著者の所属・活動拠点の国は、インドネシア、マレーシアです。

掲載誌:F1000Research

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

石油由来のプラスチック包装は性能に優れる一方、環境への負荷が問題になっています。そこで、自然に分解される包装材の開発が進められています。その一つが「可食フィルム」です。食品に密着させて使える薄い膜で、そのまま食べることもできます。

研究チームが原料に選んだのは、パンガシウス属のナマズの皮です。この魚を切り身に加工すると、皮を含む副産物が最大55%出ます。皮からはゼラチンを取り出せます。ゼラチンは通常ウシやブタから作られますが、健康面や宗教上の規則の点で課題があるため、魚の皮は代替原料として期待されています。

ただし、魚皮ゼラチンのフィルムはそれだけでは生物学的な機能が乏しいとされます。そこで、抗菌性などをもつ成分を加えた「アクティブ包装」にする方法が検討されています。著者らは、マングローブの一種Bruguiera gymnorrhizaの葉の抽出液を使って銀ナノ粒子(大きさ1〜100ナノメートル程度の銀の粒子)を合成し、ゼラチンフィルムに加えました。この研究の目的は、銀ナノ粒子を加えたときにフィルムの物理的・化学的な性質がどう変わるかを調べることです。

何をどのように調べたか

研究チームは、まずナマズの皮をアルカリと酸の溶液に浸しました。その後、温水で抽出し、乾燥させてゼラチン粉末を作りました。銀ナノ粒子は、硝酸銀の溶液にマングローブ葉の抽出液を混ぜる方法で合成しました。植物に含まれる成分が銀のイオンを還元し、ナノサイズの粒子に変えます。この作り方は「グリーン合成」と呼ばれます。

フィルムは、ゼラチン溶液に保湿・柔軟化のためのグリセロールを加え、銀ナノ粒子を溶液100ミリリットルあたり0、2、4、8ミリリットル混ぜて乾燥させて作りました。論文の結論では、この添加量を0、2、4、8%と表記しています。

評価した項目は次のとおりです。厚さ、水分量、水蒸気の通しやすさ(透湿度)、引っ張りへの強さ(引張強度)、破断するまでの伸び、pH、色です。各項目は統計的な手法で比較しました。

主な結果

著者らの報告では、銀ナノ粒子をどの濃度で加えても、色以外の性質には統計的に意味のある差は見られませんでした。研究チームは、加えた銀ナノ粒子の量が少なかったためではないかと考えています。

色以外の項目の結果は次のとおりです。厚さは145〜216マイクロメートルで、日本工業規格(JIS)が示す上限の250マイクロメートル以内でした。水分量は9.57〜11.16%、pHは5.92〜6.01でした。引張強度は14.58〜19.72メガパスカルで、規格の最低値0.3メガパスカルを上回りました。数値の上では、銀ナノ粒子が増えるほど強度が下がる傾向も述べられています。

一方、規格を満たさなかった項目もありました。破断までの伸びは21.86〜54.19%で、論文が示す基準値70%には届きませんでした。透湿度は1平方メートルあたり1日30.91〜42.55グラムで、JISの上限である7グラムを大きく超えました。著者らは、原料のタンパク質が水を引き寄せやすい性質をもつことを理由に挙げています。

はっきりした違いが出たのは色です。銀ナノ粒子を多く加えるほど、フィルムは暗くなり、赤みと黄みが増しました。これらの結果を総合的に評価し、研究チームは4%(100ミリリットルあたり4ミリリットル)の添加が最もよい条件だとしました。

研究が示すこと

この研究は、魚の加工で出る皮と、マングローブ葉で作った銀ナノ粒子を組み合わせて可食フィルムを作れることを示しました。銀ナノ粒子を加えても、色以外の基本的な性質はほぼ変わりませんでした。著者らはこの結果から、銀ナノ粒子がフィルムの性質を損なわずにアクティブ包装の材料になりうると述べています。

ただし、今回調べたのはフィルムの物理的・化学的な性質です。抗菌作用などの働きや安全性は評価していません。論文も、銀ナノ粒子を加えたフィルムの毒性や生物学的な機能はまだ調べる必要があるとしています。透湿度や伸びが基準に届かなかった点も含め、これは素材の基本的な性質を確かめた段階の報告です。

原著論文の著者・所属:Rahmi Nurdiani(Bioseafood Research Unit Malang East Java 65145 Universitas Brawijaya; Fish Product Technology Malang East Java 65145 Universitas Brawijaya)、Asep A. Prihanto(Bioseafood Research Unit Malang East Java 65145 Universitas Brawijaya; Fish Product Technology Malang East Java 65145 Universitas Brawijaya)、Muhamad Firdaus(Bioseafood Research Unit Malang East Java 65145 Universitas Brawijaya; Fish Product Technology Malang East Java 65145 Universitas Brawijaya)、Faridatul Nur Aini(Fish Product Technology Malang East Java 65145 Universitas Brawijaya)、Fajrin Adin Nabilah(Fish Product Technology Malang East Java 65145 Universitas Brawijaya)、Rosnita A Talib(Department of Process and Food Engineering 43400 UPM, Serdang Selangor Universiti Putra Malaysia)、Nurul Huda(Postgraduate School Malang East Java 65145 Universitas Brawijaya)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Rahmi Nurdiani, Asep A. Prihanto, Muhamad Firdaus, et al. Physicochemical Characteristics of Pangasius sp. Skin-Gelatin-Based-Edible Film Enriched with Silver Nanoparticles. F1000Research 2026-10-05. DOI: 10.12688/f1000research.129024.3. 原著ライセンス:CC BY.