著者の所属・活動拠点の国は、トルコです。

掲載誌:Metabolites

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

ビタミンDは、カルシウムやリンの調節を通じて骨を丈夫に保つ栄養素として知られています。近年は、免疫や炎症、エネルギー代謝などにも関わる可能性が指摘されています。また、体脂肪が多い人では、ビタミンDが脂肪組織にため込まれて血中濃度が下がるという考え方もあります。ただし、ビタミンDと体組成(体を構成する脂肪や筋肉の量・割合)の関係については、これまでの研究で結果が一致していませんでした。

著者は、これまでの研究の多くがBMI(体格指数)や全体的な肥満度に注目してきたと指摘しています。内臓脂肪、体脂肪率、筋肉量、BMI、そして「代謝年齢」を同じ枠組みでまとめて検討した研究は少ないとしています。代謝年齢とは、測定機器が算出する指標です。その人の基礎代謝量(安静時に消費するエネルギー量)を、同じ年齢層の平均と比べて示します。本研究の目的は、年齢と性別の影響を考慮したうえで、血中ビタミンD濃度がこれらの体組成指標とどう関係するかを調べることでした。仮説は、ビタミンDが低い人ほど、内臓脂肪が多く代謝年齢が高いというものです。

何をどのように調べたか

研究は、病院に蓄積された記録をさかのぼって分析する「後ろ向き横断研究」です。対象は、2023年2月から2025年5月までにある大学病院を受診した18〜64歳の成人のうち、血中ビタミンD濃度の測定と体組成測定が同じ時期に行われていた人です。妊娠中や授乳中の人、重い腎臓病や肝臓病などがある人、ビタミンDの代謝に影響する薬や高用量のビタミンDサプリメントを使っている人は除外されました。最終的に、見かけ上健康な成人164人(男性65人、女性99人)が分析対象となりました。平均年齢は約35歳です。

体組成は、体に微弱な電流を流して脂肪や筋肉の量を推定する「生体電気インピーダンス法」の機器で測定されました。この機器から、BMI、体脂肪率、筋肉量、内臓脂肪レベル、代謝年齢が得られています。分析は2段階です。まず、ビタミンD濃度と各指標が一緒に増減する傾向(相関)を調べました。次に、年齢と性別の影響を統計的に差し引いても関係が残るかを、重回帰分析という手法で確かめました。

主な結果

参加者の血中ビタミンD濃度は平均11.59 ng/mLでした。相関分析では、ビタミンD濃度が低い人ほど、内臓脂肪レベル、代謝年齢、BMI、体脂肪率が高い傾向が見られました。相関の強さはいずれも弱めから中程度で、相関係数はおよそマイナス0.2台です。一方、筋肉量との間には統計的に意味のある関係は見られませんでした。

年齢と性別を考慮した分析では、内臓脂肪レベル、体脂肪率、代謝年齢について、ビタミンD濃度との負の関係が独立して残りました。代謝年齢との関係は、著者らも「弱い」と表現しています。これに対してBMIでは、年齢と性別を考慮すると、ビタミンDとの独立した関係は認められませんでした。またどの分析でも、ビタミンDより年齢のほうが体組成の指標とずっと強く結びついていました。特に内臓脂肪と代謝年齢では、年齢が最も強い予測因子でした。

著者は、BMIで関係が消えた理由について次のように考察しています。BMIは身長に対する体重の割合にすぎず、脂肪と筋肉を区別できません。そのため、ビタミンDとの関係は、体の大きさそのものよりも、脂肪の量や付き方とより密接に結びついている可能性があるとしています。

この研究が示すこと

この研究は、見かけ上健康な成人において、血中ビタミンD濃度の低さが、内臓脂肪や体脂肪率の多さ、代謝年齢の高さと結びついていることを示しました。この結びつきは、年齢と性別の影響を考慮しても残っていました。ビタミンDとの関係を見るには、BMIよりも内臓脂肪や体脂肪率といった、より具体的な体組成指標が役立つことも示唆されています。

ただし、この研究は一時点のデータを調べたもので、因果関係や関係の向きは分かりません。脂肪が多いからビタミンDが下がるのか、ビタミンDが低いから脂肪がたまりやすいのかは判断できないと、著者自身が述べています。季節や服装による日光の浴び方の違いも考慮できていません。さらに、代謝年齢は機器メーカー独自の非公開の計算方法で算出されています。これらの点を踏まえ、著者は、ビタミンDの状態を体組成や代謝の評価とあわせて見ていく視点の手がかりとして、この結果を位置づけています。

原著論文の著者・所属:Veysel Ağan(Pharmacy Services Program, Health Services Vocational School, Harran University, 63300 Şanlıurfa, Türkiye)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Veysel Ağan. Independent Associations of Vitamin D Levels with Visceral Fat and Metabolic Age in Adults: A Retrospective Cross-Sectional Study. Metabolites 2026-07-31. DOI: 10.3390/metabo16080539. 原著ライセンス:CC BY.