この研究は、イラクの研究機関の研究論文です。
掲載誌:IRAQI JOURNAL OF AGRICULTURAL SCIENCES
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
ブドウ(Vitis vinifera L.)の栽培では、樹の生育や果実の品質を高めるために、肥料以外のさまざまな資材が利用されています。今回紹介する研究で著者らが取り上げたのは、植物が本来もつ調節物質であるサリチル酸、土壌有機物に由来するフルボ酸、そして植物の根と共生する菌類「菌根菌(マイコリザ)」を用いた微生物資材(バイオ肥料)の三つです。
研究チームは、これら三つの資材を単独で用いた場合だけでなく、組み合わせて与えた場合に、ブドウ品種「タイフィ」の緑色部(葉などの栄養器官)の生育、収量、果実の物理的・化学的な性質がどう変化するのかを明らかにすることを目的としました。
何を、どのように調べたか
試験は2024年の生育期に、イラク・クルディスタン地域のドホーク県バレ・ブハル村にある民間のブドウ園で行われました。対象としたのは樹齢10年のタイフィで、T字型の棚(Tトレリス)に仕立てられ、点滴かんがいで水が与えられています。樹の間隔は2.5メートル四方で、3月の第2週に剪定を行い、2芽ずつを残した更新用の短い枝(スパー)を4本、7芽ずつを残した結果枝を8本残す方法がとられました。
資材の与え方は次のとおりです。サリチル酸は0、200、400ミリグラム毎リットルの3水準、フルボ酸は0、3、6ミリグラム毎リットルの3水準で、いずれも葉に散布する方法(葉面散布)で4月と5月に処理されました。微生物資材(菌根菌)は1樹あたり0、50、100グラムの3水準を土壌に施用し、発芽前に年1回与えられました。
三つの要因をそれぞれ3水準ずつ組み合わせたため、処理区は合計27通りとなります。試験は乱塊法(RCBD)による要因試験として計画され、1樹を1つの実験単位とし、3反復で行われたため、実験単位は全部で81となりました。
報告された主な結果
著者らの報告によると、無処理(対照)と比べて、葉の総クロロフィル量、葉面積、1樹あたりの果房数、1樹あたりの収量、さらに果汁中のビタミンCが、いずれも有意に増加しました。クロロフィルは葉が光合成を行うための緑色の色素で、その量は葉の充実度の指標として使われます。
一方、果汁中の硝酸塩の割合(%)は、すべての処理区で対照より低下したと報告されています。また、サリチル酸・フルボ酸・微生物資材のいずれも高い濃度・量で組み合わせた区では、対照と比べて調べたすべての形質が改善したとされています。
この研究が示すこと
この研究は、サリチル酸とフルボ酸の葉面散布、および菌根菌を用いた土壌施用という三つの資材を、単独ではなく組み合わせて用いたときに、タイフィの葉の状態から収量、果実の成分までが対照より良好になったことを、一季分の圃場試験として報告したものです。
化学肥料以外の資材によって樹の生育と果実の品質を同時に高められる可能性を、実際の栽培条件に近い園地で確かめた点に、この報告の意味があります。
著者:Hussein Suliman(College of Agriculture Engineering Sciences, University of Duhok)、Shawkat Al-Atrushy(College of Agriculture Engineering Sciences, University of Duhok)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Hussein Suliman, Shawkat Al-Atrushy. INFLUENCE OF FOLIAR SPRAY OF SALICYLIC ACID, FULVIC ACID AND BIO-FERTILIZER ON GROWTH, YIELD AND QUALITY OF GRAPEVINE CV. TAIFI. IRAQI JOURNAL OF AGRICULTURAL SCIENCES 2026-08-31. DOI: 10.36103/zwjjfx92. 原著ライセンス:CC BY.