著者の所属・活動拠点の国は、香港、中国です。
掲載誌:Plant Cell & Environment
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
研究チームは、穀物のソルガムが炭疽病の病原菌に感染したとき、抗菌物質プテロスチルベンの合成をどのように調節するのかを調べました。先行研究では、この物質がソルガムの炭疽病菌の増殖を抑えることや、その合成に必要な酵素が明らかになっていました。今回の研究では、合成に関わる遺伝子の働きを高める仕組みと、それを担うタンパク質がほかの防御関連遺伝子も調節する可能性に注目しました。
何を、どのように調べたか
研究チームはまず、プテロスチルベンの合成に関わる二つの酵素の遺伝子、SbSTS1とSbSOMTについて、働きを調節するDNA領域を解析しました。さらに、感染したソルガムの既存の遺伝子発現データから、感染によって発現が増える転写因子の遺伝子を選びました。転写因子とは、特定のDNA領域に結合して遺伝子の働きを調節するタンパク質です。候補となった35遺伝子を、タバコの葉で調べ、酵素遺伝子の調節領域を活性化するものを探しました。
続いて、細胞壁を取り除いたソルガムの細胞で候補遺伝子を強く発現させ、標的となる遺伝子の発現を測定しました。タンパク質がDNAに直接結合するかどうかも、精製したタンパク質や細胞を使って確認しました。また、炭疽病に弱いBTx623と抵抗性の強いSC748-5の2品種に病原菌を接種し、感染後の発現の変化を比較しました。SbWRKY62については、結合するDNA領域を広く探索したデータと感染時の発現データを組み合わせ、ほかの防御関連の標的遺伝子も調べました。
主な報告結果
著者らは、SbERF096とSbWRKY62という二つの転写因子が、プテロスチルベン合成に関わる遺伝子を直接調節すると報告しました。SbERF096はSbSTS1の調節領域にあるGCCボックスというDNA配列に結合し、その発現を高めました。一方、SbWRKY62はSbSOMTの調節領域にあるWボックスという配列に結合し、発現を高めました。SbSTS1が担うのは原料となるレスベラトロールをつくる段階で、SbSOMTが担うのは、それを段階的にプテロスチルベンへ変える段階です。
両転写因子の遺伝子は、どちらの品種でも感染後24~72時間に発現が高まり、その発現量は抵抗性の強いSC748-5で、病気に弱いBTx623よりも有意に高くなっていました。
さらに著者らは、SbWRKY62がSbXIP1という別の遺伝子の調節領域にも直接結合し、その発現を高めることを確認しました。SbXIP1は、植物の細胞壁を分解する酵素キシラナーゼの働きを妨げるタンパク質をつくると予測される遺伝子です。感染72時間後のSbXIP1の発現量も、SC748-5でBTx623より高くなっていました。
この報告が示すこと
研究チームは、SbWRKY62が抗菌物質の合成と、細胞壁の分解を妨げる可能性のある防御因子の両方を調節する、二重の役割を持つと考えています。この報告は、ソルガムの異なる防御の仕組みが、共通の転写因子によって結び付けられる可能性を示すものです。ただし、著者らはSbXIP1を炭疽病菌に対する防御成分の候補と位置づけており、その機能や抵抗性への寄与は、さらに検証する対象としています。
原著論文の著者・所属:Yajing Li(School of Biological Sciences The University of Hong Kong Hong Kong China)、Bofu Deng(School of Biological Sciences The University of Hong Kong Hong Kong China)、Yiming Gan(School of Biological Sciences The University of Hong Kong Hong Kong China)、Nan Lin(College of Life and Environmental Science Wenzhou University Wenzhou China)、Dan Zhou(School of Biological Sciences The University of Hong Kong Hong Kong China)、Clive Lo(School of Biological Sciences The University of Hong Kong Hong Kong China)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Yajing Li, Bofu Deng, Yiming Gan, et al. SbWRKY62 Coordinates With SbERF096 to Activate Pterostilbene Biosynthesis and Targets a Xylanase Inhibitor Protein for Anthracnose Resistance in Sorghum. Plant Cell & Environment(出版社:Wiley) 2026-08-19. DOI: 10.1111/pce.70833. 原著ライセンス:CC BY.