掲載誌:Neuroscience Insights Advances in Brain Studies

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

欧米では肥満や糖尿病に関連する病気が増えています。妊娠中に血糖値が高くなる「妊娠糖尿病」は、母親と胎児の双方に健康上の問題をもたらすことがあります。胎内で高血糖にさらされることは、子どもが将来肥満や2型糖尿病になるリスクを高めると報告されています。

著者はこうした背景から、妊娠中に砂糖や甘味料をとってよいのかを主な問いとして設定しました。甘味料と妊娠の関係を調べた研究はまだ限られています。そこで著者は、砂糖と甘味料は人体に似た影響を及ぼすのではないかという仮説を立てました。あわせて、「糖分をとると母親・胎児・新生児にどんな影響が出るか」「妊娠中の高血糖を防ぐために、どうすれば摂取を減らせるか」の二点も検討しています。

一つの家族の経過をたどる方法

研究は事例研究という形をとっています。事例研究とは、少数の具体的な事例を詳しく記述し、分析する方法です。対象は、父方・母方の家系に糖尿病の人がいる「ゾーイ」という仮名の女性と、その3人の子どもです。著者は、同じ両親から生まれた3人の子どもの出産経過や出生時の体格が異なっていた点に着目しました。まず臨床的な経過を示し、そのうえで既存の研究や公的機関の資料を用いて解釈を加えています。

論文によると、1回目と3回目の妊娠ではゾーイの血糖値が高めでした。しかし当時の彼女は、妊娠糖尿病について知りませんでした。1回目の妊娠では出血と子宮の収縮が続き、流産の危険がありました。出産では36時間に及ぶ誘発分娩を経て、緊急帝王切開になりました。子どもは約7.7ポンドで健康に生まれましたが、母親は重い炎症を起こし、2週間の抗生物質治療を受けました。

2回目の妊娠では、血糖値は高くありませんでした。一方で、砂糖を制限せずに日常的にとっていました。生まれた子どもは8.9ポンドを超える大きな新生児で、経腟分娩の後、母親は手術を要する健康問題を抱えました。3回目の妊娠では、腹囲の測定から再び大きな赤ちゃんになると予想されました。そこでゾーイは砂糖をとるのをやめました。生まれた子どもは約7.7ポンドで、3回の中で最も楽な妊娠と出産になったと報告されています。

著者が示した解釈と文献上の知見

著者は、この事例で異なっていた条件は母親の食事だけだったと位置づけています。そのうえで、2回目の大きな新生児は制限のない砂糖摂取によるもの、3回目の順調な経過は砂糖を断ったことによるものと解釈しています。またゾーイは、後の2回の出産では鎮痛薬を使ってはじめて産道が開きました。強い骨盤痛や脚の痛みもありました。著者はこれについて、糖尿病に関連する神経の障害が関わっていた可能性を挙げています。

甘味料については、ゾーイが砂糖の代わりにキシリトールを使った際にも、砂糖をとったときと似た体の反応を感じたと記しています。また、ソルビトールやアスパルテーム、キシリトールなどの甘味料は、製造の過程で糖とつながりがあると説明しています。さらに、デキストロース(ブドウ糖)、グルコースシロップ(水あめ)、フルクトース(果糖)といった名称が糖を指すと消費者に気づかれにくいこと、甘味料はEUで食品添加物として分類されていることを指摘しています。そのため、「シュガーフリー」という表示が甘味料を含まないことを意味するわけではない、と注意を促しています。

著者はほかの研究も引用しています。その研究によると、妊娠中に低カロリーの人工甘味料をとることは、早産のリスクが11%、妊娠糖尿病のリスクが42%高いことと関連していたと報告されています。

研究から伝わること

著者は結論として、糖尿病になりやすい体質の女性や過去に妊娠の合併症を経験した女性にとって、妊娠中は砂糖と甘味料の両方を避ける食事が有益な可能性があると述べています。また、果物などに含まれる天然の糖と、加工の際に加えられる糖を区別することの重要性も指摘しています。妊娠中の母親の血糖値に加え、症状、過去の出産歴、家族の病歴をより重視して見守るべきだという提案もしています。

この研究は一つの家族の経験に基づくものです。著者自身も、食事から糖分を除いた後の変化を、さらに調べるための土台と位置づけています。甘味料を砂糖の無害な代わりと決めつけず、体質や個々のリスクを踏まえて妊娠中の食事を考える必要がある。それがこの事例研究の投げかける視点です。

原著論文の著者・所属:Raya Raijaleena Brink(International and European Lawyer (LL.M), Master of Arts (MA), Educator)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Raya Raijaleena Brink. A Case Study on Sugar and Sweetener Consumption During Pregnancy - Is It Safe and Advisable for Women Predisposed to Diabetes?. Neuroscience Insights Advances in Brain Studies 2026-10-30. DOI: 10.64978/niabs.2026.10300111. 原著ライセンス:CC BY.