脂肪肝は今や世界中の成人の約25〜30%が抱えているとされるほどありふれた状態です。その中でも進行の分かれ目になるのが「肝線維化」、つまり肝臓が硬くなっていく変化で、これが進むほど将来の重い肝臓病や死亡リスクに関わるとされています。一方でビタミンDは骨の健康だけでなく、代謝異常を抱える人に不足しがちな栄養素としても知られ、肝臓の炎症や線維化に関わっている可能性が指摘されてきました。ただし、脂肪肝の患者においてビタミンDの状態と肝線維化の関係は、特に中東地域ではまだよく分かっていませんでした。
そこで今回の研究では、ドバイのキングス・カレッジ病院で、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)と診断された成人301人を対象に、後ろ向きの横断研究が行われました。対象者は平均年齢41.75歳(標準偏差8.90)、男性が50.5%を占めています。肝臓の硬さ(線維化の程度)は振動制御型トランジエントエラストグラフィ(FibroScan)で測定し、同じ機器で得られる肝脂肪の指標(CAP)や、実施されていた場合は腹部超音波検査の結果も合わせて評価されました。血中のビタミンD(25-ヒドロキシビタミンD)の値は、肝臓の検査から90日以内に測定されたデータが使われています。
研究でわかったこと
まず目を引くのは、対象者の69.76%という高い割合でビタミンD欠乏が見られたことです。肝線維化の程度別に見ると、線維化がない〜軽度(F0〜F1)が80.83%と大半を占め、有意な線維化(F2)が14.98%、進行した線維化(F3)が3.48%、肝硬変(F4)は0.69%でした。
統計解析では、ビタミンD欠乏は肝線維化の段階(p=0.01)や脂肪肝の重症度(p=0.01)、そして代謝症候群の有無(p<0.01)と有意な関連が見られました。一方で、BMI(p=0.20)、糖尿病・前糖尿病(p=0.69)、高血圧(p=0.92)、脂質異常症(p=0.71)との間には有意な関連は認められませんでした。
ただし、年齢や性別など他の要因の影響を調整した多変量解析を行うと、ビタミンD欠乏そのものが臨床的に意味のある線維化と独立に結びついているとは言えませんでした(調整オッズ比0.89、95%信頼区間0.44〜1.80、p=0.754)。むしろ独立した関連因子として浮かび上がったのは、年齢が高いこと(調整オッズ比1.05、95%信頼区間1.01〜1.09、p=0.018)と男性であること(調整オッズ比6.23、95%信頼区間2.88〜13.49、p<0.001)でした。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この結果から著者らは、ビタミンD欠乏は脂肪肝の患者に非常によく見られ、線維化が進んだ人ほど欠乏が目立つものの、それはビタミンD不足が線維化を「引き起こしている」ことを示すものではなく、むしろ病気の重さを映し出す一つの指標(マーカー)である可能性を示唆しています。研究は特定の時点でのデータをまとめた横断研究であり、原因と結果の順序を確かめることはできません。著者らも、ビタミンDが脂肪肝の進行に因果的な役割を果たすかどうかを明らかにするには、今後の前向き研究が必要だと述べています。なお、この研究は中東・ドバイの医療機関を舞台にしたものであり、日本の食習慣や日本人を対象としたデータではない点にも留意が必要です。
まとめ
今回の研究では、脂肪肝患者の多くにビタミンD欠乏が見られ、それが肝臓の線維化の程度や脂肪肝の重症度と統計的に関連していたことが報告されました。しかし年齢や性別の影響を除いた解析では、ビタミンD欠乏そのものが独立して線維化と結びついているとは確認されず、むしろ加齢や男性であることの影響が大きいという結果でした。ビタミンDのサプリメント摂取などが肝臓の状態を改善するかどうかを示すものではなく、あくまで一つの観察研究による知見であることを踏まえて受け止める必要があります。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Justin Jose, Salman Muhammad Soomar, Ximena Fernandez Cristobal, et al. Association between vitamin D deficiency and liver fibrosis assessed by transient elastography in patients with metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease. BMC内分泌疾患 (2026). DOI: 10.1186/s12902-026-02527-0. 原著ライセンス: cc-by.