著者の所属・活動拠点の国は、ブラジルです。
掲載誌:Revista Tópicos.
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
野菜や果物の包装には、さまざまな種類のプラスチックフィルムが使われています。著者らは、代表的な4種類の包装用フィルム、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)の環境への影響を比較しました。
評価には「ライフサイクルアセスメント(LCA)」を用いています。LCAは、原料の調達から製造、使用、廃棄までの一生を通じて、製品が環境にどれだけ負荷を与えうるかを見積もる手法です。従来のLCAでは、捨てられたプラスチックが細かく砕けて生じるマイクロプラスチックの影響が十分に扱われていませんでした。そこで研究チームは、海に流れ出たマイクロプラスチックが海の生き物に与える影響を評価に組み込むことを目指しました。
どのように調べたか
比較の基準は、青果物1人前分を包むフィルム1枚(25センチ×50センチ、厚さ200マイクロメートル)です。評価の範囲は、製造から廃棄までを含む「ゆりかごから墓場まで」としました。廃棄の行き先には、リサイクル、衛生埋立、野外への投棄の3つを想定しています。ブラジルの廃棄物データをもとに、それぞれの割合は約24%、約46%、約29%と設定されました。
計算には環境評価ソフトのOpenLCAを使い、2つの評価方法を組み合わせました。1つは、地球温暖化や水の消費など多くの項目で環境影響を数値化するReCiPe 2016です。もう1つは、海洋プラスチックの影響を評価するために開発されたMarILCAです。研究は3段階で進められました。まずReCiPeで4種類のフィルムを全体的に比較しました。次に、マイクロプラスチックが海の生物に物理的に及ぼす影響(「生物への物理的影響」)を計算しました。最後に、その結果を生態系の健全さを表す指標に組み込みました。
海に出たプラスチックがどれだけマイクロプラスチックに砕けるかは、まだ確かには分かっていません。そのため研究チームは、流出したプラスチックの質量のうち10%、50%、100%がマイクロプラスチックになる3つの場合を想定して計算しました。
主な結果
ReCiPeによる全体比較では、PETが最も環境影響の大きい素材となり、18の評価項目のうち15項目で最大でした。2番目はLDPEで、HDPEとの差は多くの項目で小さく、似た傾向を示しました。PPはすべての項目で最も影響が小さいと報告されています。
マイクロプラスチックが海の生物に与える物理的影響の計算では、PETとHDPEが特に有害という結果になりました。PPは、砕ける割合をどう仮定しても一貫して最も影響の小さいフィルムでした。
この物理的影響を生態系への影響の指標に加えると、その比重は大きなものになりました。要旨によれば、半分がマイクロプラスチックになるという中間の想定では、生態系への影響全体のうち57%以上を、マイクロプラスチックによる物理的影響が占めました。
一方で著者らは、評価の限界も挙げています。マイクロプラスチックには、毒性や生物への絡まりなど、ほかにも知られた影響があります。しかし、現在の評価手法ではそれらをまだ数値化できません。また、物理的影響には環境影響を1つの総合点にまとめるための換算基準がないため、総合点の比較には含められませんでした。さらに、どのフィルムも廃棄される量を同じと仮定しているため、結果は素材ごとに設定された影響の係数に左右されると説明されています。
研究が示すこと
この研究は、包装用プラスチックの環境評価にマイクロプラスチックの影響を加えると、生態系への影響の見積もりが大きく変わりうることを示しました。著者らは、マイクロプラスチックによる汚染を数値化する評価項目を整えることが、より現実に即した環境評価に欠かせないと結論づけています。
原著論文の著者・所属:Pablo Steven Rodrigues Rios(Docente do Curso Superior de Engenharia de Produção do Instituto de Ciências Exatas e Tecnologia Campus Itacoatiara, AM. ou)、Marcell Mariano Corrêa Maceno(Docente do Curso Superior de Engenharia de Produção da Universidade Federal do Paraná Campus Curitiba, PR)、Jessé Marques da Silva Júnior Pavão
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Pablo Steven Rodrigues Rios, Marcell Mariano Corrêa Maceno, Jessé Marques da Silva Júnior Pavão. AVALIAÇÃO DO CICLO DE VIDA DE FILMES PLÁSTICOS DE EMBALAGEM CONSIDERANDO IMPACTOS AMBIENTAIS DE MICROPLÁSTICOS. Revista Tópicos. 2026-09-08. DOI: 10.70773/revistatopicos/788648182. 原著ライセンス:CC BY.