思春期は心も体も大きく変化する時期であり、この時期のメンタルヘルスは生涯にわたる健康の土台になるといわれています。近年、食生活とメンタルヘルスの関連に関心が集まっていますが、インドネシアの思春期を対象に、日々の食事パターン全体とうつ症状との関連を調べた研究はまだ限られていました。今回紹介するのは、インドネシアの高校生を対象に、食事パターンとうつ症状の関連を横断的に調べた研究です。

研究でわかったこと

この研究では、インドネシアの4つの学校に通う15~18歳の思春期228名を対象に調査が行われました。うつ症状は「Kessler Psychological Distress Scale-10(K-10)」という心理的ストレスを測る尺度を用いて評価され、食事パターンは非定量的な食物摂取頻度調査票(FFQ)から導き出されました。得られたデータをもとに、食事パターンとうつ症状との関連が多変量ロジスティック回帰分析によって検討されています。

調査の結果、対象者の17.5%にうつ病に該当する症状がみられました。また、回答から5つの主要な食事パターンが特定されました。具体的には、「栄養密度の高い食品」「現代欧米型の食品」「インドネシア伝統食品」「動物性たんぱく質と複合炭水化物」「乳製品またはプロバイオティクス食品」の5パターンです。

交絡因子を調整した分析では、現代欧米型食パターンの摂取量が中程度に低いグループ(5段階中2番目・3番目に低い群)で、摂取量が最も多いグループと比べてうつ病リスクが有意に低いことが示されました。また、インドネシア伝統食パターンについても、5段階中2番目に低い摂取量のグループで、うつ病リスクが有意に低いという関連が示されています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

注目したいのは、この論文の著者ら自身が「この関連は単純な直線的なもの(摂取量が少ないほどリスクが下がる、といった一方向の関係)ではない」と述べている点です。つまり、現代欧米型食パターンやインドネシア伝統食パターンについて、特定の中間的な摂取量のグループでのみリスク低下との関連がみられ、最も摂取量が少ないグループで一貫して同様の傾向がみられたわけではありませんでした。そのため、著者らは「解釈には注意が必要」としています。

また、この研究は横断研究であり、ある一時点での食事パターンとうつ症状の関連を調べたものです。対象者数も228名と限られており、この一つの研究結果だけで「特定の食事がうつ症状を予防する、あるいは改善する」といった結論が確定したわけではない点に留意する必要があります。

まとめ

この研究では、インドネシアの思春期を対象に食事パターンとうつ症状との関連を調べ、現代欧米型食パターンとインドネシア伝統食パターンの一部の摂取量グループで、うつ病リスクが低いことと関連していることが示唆されました。ただし、その関連は単純な直線的なものではなく、著者ら自身も解釈には慎重さが必要だとしています。食事とメンタルヘルスの関係を考えるうえで一つの手がかりとなる研究といえるでしょう。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:インドネシアの思春期における食事パターンとうつ症状の関連:横断研究(ソーシャル・サイエンシズ・アンド・ヒューマニティーズ・オープン・2026年08月)