この研究は、インドネシアの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Aquaculture Aquarium Conservation & Legislation

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

淡水魚のジャワバルブ(タウェス、Barbonymus gonionotus)は、特別な条件の土地を必要とせず一年を通じて養殖できることから、経済的な価値が高い魚として知られています。ただし養殖では餌の費用が最も大きな負担になります。著者らによれば、餌の主原料である魚粉は需要が伸び続ける一方で天然の漁業からの供給が増えておらず、価格の上昇や海洋生態系への負担につながりかねないと指摘されています。

そこで代わりに大豆かすなどの植物由来のたんぱく質を使う試みが進んでいますが、著者らは、これらの原料にはトリプシン阻害物質やフィチン酸、サポニンといった「抗栄養素」が含まれ、魚が餌を食べる量や栄養の吸収を妨げてしまうと説明しています。その対策の一つが、餌に外から酵素を加えることです。

この研究が着目したのはパパイヤ(Carica papaya)の葉に多く含まれるパパインという酵素です。パパインはたんぱく質を分解する酵素で、複雑なたんぱく質をペプチドやアミノ酸といった小さな単位に切り分け、魚の消化管で吸収されやすくします。著者らは、パパインがpH5〜8という魚の消化管に合う幅広い条件で働くこと、餌を作る際の温度でも安定していること、そしてインドネシアではパパイヤが豊富で原料が手に入りやすいことを利点として挙げています。とくにパパイヤの葉はこれまで十分に活用されておらず、入手しやすい原料になり得るとされています。研究チームは、このパパイヤ葉抽出物を餌に加えたとき、育成期のジャワバルブの成長、餌の利用効率、体の栄養組成がどうなるかを調べました。

調べ方

研究は2026年2月から4月にかけて、インドネシア・中部ジャワのマゲラン、サワンガンにある淡水魚繁殖センターで行われました。用いた魚は同センターから得た育成期のジャワバルブ600尾で、平均体重は1尾あたり50.46±0.35gでした。実験は完全無作為化計画にもとづき、4つの処理区をそれぞれ3回ずつ繰り返す設計です。

試験用の餌は、たんぱく質含量(約30%)とカロリーをそろえたうえで、パパイヤ葉抽出物の量だけを変えました。餌1kgあたり0g(区A)、10g(区B)、20g(区C)、30g(区D)の4段階です。抽出物は若いパパイヤの葉から低温の緩衝液を使って作られ、そのパパイン活性は187.24U/mLと測定されました。餌には魚粉を動物性たんぱく質源、大豆かすを植物性たんぱく質源として配合し、たんぱく質の消化率を測るための指標物質として酸化クロム(Cr2O3)も加えられています。

魚は1×1×0.6m³の網いけす(ハパ)12基で49日間飼育され、1日3回、満腹になるまで給餌されました。7日ごとに体重と体長を測り、糞を回収してたんぱく質の消化率を算出しています。調べた項目は、総摂餌量、たんぱく質の見かけの消化率、餌の利用効率、餌料効率係数(FCR=体重1単位増やすのに必要な餌の量)、たんぱく質効率比、相対成長率、生残率、そして魚の体の栄養組成です。水温、溶存酸素、pH、アンモニアといった水質も監視されました。結果は分散分析とダンカンの多重範囲検定で比較されています。

報告された主な結果

著者らの報告によれば、パパイヤ葉抽出物の添加は、総摂餌量、たんぱく質の見かけの消化率、餌の利用効率、FCR、たんぱく質効率比、相対成長率に統計的に有意な差(p<0.05)をもたらしました。一方で、生残率と魚の体の栄養組成には有意な差は見られませんでした(p>0.05)。

最も添加量が多い区D(餌1kgあたり30g)が、多くの指標で最良の値を示しています。49日後の最終体重は区Dで188.07±0.20gとなり、無添加の区Aの126.15±0.16gを上回りました。体重増加量は区Dで137.65±0.26g、区Aで75.69±0.26gでした。たんぱく質の見かけの消化率は区Aの52.37±0.16%に対し区Dでは88.26±0.26%、餌の利用効率は区Aの55.27±0.32%に対し区Dでは80.24±0.23%です。FCRは値が小さいほど少ない餌で体重を増やせることを意味しますが、区Aの1.82±0.12に対し区Dは1.26±0.10でした。相対成長率は区Dで1日あたり3.73±0.23%と最も高くなっています。生残率はすべての区で100%でした。

興味深いのは、総摂餌量は逆の傾向を示した点です。最も多く餌を食べたのは無添加の区A(366.45±1.28g)で、添加量が増えるほど摂餌量は減り、区Dでは308.00±1.20gでした。著者らはこれを餌の嗜好性の違いによるものと考えています。パパイヤ葉にはアルカロイドやタンニン、サポニンといった二次代謝産物が含まれ、独特の苦味をもたらすため、添加量が多いほど魚が食べる量を控えたのではないかという解釈です。ただし区Aでは摂餌量が多いにもかかわらず餌の利用効率は最も低く、著者らは、外から加えるパパインがないぶん魚自身の消化酵素だけに頼ることになり、必要な栄養を満たすためにより多くの餌を食べる必要があったのだろうと論じています。

魚の身の栄養組成(水分、たんぱく質、脂質、炭水化物、灰分)は、どの処理区でもほとんど変わりませんでした。著者らは、魚の栄養組成は体内の代謝の結果として決まるものであり、餌に含まれる酵素が魚の組織に直接働きかけて変えるものではないと説明しています。

この研究が示すこと

この研究が報告しているのは、パパイヤの葉という未活用の資源から取り出した抽出物を餌に加えることで、育成期のジャワバルブが餌のたんぱく質をより効率よく消化・吸収し、少ない餌でより大きく育ったという結果です。著者らは餌1kgあたり30gという用量が最も良い成績をもたらしたとして、この量をジャワバルブ育成期の飼料添加物として推奨しています。

餌に含まれる栄養そのものを増やしたのではなく、すでにある栄養を魚が使いこなす力を高めたという点が、この報告の要点です。餌の量そのものは減っていたにもかかわらず成長が上回ったという対比は、消化の助けとなる酵素が養殖における餌の使い方に及ぼす影響の大きさを具体的な数値で示しています。

著者:Diana Rachmawati(Department of Aquaculture, Faculty of Fisheries and Marine Sciences, University of Diponegoro, Semarang, Central Java, Indonesia)、Tita Elfitasari(Department of Aquaculture, Faculty of Fisheries and Marine Sciences, University of Diponegoro, Semarang, Central Java, Indonesia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Diana Rachmawati, Tita Elfitasari. The effect of papaya (Carica papaya) leaf extract addition in feed on growth performance, feed efficiency, and body nutrient composition of Java barb (Barbonymus gonionotus) at the grow-out stage. Aquaculture Aquarium Conservation & Legislation 2026-09-06. DOI: 10.67784/0061. 原著ライセンス:CC BY.