スーパーで見かける大豆油や菜種油は、原料の搾油から精製までいくつもの工程を経て私たちの食卓に届きます。この加工の過程で、油の中の化学成分がどのように変化しているのか、実は詳しくはわかっていませんでした。今回紹介する研究は、大豆油(SO)と菜種油(RO)を対象に、最新の分析技術を駆使してこの疑問に迫ったものです。

何を、どうやって調べたのか

研究チームは、代謝物・脂質・揮発性有機化合物という3種類の化学成分を網羅的に測定する「マルチオミクス解析」という手法を用いました。具体的には、広く標的とした代謝物1033種類、脂質化合物349種類、揮発性有機代謝物157種類が試料から同定されたとのことです。そのうえで、品種や加工工程の違いによって、これらの成分がどのように変動するかを比較しました。

わかったこと

統計解析(ケモメトリクス解析)の結果、比較の組み合わせごとに変動が見られた成分(差異代謝物)の数が示されました。具体的には、1次精製段階の大豆油と菜種油を比べた場合(SO1stg vs. RO1stg)で664種類、3次精製段階同士の比較(SO3rdg vs. RO3rdg)で857種類、大豆油の加工前後の比較(SO3rdg vs. SO1stg)で204種類、菜種油の加工前後の比較(RO3rdg vs. RO1stg)で812種類の差異が確認されたと報告されています。

特に注目される点として、菜種油の加工前後の比較(RO3rdg vs. RO1stg)では、増加していた成分が全差異成分の92.73%を占め、大豆油の加工前後の比較(SO3rdg vs. SO1stg)でも79.41%が増加していたことが示されました。つまり、加工が進むにつれて、多くの成分が減るというより増える傾向が見られたということです。

この研究の位置づけと読むうえでの注意

この研究は、大豆油と菜種油という特定の油を対象にした化学組成の分析であり、健康への効果や安全性について直接評価したものではありません。成分の増減が示されたことと、それが体にとって良い・悪いということは別の話であり、要旨の中でもそうした健康効果への言及はありません。あくまで一つの研究であり、これをもって加工方法の優劣や結論が確定したわけではない点に留意が必要です。

まとめ

今回の研究では、大豆油と菜種油について、代謝物・脂質・揮発性有機化合物という3つの側面から網羅的な化学分析が行われ、品種や加工工程によって成分が大きく変動すること、特に加工が進むにつれて多くの成分が増加する傾向にあることが示されました。研究チームは、これらのデータが食用植物油脂産業における品質管理の仕組みづくりに向けた基礎資料になるとしています。今後、こうした化学組成の情報がどのように活用されていくのか、注目されるところです。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:マルチオミクスで明らかにする加工が異なる植物油の化学組成に与える影響(フーズ・2026年08月)