この研究は、インドネシアの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Polish Journal of Food and Nutrition Sciences

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

赤米は、ポリフェノールなどの成分を含む栄養価の高い穀物として知られています。研究チームによれば、こうした玄米類は発芽させることで食べやすさが増すとともに、機能性成分が増えることが報告されてきました。なかでも注目されているのがGABA(γ-アミノ酪酸)というアミノ酸の一種で、論文では血圧の調節やストレスの調節といった生理的な役割から関心を集めている成分として紹介されています。ただし発芽していない米のGABA量はもともと少ないとされています。

従来の発芽方法は米を水に浸す方式が中心ですが、著者らは、微生物の繁殖を防ぐために3〜6時間ごとに水を取り替える必要があり、水の使用量と排水が多くなる点を課題として挙げています。また長時間水に浸けたままだと、水に溶けやすい有用成分が流れ出てしまう可能性も指摘されています。そこで本研究では、水を一部循環させて霧状に吹きかける「部分循環式発芽装置」を用い、発芽時間と紫外線(UV)処理が赤米のGABA量と微生物の状態にどう影響するかを評価することを目的としました。

調べた方法

研究チームが用いた装置は、下段の水タンクと上段の発芽容器からなります。タンクの水をポンプで送り出し、目の細かいフィルター(微細ろ過膜)を通したうえで、上段の米に散水します。散水された水は重力で下段に戻り、再び循環します。この循環は90分ごとに5分間おこなわれ、水のpHと温度は常時記録されました。

UV処理の条件では、フィルターの後ろに紫外線ランプを設置して循環水を照射し、UVなしの条件ではランプを外して比較しました。赤米は表面を次亜塩素酸ナトリウムで殺菌したうえで、室温(およそ30℃)で24時間、48時間、72時間発芽させました。それぞれの時点で、発芽した粒の割合、芽と根の長さ、GABA含量、そして循環水と米の微生物数(一般生菌数と乳酸菌数)が測定されました。

さらに、GABA量が高かった条件のひとつ(UVなし・48時間)の発芽米については、次世代シーケンシングと呼ばれる手法で細菌のDNA配列を読み取り、どのような細菌がどれくらいの割合で存在するかを調べています。これは培養して数える方法では見えにくい菌まで把握するための手法です。

主な報告結果

循環水のpHは、UVあり・なしのいずれでも発芽期間を通じて中性付近で安定していたと報告されています。著者らは、水を替えずに静置して浸漬する方式で起こりやすい急激な酸性化を、この装置が抑えられたと述べています。

GABA含量は発芽時間が延びるにつれて有意に増加し、両方式とも48時間で最大値に達しました。論文の報告値では、24時間の時点でUV処理区が17.03 mg/100 g、UVなしが13.16 mg/100 gで、48時間にはそれぞれ35.38 mg/100 g、36.73 mg/100 gまで増えています。UV処理による差が見られたのは24時間の早い段階に限られ、48時間以降は統計的な差が認められませんでした。著者らは、GABAの蓄積は主に発芽時間によって決まっていたと解釈しています。

発芽率は72時間で64.3〜70.3%と最も高く、24時間では49.5〜52.6%でした。芽は24時間後から見え始めたのに対し、根の出現は48時間後から観察され、器官によって発達の進み方が異なっていました。

微生物については、循環水の一般生菌数が4〜6 log CFU/mLの範囲にあり、乾燥させた発芽米では最大9.44 log CFU/gに達しました。UV処理は24時間の時点で循環水の菌数を減らす方向に働きましたが、48時間・72時間では明確な差は示されませんでした。著者らは、発芽中の種子から溶け出した有機物が水を濁らせて紫外線の透過を妨げること、また散水のたびに粒の表面の菌が水へ入り込むことを、効果が持続しにくい理由として挙げています。なお乾燥は45℃で行われており、水分を減らす効果はあっても、菌を死滅させるには不十分だったと説明されています。

遺伝子解析では、48時間・UVなしの発芽米において、Phytobacter(31.17%)が最も多く、次いでEnterobacter(11.26%)、Cronobacter(10.47%)が検出されました。前二者は種子に元から住み着き、植物の成長を助ける働きが知られている細菌として紹介されています。一方Cronobacterは、条件によって感染症を引き起こすことがある日和見的な菌で、著者らは今回の検出割合は低いものの、食品衛生上の検討課題を示すものだと述べています。同時に、相対的な存在比率だけでは安全性の評価はできず、実際の菌数や菌株ごとの性質、その食品を生で食べるのか加熱するのかといった条件を踏まえた総合的な評価が必要だとも指摘しています。

この研究が示すこと

この研究は、水を部分的に循環させる発芽装置を使うことで、水の使用量を抑えながら赤米のGABAを増やせることを示しました。循環水への紫外線照射は発芽初期には一定の微生物抑制に寄与したものの、発芽が進むにつれてその効果は限られていました。

また、遺伝子解析によって明らかになった細菌群の多くは、種子にもともと付随している菌でした。著者らは、発芽時の微生物の動きが種子自身が持つ菌叢に大きく左右されることを示す結果だとしています。従来の浸漬法に代わる、資源効率の高い発芽方法を考えるうえでの手がかりを与えるとともに、衛生管理をどう組み合わせるかという課題も同時に浮かび上がらせた研究といえます。

著者:Hadi Munarko(Food Technology Study Program , Faculty of Engineering and Science , Universitas Pembangunan Nasional Veteran Jawa Timur , Surabaya 60294 , Indonesia)、Nadia I. Arifah、Muhammad Alfid Kurnianto(Food Technology Study Program , Faculty of Engineering and Science , Universitas Pembangunan Nasional Veteran Jawa Timur , Surabaya 60294 , Indonesia)、Ajeng A. Brahmanti、Jariyah Jariyah、Yusuf Andriana(Research Center for Food Technology and Processing , National Research and Innovation Agency (PRTPP-BRIN) , Gunungkidul 55861 , Indonesia)、Reka Mustika Sari(Research Center for Food Technology and Processing , National Research and Innovation Agency (PRTPP-BRIN) , Gunungkidul 55861 , Indonesia)、Ahmad Khairul Faizin(Department of Mechanical Engineering , Faculty of Engineering and Science , Universitas Pembangunan Nasional Veteran Jawa Timur , Surabaya 60294 , Indonesia)、Fawwaz A. Akbar(Department of Informatics , Faculty of Computer Science , Universitas Pembangunan Nasional Veteran Jawa Timur , Surabaya 60294 , Indonesia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Hadi Munarko, Nadia I. Arifah, Muhammad Alfid Kurnianto, et al. Influence of Germination Time and UV Treatment on γ-Aminobutyric Acid Content and Microbial Dynamics of Germinated Red Rice in a Partially Circulated System. Polish Journal of Food and Nutrition Sciences 2026-08-28. DOI: 10.31883/pjfns/226452. 原著ライセンス:CC BY.