食用油に多く含まれるリノール酸という脂肪酸には、体重を減らす取り組みをしていない健康な成人において肝臓の脂肪を減らす働きがあることが、これまでの研究で報告されてきました。では、すでに脂肪肝を抱える人でも同じような変化が起きるのでしょうか。この疑問に答えるため、米国オハイオ州立大学の研究グループが、MAFLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)のある成人を対象に、大豆油とパーム油を比較する臨床試験を行いました。
大豆油はリノール酸を豊富に含む油で、パーム油は飽和脂肪・一価不飽和脂肪・多価不飽和脂肪が混ざり合った油です。この二つの油が肝臓の脂肪量にどう影響するかを、実際に人の体で比べた点がこの研究の出発点です。
どのように調べたのか
研究チームは、MAFLDのある成人を対象に、二重盲検(研究者も参加者も、どちらの油を摂取しているか分からない状態)のランダム化比較試験を実施しました。参加者はまず2週間の準備期間を経たのち、16週間にわたって大豆油またはパーム油のいずれかを1日30グラム含む試験食を摂取しました。試験を完了したのは65人で、平均年齢は約53歳、平均BMIは36という、肥満を伴う集団でした。
評価のため、試験開始時(0週目)と終了時(16週目)に、プロトン磁気共鳴分光画像法(1H‐MRS)という手法を用いて肝臓の脂肪量と内臓脂肪の量を測定しました。あわせて、空腹時の採血を行い、心血管代謝疾患のリスクに関わる血液中の指標も調べています。
結果からわかったこと
大豆油群とパーム油群を単純に比較すると、肝臓の脂肪量の変化には統計的に意味のある差が見られました。しかし、試験開始時点の肝脂肪量の違いを考慮して調整したところ、この群間差は統計的に有意ではなくなりました(p=0.14)。また、食事の種類が肝脂肪の変化に与える影響が体重の変化を介したものかどうかも検討されましたが、そうした媒介効果も統計的には確認されませんでした(p=0.11)。
それぞれの群だけを見ると、大豆油群では肝脂肪が減少する傾向(p=0.11)、パーム油群では逆に増加する傾向(p=0.11)が見られました。ただし、いずれも統計学的に「有意」と言い切れる水準には届いておらず、あくまで「傾向」にとどまる結果です。
この研究をどう読むか
著者らは、試験開始時の肝脂肪量や体重変化を考慮すると、パーム油に対する大豆油の優位性は統計的に示されなかったと結論づけています。そのうえで、体重変化という要因も含めた条件のもとで、MAFLDのある成人の肝脂肪を減らす食事戦略を検証するには、より大規模な試験が必要だと述べています。つまりこの研究は、大豆油がパーム油より脂肪肝に良い、と断定するものではなく、今後さらに検証が必要な手がかりを示したものと位置づけられます。
今回の情報の中に、日本の研究機関や日本の食習慣・食品生産に関する記載は含まれていません。
まとめ
この16週間の臨床試験では、MAFLDのある成人65人において、大豆油とパーム油の摂取による肝脂肪量の変化を比較しました。単純な群間比較では差が見られたものの、試験開始時の肝脂肪量を考慮すると、その差は統計的に有意ではなくなりました。大豆油群で肝脂肪が減る傾向、パーム油群で増える傾向はあったものの、いずれも有意水準には届かず、著者らは今後より大規模な試験が必要だとしています。一つの研究であり、結論が確定したわけではない点に留意して読む必要があります。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Martha A. Belury, Rachel M. Cole, Ai Ni, et al. Dietary Soybean vs. Palm Oils Differ in Effects on Liver Fat in Adults With MAFLD : A 16‐Week, Double‐Masked, Randomized Controlled Trial. ダイアビーティーズ・オビーシティー・アンド・メタボリズム (2026). DOI: 10.1111/dom.71237. 原著ライセンス: cc-by-nc-nd.