著者の所属・活動拠点の国は、インドです。

掲載誌:Frontiers in Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

研究チームは、バサという魚の加工残さから取り出した筋原線維タンパク質を使い、生分解性フィルムを作る条件を調べました。筋原線維タンパク質は筋肉を構成するタンパク質で、溶液のpHを調整すると溶けやすくなり、乾燥させることで膜を形成します。

バサは主に骨を除いた切り身に加工され、その過程でタンパク質を含む残さが発生します。著者らは、この残さの有効利用を目指し、フィルムを作る液のpHと原料濃度が、強度や水への溶けやすさ、水蒸気の通しやすさに与える影響を明らかにしようとしました。

何を、どのように調べたか

研究チームは、魚の加工工場から入手したバサの残さから肉を分離し、水と食塩水で洗浄した後、凍結乾燥して粉末状のタンパク質濃縮物を作りました。この粉末のタンパク質含有率は87.6%でした。

まずpH 2〜12で溶けやすさを調べ、特に溶けやすかった酸性のpH 2.8とアルカリ性のpH 11を選びました。それぞれのpHで、粉末を水100mL当たり0.5g、1g、1.5g加える3段階の濃度を設定し、計6条件を比較しました。柔軟性を持たせるため、粉末重量の半分に相当するグリセロールも加えました。

調製した液を容器に流し込み、50℃で24時間乾燥させてフィルムを作りました。測定したのは、厚さ、引っ張って切れるまでに耐えられる強さ、切れるまでの伸び、水に溶け出す割合、水蒸気の通しやすさなどです。さらに、タンパク質同士の結びつきを溶媒への溶け方から調べ、表面の観察や15日間の色の変化の測定も行いました。

主な報告結果

著者らは、酸性条件で作ったフィルムは、アルカリ性条件で作ったものより引っ張りに強く、水に溶けにくく、水蒸気を通しにくかったと報告しました。比較した条件の中では、pH 2.8で粉末濃度1%としたフィルムが最も好ましい性質を示しました。このフィルムの引張強度は6.86MPa、切れるまでの伸びは146.75%、水への溶解率は28.1%でした。

原料を多くすれば、すべての性質が改善するわけではありませんでした。濃度を高めると、どちらのpHでもフィルムは厚くなりましたが、切れるまでの伸びは1%までは増え、1.5%では低下しました。酸性条件での引張強度も、1%までは高まり、その後低下しました。また、水蒸気の通しやすさは、どちらのpHでも濃度とともに増加しました。

濃度1%のフィルムを電子顕微鏡で観察すると、酸性条件で作ったものは、アルカリ性条件のものより表面が滑らかで均一でした。溶媒を使った分析から、著者らは、酸性条件ではタンパク質同士をつなぐジスルフィド結合などが形成され、強さや水への溶けにくさにつながったと解釈しています。一方、25〜65℃で調べると、どちらのpHのフィルムも温度が高いほど水に溶けやすく、水蒸気も通しやすくなりました。

この報告が示すこと

研究チームは、バサの加工残さを原料とするフィルムづくりにおいて、pHと原料濃度の選択が重要だと結論づけています。この報告は、廃棄される魚の残さを包装材料の原料として活用するための、製造条件に関する知見を示したものです。ただし、評価したのは実験室で作製したフィルムの性質であり、実際に食品を包装した際の保存効果を実証した結果ではありません。

原著論文の著者・所属:Prashant K. Mishra(Food Technology Division, FIPLY, Bhabha Atomic Research Centre)、Mohd Danish(Centre of Food Technology, University of Allahabad)、Vivekanand Kumar(Food Technology Division, FIPLY, Bhabha Atomic Research Centre; Homi Bhabha National Institute)、Aarti S. Kakatkar(Food Technology Division, FIPLY, Bhabha Atomic Research Centre)、Raj Kamal Gautam(Food Technology Division, FIPLY, Bhabha Atomic Research Centre)、Suchandra Chatterjee(Food Technology Division, FIPLY, Bhabha Atomic Research Centre; Homi Bhabha National Institute)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Prashant K. Mishra, Mohd Danish, Vivekanand Kumar, et al. Influence of pH and protein concentration on the development of myofibrillar protein-based biodegradable film from Basa (Pangasius bocourti) fish waste. Frontiers in Nutrition(出版社:Frontiers Media) 2026-08-14. DOI: 10.3389/fnut.2026.1768718. 原著ライセンス:CC BY.