著者の所属・活動拠点の国は、オランダです。

掲載誌:Journal of Experimental Psychopathology

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

体重を減らそうと食事を制限する人は多くいます。しかし、食べる量を減らすとお腹がすき、その空腹がイライラや落ち込みといった嫌な気分を引き起こすことがあります。研究チームは、こうした空腹による嫌な気分をうまく扱えないことが、食べ過ぎにつながっているのではないかと考えました。

気持ちの扱い方は「感情調整」と呼ばれます。この研究では、代表的な二つの方法を取り上げ、それぞれが食事制限をしている人の食べる量に影響するかを実験で確かめようとしました。一つは「抑制」で、わき上がった感情を表に出さないよう抑え込む方法です。もう一つは「再評価」で、状況の受け止め方を変えて感情そのものを和らげようとする方法です。

どのように調べたか

題名によると、対象は女子大学生で、抄録では食事制限をしている人と説明されています。参加者はまず、お腹が満たされた状態でオンラインのアンケートに答え、空腹感や気分を報告しました。その後、実験室に来るまでの14時間は何も食べないよう指示されました。

実験室では空腹感と気分をもう一度測定しました。続いて参加者は三つのグループに分かれ、録音された音声で指示を受けました。抑制の指示を受けたグループが65人、再評価の指示を受けたグループが70人、比較のための対照グループが54人です。指示の後に気分を三度目に測り、最後にポテトチップスとM&M'sを自由に食べられる機会を設けて、食べ始めるかどうかと食べた量を調べました。

主な結果

研究チームによると、14時間の絶食によって、狙いどおり嫌な気分が強まり、前向きな気分が弱まりました。

感情調整の指示を受けた後の気分の変化については、予想外の結果も報告されています。抑制の指示を受けたグループでは、嫌な気分が弱まり、前向きな気分が強まりました。再評価の指示を受けたグループでは、嫌な気分は弱まったものの、前向きな気分には変化がありませんでした。

一方、肝心の食べる行動については、三つのグループの間に違いは見られませんでした。食べ始めるかどうかにも、食べた量にも差はなかったと報告されています。

この研究が示すこと

著者らは、この研究からは、感情調整の訓練が食べる量の管理に役立つという証拠は得られなかったとまとめています。空腹による嫌な気分への対処法を変えると気分そのものは変わりましたが、この実験の範囲では、食べる量の違いにはつながりませんでした。

また著者らは、感情を抑え込む方法が予想に反して気分を改善した点に注目し、空腹による嫌な気分を抑制することが役に立つ場合があるのかどうかは、さらに検討が必要だとしています。

原著論文の著者・所属:Mégane Ackermans(University of Groningen)、Nienke Jonker(Department of Eating Disorders, Accare Child and Adolescent Psychiatry, Groningen, The Netherlands; University of Groningen)、Peter de Jong(University of Groningen)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Mégane Ackermans, Nienke Jonker, Peter de Jong. Emotion regulation Manipulation Does Not Affect Food Intake in Lab Setting Following Hunger-Induced Negative Emotions in College Women. Journal of Experimental Psychopathology 2026-10-01. DOI: 10.1177/20438087261468836. 原著ライセンス:CC BY.