著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:Journal of Fungi
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
紅麹(紅麹米)は、主に紅麹菌と呼ばれるカビを米の上で発酵させて作る食品で、中国では千年以上利用されてきました。色素は天然の着色料として食品産業でも使われています。ただ、市場に出回る紅麹は複数の種類の紅麹菌で作られており、菌の種類と、紅麹に含まれる有効成分の量との関係は十分に分かっていませんでした。
そこで研究チームは、紅麹に含まれる複数の成分を高速液体クロマトグラフィー(HPLC:混合物を成分ごとに分離して量を測る分析法)などで定量し、品質評価の基準となる分析の枠組みを作ることを目指しました。あわせて、発酵に使われた紅麹菌の種類によって成分量がどう違うかも調べています。
何を調べたか
研究チームは、中国の福建省・浙江省・湖北省などから集めた紅麹13ロットを分析しました。まず各試料から菌を分離して純化し、培養したときの見た目や顕微鏡での形態に加え、遺伝子の一部の配列(ITS配列)を調べて菌の種類を特定しました。その結果、13試料のうち9試料はベニコウジカビ(Monascus purpureus)で作られており、残る4試料はそれぞれM. fumeus、M. fuliginosus、M. ruber、M. sanguineusという別の種によるものでした。
成分分析では、紅麹の代表的な成分であるモナコリンK(酸型とラクトン型の2つの形)のほか、エルゴステロール、ウラシルやグアノシンなど8種類の核酸関連成分、GABA(γ-アミノ酪酸)、β-グルカンを測定しました。また、紅麹製品で問題となりうるカビ毒の一種、シトリニンの有無も調べています。各分析法については、同じ測定を繰り返したときのばらつきや、既知量を加えたときに正しく回収できるかを確認し、測定法として使えることを示しました。
さらに、試料を分析したときに現れる成分の山(ピーク)の並び方を「指紋」のように比べる、フィンガープリント分析の手法も整えました。
主な結果
13ロットの間で成分量には大きな幅がありました。モナコリンKは酸型が1グラムあたり0.15〜23.29ミリグラム、ラクトン型が0.03〜14.22ミリグラムでした。GABAは1グラムあたり2.76〜1217.43マイクログラム、β-グルカンは0.080〜4.734ミリグラムと、試料によって大きく異なりました。シトリニンは13試料のうち3試料で検出されました。
フィンガープリント分析では、紅麹に共通する8つの代表的なピークが見つかり、そのうちの1つがモナコリンKであることが確認されました。各ピークの相対的な大きさは試料ごとに大きくばらつきましたが、追加の14試料を含む計27ロットで成分パターン全体の類似度を比べると、いずれも0.802を上回り、全体としての成分構成は共通していると論文は報告しています。
菌の種類ごとの比較では、色素を作る系統とされるM. sanguineusとM. ruberで有効成分の量が最も少なく、M. sanguineusの試料ではモナコリンKが検出されませんでした。一方、M. fuliginosusは有効成分全体の量が最も多く、M. fumeusも高い傾向でした。現在もっとも広く商業利用されているM. purpureusは中間的な水準でした。核酸関連成分でも菌種による違いが見られ、M. ruberが最も少なく、M. fumeusが最も多いという結果でした。
研究が示すこと
著者らは、紅麹の品質や成分の違いの背景に、発酵に使われた紅麹菌の種類の違いがあることを示したとしています。成分量が多すぎる紅麹では摂取量の調整が難しくなるおそれがあることにも触れ、成分を測って品質を確かめることの重要性を指摘しています。
ただし、今回の研究は成分量を測ったものであり、菌の種類による成分の違いが実際の体への働きにどう結びつくかは、生体での検証が必要だと著者らは述べています。本研究は、見た目だけでは分かりにくい紅麹の中身を、菌の種類と複数の成分の両面から確かめるための分析の土台を示したものといえます。
原著論文の著者・所属:Fang Li(College of Traditional Chinese Medicine, Bozhou University, Bozhou 236800, China)、Shan Yang(Department of Pathogenic Biology and Immunology, College of Integrated Chinese and Western Medicine, Anhui University of Chinese Medicine, 350 Longzihu Road, Hefei 230012, China)、Yue Zhang(College of Traditional Chinese Medicine, Bozhou University, Bozhou 236800, China)、Yuting Ye(College of Traditional Chinese Medicine, Bozhou University, Bozhou 236800, China)、Wenjuan Yang(College of Traditional Chinese Medicine, Bozhou University, Bozhou 236800, China)、Guangyuan Yang(Department of Pathogenic Biology and Immunology, College of Integrated Chinese and Western Medicine, Anhui University of Chinese Medicine, 350 Longzihu Road, Hefei 230012, China)、Weifeng Huang(Anhui Dechang Pharmaceutical Co., Ltd., Bozhou 236800, China; Department of Pathogenic Biology and Immunology, College of Integrated Chinese and Western Medicine, Anhui University of Chinese Medicine, 350 Longzihu Road, Hefei 230012, China)、Daqiang Wu(Department of Pathogenic Biology and Immunology, College of Integrated Chinese and Western Medicine, Anhui University of Chinese Medicine, 350 Longzihu Road, Hefei 230012, China)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Fang Li, Shan Yang, Yue Zhang, et al. From Strain to Substance: A Novel Approach to Red Yeast Rice Quality Assessment and Chromatographic Fingerprinting. Journal of Fungi 2026-10-01. DOI: 10.3390/jof12100734. 原著ライセンス:CC BY.