事業化可能性調査」の考え方で評価しました。事業化可能性調査とは、新しい事業や事業拡大が成り立つかを、複数の観点から事前に検討する手法です。本研究では、そのうち生産面と市場面の2つに絞って分析しています。

どのように調べたか

研究は、状況を詳しく描き出す記述的な質的研究として行われました。データは、事業の現場での観察と聞き取り調査によって集められています。聞き取りは、あらかじめ用意した質問の枠組みを使いつつ、会話の流れに応じて自由に話を広げる半構造化の形式で行われました。

話を聞いた相手は、事業主、従業員、事業に関わる関係者です。協力者は、知り合いから次の協力者を紹介してもらう「雪だるま式」の方法で選ばれました。分析では、収支などの金銭的な計算は扱わず、生産と市場に関する非財務的な観点から評価しています。

主な結果

論文によると、この事業は個人経営で、開業から数か月しかたっていない段階でした。マーケティング、生産、会計を含む運営は7人で担われていました。正式な事業許可はまだ取得されておらず、場所の利用は口頭での了承にとどまっていると報告されています。

生産面では、立地、原材料、技術、生産工程が検討されました。事業は事業主の自宅を拠点としており、賃料を節約でき、原材料も手に入りやすいとされています。使われている技術は一般的な調理器具程度の簡素なものですが、宣伝にはスマートフォンが活用されていました。生産能力は1日10カップと報告されており、オンラインで宣伝することでマドゥラ地域全体へ販路を広げられるとされています。

市場面では、市場の動向、競合状況、市場シェアが検討されました。著者らは、消費の増加を背景にデザートボックス事業には大きな可能性があると述べています。強み・弱み・機会・脅威を整理するSWOT分析では、上質な原材料を使った独自性のある製品が強みとされました。一方で、よく知られた食品であるために他社にまねされやすい点が弱みとされ、同種の事業を始める競合が増えることが脅威として挙げられました。また、流行の「オレオチーズ」味の商品にはすでに多くのファンがいると報告されています。

これらを総合して、研究チームは生産面では発展させる価値がある「実行可能」、市場面では売上が小規模から拡大しつつあることを踏まえて「おおむね実行可能」と結論づけました。事業の想定期間は約5年とされています。

この研究が示すこと

この研究は、開業間もない地方の小さな菓子事業について、生産と市場の両面から発展の見込みを整理した事例報告です。自宅を拠点に簡素な設備で生産し、オンラインの宣伝で販路を広げるという小規模食品事業の姿と、模倣されやすさや競合の増加といった課題が、具体的に描かれています。財務面の分析は今回の対象外であり、著者らの評価は観察と聞き取りにもとづく生産面・市場面の判断として示されています。

原著論文の著者・所属:Fina Lubnia Sari(Program Studi Ekonomi Syariah, Universitas Trunojoyo Madura)、Abdur Rohman(University Trunojoyo Madura)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Fina Lubnia Sari, Abdur Rohman. Business Feasibility Study Analysis of the Development of the "Terro Pole" Dessert Box MSME: Production and Market Aspects. ENGAGEMENT Jurnal Pengabdian Masyarakat 2026-08-16. DOI: 10.58355/engagement.v5i2.163. 原著ライセンス:CC BY.