この研究は、アメリカの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Journal of Food Protection
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
何を明らかにしようとしたのか
シーモスは紅藻の一種で、ビタミンやミネラル、食物繊維などを含む食材として注目され、乾燥品やゲル状の製品として広く売られています。生や最小限の加工で食べられることも多く、スムージーやスープに加える使い方も一般的です。近年は市場が拡大し、メディアで取り上げられる機会も増えています。
一方で研究チームは、市販されているシーモス製品について、微生物の状態、pHや水分活性といった物理化学的な性質、重金属の濃度に関する情報がほとんどないと指摘しています。論文の導入では、米国で過去にシーモス入り飲料やゲルについて自治体が注意喚起や回収を行った事例にも触れられています。こうした知識の空白を埋めるため、著者らは市販の乾燥シーモスとシーモスゲルの微生物学的な品質・安全性を評価し、あわせて重金属濃度を調べることを目的としました。
どのように調べたか
研究チームは、米国の主要なオンライン小売業者から計66点の製品を購入しました。内訳は乾燥シーモス53点、シーモスゲル13点です。製品の色や表示された原産国は、あくまで販売者側の表記として記録されました。
物理化学的な測定として、水分活性(水がどれだけ微生物に利用されやすい状態かを示す指標)、pH、糖度を表すBrix、ゲル製品の包装内の真空度が測定されました。微生物については、細菌の総数を示す一般生菌数と、酵母・カビの数を計測し、さらに複数の菌属について選択培地を用いた推定的な検出を行いました。培地上で見つかった菌のうち一部については、遺伝子配列を読み取って種類を確認する分子的な同定も実施しています。重金属はヒ素、コバルト、水銀、カドミウム、鉛について外部の分析機関で測定され、乾燥重量あたりの濃度として報告されました。
報告された主な結果
水分活性は乾燥シーモスで0.33〜0.76(平均0.59)、ゲルでは0.74〜1.00(平均0.98)でした。ゲルのpHは2.71〜7.05、Brixは0.80〜46.10と幅広く、同じ「ゴールド」の色で揃えた製品どうしでも配合に大きな差があったと著者らは述べています。13点のゲルのうち9点は真空包装されていました。
一般生菌数の平均は乾燥シーモスで4.30、ゲルで3.92 log CFU/g、酵母・カビ数の平均はそれぞれ3.23と3.60 log CFU/gでした。統計解析では、乾燥シーモスのほうがゲルより微生物数が多いという差が示されています。選択培地による推定的な検出では、乾燥シーモスの96.23%からBacillus属、77.36%からStaphylococcus属が検出され、Escherichia属やSalmonella属、Listeria属の検出割合はより低いものでした。ゲルでは全点がStaphylococcus属陽性、13点中12点がBacillus属陽性でした。ただし、配列が読み取れた20株の分子同定ではBhargavaea、Exiguobacterium、Staphylococcus、Salmonella、Cronobacter、Bacillus、Escherichiaの各属が確認された一方、ListeriaとVibrioは同定されておらず、著者らは培養による推定結果と分子同定が必ずしも一致しなかった点を強調しています。
重金属では、カドミウムと鉛はすべての試料で検出限界(2.00 mg/kg乾重)未満でした。乾燥シーモスではヒ素の平均が6.76 mg/kg乾重(最大18.78)、コバルトが平均4.26 mg/kg乾重、水銀が平均0.007 mg/kg乾重で検出されました。ゲルではヒ素とコバルトは検出限界未満で、水銀は平均0.00057 mg/kg乾重という微量にとどまりました。著者らは、洗浄や浸漬、加熱といった処理が海藻のヒ素を減らすという既報に触れつつ、購入した製品の加工履歴は不明であると述べています。
この研究が示すこと
著者らは、この研究が市販シーモス製品に関する基礎的なデータを提供するものだと位置づけています。特にゲル製品では、水分活性が高くpHが4.60を超える例があり、真空包装されたものもあったことから、配合・加工・包装・保存の管理を製品ごとに検討する必要があると論じています。今回の測定だけで個々の製品が危険かどうかを判断できるわけではないことも明記されています。
同時に著者らは限界も挙げています。製品の真正性や原産地を独自に確認できなかったこと、ゲルの試料数が比較的少ないこと、分子同定を行ったのが推定陽性株の一部にとどまることなどです。製品ごとのばらつきの大きさそのものが、シーモスという食品について標準化された検査手法と、生産者・消費者向けの根拠に基づく指針がまだ整っていない現状を映し出している、というのがこの論文の伝えるところです。
著者:Aytana Rejuso(Food Science Department, Cornell AgriTech, 665 West North Street, Geneva, NY 14456, United States)、Mario Çobo(Food Science Department, Cornell AgriTech, 665 West North Street, Geneva, NY 14456, United States)、Jason E. Curran(Food Science Department, Cornell AgriTech, 665 West North Street, Geneva, NY 14456, United States)、Rory Wang(Food Science Department, Cornell AgriTech, 665 West North Street, Geneva, NY 14456, United States)、Gerard Humiston(Food Science Department, Cornell AgriTech, 665 West North Street, Geneva, NY 14456, United States)、Randy Worobo(Food Science Department, Cornell AgriTech, 665 West North Street, Geneva, NY 14456, United States)、Ann Charles Vegdahl(Food Science Department, Cornell AgriTech, 665 West North Street, Geneva, NY 14456, United States. Electronic address: [email protected])
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Aytana Rejuso, Mario Çobo, Jason E. Curran, et al. Microbial and heavy metal analyses of commercially available sea moss and sea moss products. Journal of Food Protection 2026-09-01. DOI: 10.1016/j.jfp.2026.100915. 原著ライセンス:CC BY.