著者の所属・活動拠点の国は、インドです。

掲載誌:Plant Science Today

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

マンネンタケ属(ガノデルマ属)は、主に朽ちた木に生えるキノコの仲間です。樹木の病気の原因になる一方、東アジアでは「霊芝(れいし)」として2000年以上前から伝統的に利用されてきました。インドでも需要の高まりを背景に栽培への関心が高まっています。

インド北東部のナガランド州は、多様な森林と亜熱帯から熱帯の気候を持ち、著者らはマンネンタケ類の栽培に適した地域だと考えています。しかし、この地域に自生するマンネンタケ類の分布や多様性、成分の特徴についての科学的な情報は限られていました。そこで研究チームは、ナガランド州ロンレン地区で採集したマンネンタケ類について、見た目の特徴、培養したときの性質、成分、遺伝的な位置づけを総合的に調べました。

採集したキノコと培養の特徴

研究チームは2024年の雨季にロンレン地区の森林を調査し、異なる場所と宿主の木から4つの子実体(一般にキノコとして目に見える部分)を採集しました。枯れ木に生えていたものもあれば、生きた木の幹や露出した根に生えていたものもありました。

4つの試料はいずれもマンネンタケ類に典型的な形をしていましたが、かさの大きさや色、表面のつやには違いがありました。3つは漆を塗ったような光沢のあるかさを持っていた一方、1つは光沢のない茶色のかさでした。著者らは、この地域のマンネンタケ類の集団には形の上で大きな幅があることを示すと述べています。

4試料のうち2つから、純粋な菌糸の培養株を得ることができ、GLN1とGLN2と名付けられました。寒天培地の上でGLN1は1日あたり9.1ミリと速く広がり、黄色くなる密な菌糸を作りました。GLN2は1日あたり7.5ミリと広がりが遅く、のちに赤褐色に色づき、同心円状の模様を示しながら扇形に広がりました。

成分と抗酸化活性の比較

研究チームは2つの培養株の菌糸から成分を取り出して比較しました。水に溶ける多糖類(糖が多数つながった物質)の量は、GLN2が乾燥重量1グラムあたり14.37ミリグラムと、GLN1の7.74ミリグラムのおよそ2倍でした。水に溶けない多糖類は、両株とも1グラムあたり2.10〜2.91ミリグラムの範囲で、大きな差はありませんでした。分離の結果、GLN1の多糖類は複数の成分が混ざった構成で、GLN2はほぼ1種類の大きな分子が中心という違いも見られました。

抗酸化力は、DPPHという試薬の不安定な分子(ラジカル)をどれだけ消せるかで調べました。多糖類の部分には目立った抗酸化活性は見られませんでしたが、分子の小さい成分を集めた抽出物ははっきりした活性を示しました。濃度0.5 mg/mLでの阻害率は、GLN2由来の抽出物が約60%、GLN1由来は36%でした。活性の半分に達する濃度(EC50、値が小さいほど強い)もGLN2が0.23 mg/mL、GLN1が0.69 mg/mLで、GLN2のほうが強い抗酸化力を示しました。

ポリフェノール(植物などに含まれる抗酸化性の物質群)の総量も、GLN2が抽出物1グラムあたり27.9ミリグラムと、GLN1の16.5ミリグラムより多く含まれていました。両株ともポリフェノール量と抗酸化活性の間に強い相関が見られ、著者らはポリフェノールが抗酸化作用の主な担い手であると考えています。

遺伝子からみた位置づけと研究の意味

種を確かめるため、研究チームは菌類の識別に広く使われるITS領域と呼ばれるDNAの部分を読み取りました。データベースと照合した結果、2つの株はマンネンタケ(Ganoderma lucidum)の配列と99〜100%一致しました。さらに系統解析(遺伝情報から近縁関係を推定する方法)では、2株はマンネンタケのグループの中に含まれながら、既存の参照配列とは別の小さなまとまりを作りました。著者らは、ナガランドの株がこの地域の環境に適応した、遺伝的に特徴のある系統である可能性を示唆しています。

この研究は、インド北東部に自生するマンネンタケ類について、形・培養の性質・成分・遺伝情報を組み合わせて記録したものです。同じ地域から得られた株の間でも、成長の仕方や多糖類の構成、抗酸化活性に違いがあることが示されました。著者らは、こうした地域の株の特徴が、機能性素材としての利用や地域での栽培を考えるうえでの基礎情報になると位置づけています。

原著論文の著者・所属:Kumar Behara Shubhendu(Indian Council of Agricultural Research-Krishi Vigyan Kendra (ICAR-KVK), Longleng 798 625, Nagaland, India)、Pradhan Sabyasachi(Faculty of Agricultural Sciences, Siksha 'O' Anusandhan Deemed to be University, Bhubaneswar 751 003, Odisha, India)、Sidhant Rath Surya(Faculty of Agricultural Sciences, Siksha 'O' Anusandhan Deemed to be University, Bhubaneswar 751 003, Odisha, India)、Singh Rajpoot Ashutosh(Department of Agricultural Extension, Samrat Vikramaditya Vishwavidyalaya, Ujjain 456 010, Madhya Pradesh, India)、Amat Anshuman(Faculty of Agricultural Sciences, Siksha 'O' Anusandhan Deemed to be University, Bhubaneswar 751 003, Odisha, India)、Kumar Avaneesh(Indian Council of Agricultural Research-Krishi Vigyan Kendra (ICAR-KVK), Longleng 798 625, Nagaland, India)、Ram Kalu(Indian Council of Agricultural Research-Krishi Vigyan Kendra (ICAR-KVK), Longleng 798 625, Nagaland, India)、Jena Biswajit(CV Raman Global University, Bhubaneswar 752 054, Odisha, India)、Nayak Priyanka(CV Raman Global University, Bhubaneswar 752 054, Odisha, India)、Pradhan Subhadarsini(CV Raman Global University, Bhubaneswar 752 054, Odisha, India)、Charan Kalita Hari(Indian Council of Agricultural Research-Krishi Vigyan Kendra (ICAR-KVK), Longleng 798 625, Nagaland, India)、Kumar Mohanty Amulya(Indian Council of Agricultural Research-Agricultural Technology Application Research Institute (ICAR-ATARI) Zone-VII, Umiam 793 103, Meghalaya, India)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Kumar Behara Shubhendu, Pradhan Sabyasachi, Sidhant Rath Surya, et al. Diversity and characterisation of Ganoderma species from the northeastern hills of India. Plant Science Today 2026-10-17. DOI: 10.14719/pst.12268. 原著ライセンス:CC BY.