著者の所属・活動拠点の国は、ドイツ、オーストラリア、スイス、デンマーク、アメリカ、フランスです。

掲載誌:Frontiers in Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

南極の観測基地では、長期間にわたり、あらかじめ用意した食料にほぼ全面的に頼る必要があります。研究チームは、外部からの補給が途絶える越冬期間に、どのような食事が提供され、その構成や見た目にどの程度の変化があるのかを調べました。

対象としたのは、コンコルディア基地で研究担当医が自分で選んで皿に盛った昼食と夕食の写真です。食品群の構成と多様性、色や食感の特徴に加え、予定された献立と写真に写った料理の一致を確かめ、写真記録によって食事環境を把握する方法の有用性を検討しました。

何を、どのように調べたか

研究チームは、2018/2019年、2019/2020年、2021/2022年の3回の越冬期の記録を分析しました。基地には各期12~15人が滞在し、約9か月の隔離期間には外部から補給できません。利用できた写真は593日分の2,066枚で、このうち主な分析期間とした3月1日~10月31日に含まれる記録は、3期を合わせて549日分でした。朝食と間食は記録の対象ではありません。

訓練を受けた2人の評価者が、食べ始める前の完全な食事が写った写真をそれぞれ確認し、食品群ごとの皿全体に占める割合や登場頻度、色の種類、見た目から推定した食感を分類しました。また、予定献立と写真を料理ごとに照合し、同じ料理、または主な材料や料理の基本的な種類が同じものを一致としました。記録の充実度や担当者が越冬期によって異なるため、分析は割合や分布などの記述にとどめ、越冬期の間の差を統計的に検定してはいません。

主な報告結果

著者らによると、写真に写った食事は穀類・穀類製品、野菜、肉・肉製品を中心に構成され、越冬期間を通じた大きな変化は見られませんでした。1日当たりに記録された食品群は平均8~10種類でした。一方、サラダや生野菜などの生鮮食品は各越冬期の早い段階で急減し、冬季の大半の月には食事構成に占める割合が1%未満でした。保存食品や冷凍食品には、時期による変動があまり見られませんでした。

見た目は黄色やオレンジ色が中心で、緑や赤の割合は小さく、評価者は多くの食事を「彩りが乏しい」から「中程度」と判定しました。1食当たりの異なる色の点は通常3~5個でした。食感は軟らかいものから適度な硬さのものが中心で、硬いものや歯ごたえのあるものは比較的少ないと報告されています。色や食感には越冬期の間で違いがあったものの、それぞれの越冬期間内では、時間とともに一定方向へ変化する傾向は概して認められませんでした。

予定献立と写真の一致率は、照合した料理のうち、2018/2019年が30%、2019/2020年が47%、2021/2022年が25%でした。不一致には、献立に記録されていない代替料理や変更、付け合わせの違いなどが含まれ、予定献立が実際に皿に盛られた食事を部分的にしか反映していないことが示されました。

この報告が示すこと

研究チームは、補給が厳しく制限される長期隔離下でも、一定の構成を持つ食事の提供は維持し得ると解釈しています。また、食事環境を把握するには、予定献立だけでなく、実際に盛り付けられた料理を直接記録することが補完的な手段になると述べています。

ただし、写真は研究担当医が選んだ昼食と夕食に限られ、隊員全体に提供された食品のすべてや、実際に食べた量を示すものではありません。このため、個人のエネルギー摂取量や栄養の充足度は判断できません。撮影日数や画質にもばらつきがあり、色は撮影条件をそろえた測定ではなく、食感も写真からの推定です。この研究は、栄養摂取を詳しく評価するものではなく、長期隔離下の食事の構成と特徴を記録した報告として位置付けられます。

原著論文の著者・所属:Verena Steinhauser(Internal Medicine VI, Psychosomatic Medicine and Psychotherapy, University Hospital Tübingen, Tübingen, Germany)、Bea Klos(Internal Medicine VI, Psychosomatic Medicine and Psychotherapy, University Hospital Tübingen, Tübingen, Germany)、Rebecca Föhr(Internal Medicine VI, Psychosomatic Medicine and Psychotherapy, University Hospital Tübingen, Tübingen, Germany)、Sophia Wolf(Internal Medicine VI, Psychosomatic Medicine and Psychotherapy, University Hospital Tübingen, Tübingen, Germany)、Eva Dichiser(Internal Medicine VI, Psychosomatic Medicine and Psychotherapy, University Hospital Tübingen, Tübingen, Germany)、Julia Low(Sensory and Consumer Science Research Group, School of Science, Royal Melbourne Institute of Technology (RMIT) University)、Christine Brombach(Research Group for Food Perception, Zurich University of Applied Sciences (ZHAW) School of Life Sciences and Facility Management)、Nadja Albertsen(Aarhus University; Aarhus University Hospital; French Polar Institute Paul-Emile Victor, Brest, France - sponsored by the European Space Agency)、Stijn Thoolen(Department of Psychiatry, Massachusetts General Hospital, Harvard Medical School; French Polar Institute Paul-Emile Victor, Brest, France - sponsored by the European Space Agency)、Hannes Hagson(French Polar Institute Paul-Emile Victor, Brest, France - sponsored by the European Space Agency)、Paul Enck(Internal Medicine VI, Psychosomatic Medicine and Psychotherapy, University Hospital Tübingen, Tübingen, Germany)、Isabelle Mack(Internal Medicine VI, Psychosomatic Medicine and Psychotherapy, University Hospital Tübingen, Tübingen, Germany)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Verena Steinhauser, Bea Klos, Rebecca Föhr, et al. Dietary supply and reporting reliability during Antarctic overwintering under extreme isolation: a food image-based analysis. Frontiers in Nutrition(出版社:Frontiers Media) 2026-08-19. DOI: 10.3389/fnut.2026.1855383. 原著ライセンス:CC BY.