著者の所属・活動拠点の国は、チリ、スペインです。
掲載誌:Nutrients
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
幼児期は、体や運動の能力、行動習慣が大きく変化する時期です。この時期に、走る・跳ぶ・投げる・捕るといった基本的な動きを身につけ、体を安定させるバランス能力も育っていきます。体力は子どもの現在と将来の健康を示す目安の一つとして重視されており、幼児期の体力に何が関係しているのかを知ることは、子どもの健康づくりを考えるうえで大切だと著者らは述べています。
著者らによると、これまでに、運動能力の高い子どもほど体力も高い傾向があることが報告されてきました。一方で、食事の質が幼児の運動能力や体力とどう関係しているのかは、同じ子どもたちを対象に三つをまとめて調べた研究が少なく、十分に分かっていませんでした。そこで研究チームは、4〜6歳の子どもを対象に、食事の質が運動能力や体力と関係するのかを調べました。あわせて、運動能力、なかでも姿勢を安定させる力(姿勢安定性)が、こうした関係の中でどのような位置にあるのかも検討しました。
何をどのように調べたか
研究は、チリのテムコ市にある幼児教育施設6か所で行われました。ある一時点での状態を測定し、項目どうしの関係を調べる「横断研究」です。保護者の同意を得て測定を受けた子どもは496人でした。ただし、食事の質問票などで分析に必要なデータがそろわない子どもを除いたため、主な分析の対象は134人になりました。
運動能力は、子どもの運動の発達を評価する検査から、ボールを捕る・投げる課題と、右足・左足での片足立ち、つま先歩き、マットの上でのバランス課題を用いて測りました。体力は、幼児向けに作られた体力テストを主に用いて評価しました。調べた項目は、立ち幅跳び(脚の筋力)、20メートルの往復走(持久力)、10メートルを4回往復する走り(スピードと敏捷性)、長座体前屈(柔軟性)です。各項目の成績は、単位の違いをそろえる処理をしたうえでまとめ、運動能力全体、姿勢安定性、体力全体の総合得点も作りました。
食事は、保護者が回答する質問票を使い、15種類の食品群をどのくらいの頻度で食べているかを尋ねました。果物、野菜、魚、全粒粉パンなどを「健康的な食品」、菓子、甘い飲み物、ポテトチップス、フライドポテトを「健康的でない食品」とみなし、前者の得点から後者の得点を引いた値を「食事の質」の指標としました。この指標はこの研究のために作られたもので、食べる量や摂取エネルギー量は考慮していません。そのため著者らは、食事の傾向を相対的に示す探索的な目安だと位置づけています。分析では、年齢、性別、体格指数(BMI)の影響を差し引いたうえで、項目どうしの関係を調べました。
主な結果
年齢、性別、BMIの影響を考慮しても、運動能力全体の得点と姿勢安定性の得点はいずれも、調べたすべての体力項目と統計的に意味のある関係を示しました。具体的には、これらの得点が高い子どもほど、体力全体の得点、脚の筋力、持久力、柔軟性、スピードと敏捷性のいずれも良い傾向が見られました。
一方で、食事の質と体力の間には、統計的に意味のある関係は認められませんでした。食事の質が高い子どもほど運動能力が高い方向の傾向は見られましたが、統計的に意味があるといえる水準には届きませんでした。研究チームは、食事の質が運動能力を通じて体力と結びついているという経路も探索的に調べましたが、その経路を示す明確な関係は見られませんでした。健康的な食品の得点と健康的でない食品の得点を別々に使った追加の分析でも、結果の向きは主な分析と一致していました。
研究が示す意味
この研究では、幼児の運動能力、特に姿勢を安定させる力が、さまざまな体力の要素と一貫して結びついていることが示されました。一方で、食事の質と体力との間に明確な関係は確認されませんでした。著者らは、この結果を食事が幼児の発達と無関係である証拠とは解釈すべきではないとしています。そのうえで、食事の質と運動能力の間には、好ましい方向のゆるやかな傾向がうかがえたと述べています。
ただし、この研究は一時点の測定にもとづいているため、どちらが原因でどちらが結果かは分かりません。また、食事は保護者の回答によるもので、身体活動量や家庭の社会経済的状況、睡眠などの影響は分析に含まれていません。著者らは、栄養、運動能力、体力を互いにつながった領域として、まとめて捉える視点が大切だと結論づけています。
原著論文の著者・所属:Josivaldo de Souza-Lima(Facultad de Educación y Humanidades, Escuela de Ciencias del Deporte, Universidad Andres Bello, Las Condes, Santiago 7550000, Chile)、Andrés Godoy-Cumillaf(Grupo de Investigación en Educación Física, Salud y Calidad de Vida (EFISAL), Facultad de Educación, Universidad Autónoma de Chile, Temuco 4780000, Chile)、Frano Giakoni-Ramírez(Facultad de Educación y Humanidades, Escuela de Ciencias del Deporte, Universidad Andres Bello, Las Condes, Santiago 7550000, Chile)、Catalina Muñoz-Strale(Facultad de Educación y Humanidades, Escuela de Ciencias del Deporte, Universidad Andres Bello, Las Condes, Santiago 7550000, Chile)、Maribel Parra-Saldias(Departamento de Educación Física, Deporte y Recreación, Universidad de Atacama, Copiapó 1530000, Chile)、Daniel Duclos-Bastias(METIS Research Laboratory, Facultad de Negocios y Tecnología, Universidad Alfonso X el Sabio (UAX), 28691 Madrid, Spain; iGEO, Escuela de Educación Física, Facultad de Filosofía y Educación, Pontificia Universidad Católica de Valparaíso, Valparaíso 2340025, Chile)、Claudio Farias-Valenzuela(Escuela de Ciencias de la Actividad Física, Universidad de Las Américas, Santiago 1530000, Chile)、Eugenio Merellano-Navarro(Department of Physical Activity Sciences, Faculty of Education Sciences, Universidad Católica del Maule, Talca 3530000, Chile)、José Bruneau-Chávez(Departamento de Educación Física, Deportes y Recreación, Universidad de la Frontera, Temuco 4811230, Chile)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Josivaldo de Souza-Lima, Andrés Godoy-Cumillaf, Frano Giakoni-Ramírez, et al. Associations Among Diet Quality, Motor Competence, and Physical Fitness in Preschool Children: A Cross-Sectional Study. Nutrients 2026-08-03. DOI: 10.3390/nu18152519. 原著ライセンス:CC BY.