この研究は、ネパールの研究機関の研究論文です。

掲載誌:International Journal of Environmental and Agriculture Research

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の背景と目的

キュウリはネパールで作付面積の点から七番目に重要な野菜とされますが、論文によれば同国の単収は15.32 mt/haで、アジア平均(49.61 mt/ha)や世界平均(39.34 mt/ha)の半分にも届きません。著者らは、その低さの背景に雄花と雌花の数のかたより、すなわち「性表現」の不均衡があると述べています。キュウリはつる性で、雄花ばかりが多く咲いても実にはつながらず、花は多いのに着果が少ないという状態になりがちです。

そこで研究チームは、つるの「世代」に着目した剪定に注目しました。主枝(一次枝)から伸びるのが二次枝、そこからさらに伸びるのが三次枝です。先行研究では一次・二次世代の枝には雄花が偏って着き、三次世代の枝には雌花が多く着くと報告されてきました。本研究の目的は、剪定によってどの世代の枝を主役にするかを変えたとき、キュウリの生育・性表現・収量、そして品質がどう変わるかを実際の農家圃場で確かめること、そして対象地域に適した剪定法を見きわめることでした。

どのように調べたか

試験はネパール西部、カイラリ郡ゴダワリ自治体ファカルプルの農家圃場で、2023/24年の夏作期に行われました。品種は高温に強く食味が良いとされる「Malini」です。2月にポリ袋へ播種し、本葉3〜4枚の時期に定植しています。

処理は3つです。T1は無剪定(対照)で主枝を自由に伸ばします。T2(2G、第一世代切り)は主枝を6〜8フィート程度まで伸ばし、主枝の5葉までは側枝を出させずに摘み取り、二次枝が2〜3フィートに達した時点で先端を除いて三次枝を出させ、その後は自由に伸ばします。T3(3G、第二世代切り)はT2と同様の手順で三次枝を出させたうえで、三次枝にはそれ以上手を加えずに育てるものです。

試験は乱塊法(RCBD)で6反復、1区画は2列×5株の計10株、株間・条間は100 cm×100 cmでした。1反復40 m²、全体で18区画・240 m²です。節間長や茎径といった生育形質、一次・二次・三次の各枝ごとの雄花数・雌花数と雄雌比、果実数・果実長・果実径・果重・単収、さらに糖度(TSS)、滴定酸度(TA)、色・大きさ・外観・食味の評価を記録し、分散分析とLSD検定で処理間を比較しています。

報告された主な結果

まず生育面では、一次枝・二次枝の節間長と茎径に処理間の有意差は認められませんでした。剪定が茎の太さや節の伸び方そのものを変えたわけではない、ということです。

変化が明確に表れたのは花です。一次枝の雄花数は無剪定区で最も多く23.40だったのに対し、2G区は12.90、3G区は12.95と少なくなりました。二次枝では雄花が無剪定11.13・2G 9.49に対し3Gは4.45と最少で、雌花は3G(1.78)と2G(1.75)が多く、無剪定(1.32)が最少でした。三次枝では雄花数に有意差はなかった一方、雌花数は3Gで最多の1.99、無剪定で最少の1.06と報告されています。雄花対雌花の比は、一次枝では3Gが11.72と最大、無剪定が7.46と最小でしたが、二次枝では3Gが3.41と最も小さく(無剪定6.23、2G 5.51)、三次枝でも3Gが2.52と最小(無剪定4.75、2G 3.69)でした。著者らは、実りにつながる枝である二次・三次枝において雄花に対する雌花の割合が高まったことを重視しています。

収量関連では、1株あたり果実数が3Gで6.05と最も多く、2G 5.60、無剪定5.10と続きました。単収は3Gが21.48 t/ha、2Gが20.03 t/ha、無剪定が18.18 t/haで、著者らは3Gが無剪定より18.15%、2Gより7.24%高かったと述べています。一方、果重・果実長・果実径には有意差がなく、糖度・滴定酸度・その比、色・大きさ・外観・食味の評価にも処理間の有意差は認められませんでした。つまり報告された増収は、一つ一つの果実が大きくなったからではなく、着く果実の数が増えたことによるものだと位置づけられています。

なお著者ら自身が挙げている限界として、この試験は単一の場所・単一の作期(2023/24年夏作)・単一品種で行われたこと、3G剪定に必要な追加労力を定量していないこと、経済性の分析を行っていないことが明記されています。

この研究が示すこと

この研究は、つるのどの世代の枝を残すかという手の加え方が、キュウリの雄花と雌花の現れ方を通じて着果数と収量に結びつくことを、実際の農家圃場のデータとして示しました。果実の大きさや味・外観といった品質指標が処理によって変わらなかったという報告は、品質を犠牲にせずに収量側の改善を狙えるかどうかを考えるうえでの材料になります。著者らは、同様の気象条件下でキュウリの生産と収益性を高めるには第二世代の枝を活かす剪定(3G)を採用することを勧める、と結論づけています。

著者:Basant Raj Bhattarai(Faculty of Agriculture , Far-western University , Tikapur , Kailali , Nepal)、Binod Bohara(Faculty of Agriculture , Far-western University , Tikapur , Kailali , Nepal)、Devraj Rajbanshi(Faculty of Agriculture , Far-western University , Tikapur , Kailali , Nepal)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Basant Raj Bhattarai, Binod Bohara, Devraj Rajbanshi. Effect of different generation cutting on growth, sex expression, yield and quality attributes of cucumber (Cucumis sativus L.) in Godawari munacipility, Kailali, Nepal. International Journal of Environmental and Agriculture Research 2026-09-15. DOI: 10.25125/ijoear-sep-2026-3. 原著ライセンス:CC BY.