著者の所属・活動拠点の国は、イタリアです。
掲載誌:Frontiers in Soil Science
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
家庭などから出る生ごみ(都市有機性廃棄物)の回収では、使い捨ての食器や袋などに、生分解性で堆肥化できると認証されたプラスチック(以下、BCP)が使われることが増えています。こうした製品は表示に従って生ごみと一緒に出せますが、その残りかすが堆肥の品質や、堆肥を施した土壌と作物にどう影響するかは十分に分かっていませんでした。
イタリアのボローニャ大学の研究チームは、認証済みBCPの残渣を含む生ごみ堆肥が、堆肥の品質、土壌の化学的・生物的なはたらき、養分の利用しやすさ、レタスの生育に影響するかを調べました。
どのように調べたか
研究チームは、生ごみ67%と剪定枝などの緑のごみ33%を原料に、工業的な堆肥化の条件で3種類の堆肥を作りました。BCPの含有量は、0%、イタリアの全国平均に相当する1.43%、その2倍にあたる2.86%です。BCPには、カップやカトラリー、皿、袋など、生ごみと一緒に捨てられる一般的な堆肥化可能製品が含まれていました。
まず堆肥そのものの性質を測り、欧州連合(EU)の肥料規則が定める基準と照らし合わせました。次に、二つの実験を行いました。一つは、堆肥を混ぜた土壌を23℃で6週間保ち、土の化学成分や微生物の活動を調べる培養実験です。もう一つは、同じ堆肥を混ぜた土でレタスを25℃で4週間育てるポット実験です。どちらの実験でも、堆肥は窒素量をそろえて施し、堆肥を加えない土とも比較しました。
主な結果
3種類の堆肥は、全国平均の2倍のBCPを含むものでも、成熟度や安定性、EUの規則が定める有機炭素・窒素や微量元素の基準を満たしていました。化学的な性質も互いに近いものでした。
6週間の培養実験では、土壌の有機炭素や全窒素の量に処理間で統計的な差は見られませんでした。一方、微生物の活動を示す指標には比較的はっきりした違いが表れました。BCPを2.86%含む堆肥を加えた土では、微生物の呼吸で出る二酸化炭素の累積量が、BCPなしの堆肥より81%、全国平均レベルの堆肥より63%多くなりました。加えた炭素のうち呼吸で失われた割合は、BCPなし、全国平均、2倍の順に12%、14%、22%でした。微生物の量あたりの呼吸量を表す「代謝商」も、2倍の堆肥で堆肥を加えない土より97%高くなりました。著者らはこれを、微生物の量が同じ割合で増えないまま炭素の分解が進んだ状態と解釈しています。
土壌酵素では、BCPを含む二つの堆肥で一部の酵素活性が高まりました。ただし、ある酵素は全国平均レベルの堆肥で最も強く反応するなど、BCPが多いほど効果が大きくなるという一貫した関係は見られなかったと報告されています。また、植物が吸収しやすい形の金属の量は、BCPの含有量が増えても有意には変わりませんでした。
レタスの実験では、堆肥を加えた土で有機炭素や窒素、植物が利用しやすいリンが増え、レタスの地上部の乾燥重量も増えました。増加が最も大きかったのは2倍の堆肥で、堆肥なしより26%でした。葉のカリウム濃度も高まりました。そして、BCPの含有量が最も多い堆肥で育てたレタスでも、葉に有害となりうる元素がたまる傾向は見られませんでした。
研究が示すこと
著者らは、認証済みBCPが工業的な堆肥化で適切に処理され、生ごみ中に現実的な濃度で含まれる場合には、堆肥の生産や土壌への施用と両立すると結論づけています。また、こうしたプラスチックの環境影響を評価する際には、分解されにくい従来のプラスチックとは分けて考えるべきだとしています。
一方で、BCPが最も多い条件では土壌微生物の活動に変化が見られました。研究チームはこの点を踏まえ、堆肥を繰り返し施した場合の影響や、BCP由来の残渣が農地で残るのか変化するのかを、より長期の野外研究で確かめる必要があると述べています。
原著論文の著者・所属:A. Paesano(Department of Agricultural and Food Sciences, Alma Mater Studiorum University of Bologna)、J. Cupi(Department of Agricultural and Food Sciences, Alma Mater Studiorum University of Bologna)、N. Cioffi(Department of Agricultural and Food Sciences, Alma Mater Studiorum University of Bologna)、P. Gioacchini(Department of Agricultural and Food Sciences, Alma Mater Studiorum University of Bologna)、A. Ciurli(Department of Agricultural and Food Sciences, Alma Mater Studiorum University of Bologna)、P. Malena(Department of Agricultural and Food Sciences, Alma Mater Studiorum University of Bologna)、M. Mazzon(Department of Agricultural and Food Sciences, Alma Mater Studiorum University of Bologna)、C. Marzadori(Department of Agricultural and Food Sciences, Alma Mater Studiorum University of Bologna)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):A. Paesano, J. Cupi, N. Cioffi, et al. Effects of compostable plastic residues in municipal organic waste compost on soil quality and lettuce growth. Frontiers in Soil Science 2026-10-21. DOI: 10.3389/fsoil.2026.1952297. 原著ライセンス:CC BY.