著者の所属・活動拠点の国は、エチオピアです。

掲載誌:Science Futures

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

グルテンの代わりを探すという課題

小麦や大麦、ライ麦などに含まれるたんぱく質「グルテン」は、パン生地に弾力と粘りを与え、発酵で生じた気体を閉じ込めて膨らみを支えます。一方、セリアック病の人がグルテンを含む食品を食べると免疫反応が起こり、小腸の粘膜が傷ついて栄養を吸収しにくくなります。論文によれば、治療は生涯にわたりグルテンを除いた食事を続けることに限られます。

論文が紹介するメタ解析では、血液検査でセリアック病に関わる抗体が陽性となる人の割合は世界全体で1.4%、組織検査で確認された有病率は0.7%と推定されています。欧州委員会の規則では、グルテンが20ppm未満のものをグルテンフリーとしています。

しかし、グルテンを使わずに小麦製品と同じような食感や見た目、おいしさを実現するのは技術的に難しい課題です。エチオピアの食品・飲料産業研究開発センターに所属する著者らは、この課題に対してこれまで研究されてきた材料と加工法を総説として整理しました。総説とは、著者自身が新たに実験するのではなく、既存の研究成果を集めてまとめた論文です。

代わりになる穀物と補助材料

著者らはまず、グルテンを含まない穀物の特徴をまとめています。とうもろこし、米、雑穀、ソルガム(モロコシ)に加え、穀物に似た種子である「疑似穀物」のアマランサス、そば、キヌアが取り上げられています。疑似穀物は、たんぱく質やミネラルが豊富な点が紹介されています。オーツ麦については、一部のセリアック病患者で反応を引き起こすたんぱく質を含むため安全性にはなお議論があり、主なリスクは小麦などの混入だとして、認証を受けたグルテンフリー製品に限るべきだとしています。

さらに、グルテンの役割を補う材料も整理されています。代表的なものが「ハイドロコロイド」と呼ばれる増粘剤で、キサンタンガムやグアーガム、セルロース由来の成分などが水を抱え込み、生地に粘りを与えて気体を保持しやすくします。このほか、たんぱく質同士をつなぎ合わせて網目構造を作る酵素や、生地を安定させてパンをやわらかく保つ乳化剤、でんぷん、豆類の粉、食物繊維のイヌリンなどの働きも紹介されています。

食品ごとに異なる工夫

総説では、パン、ケーキ、マフィン、ビスケット、クラッカー、パスタという食品ごとに課題と研究例をまとめています。論文によれば、グルテンがないとパン生地は液体に近い状態になり、膨らみが小さい、でんぷん臭が出る、早く固くなるといった欠点が生じやすくなります。

ビスケットでは、米粉を他の粉で一部置き換えたウエハースを調べた研究で、米粉とそば粉を60対40で混ぜたものが小麦粉のウエハースに最も近い硬さになったと報告されています。そば粉のビスケットにさまざまなガムを1%加えた研究では、キサンタンガムを加えたものが見た目や風味、全体の好ましさで最も高く評価されました。一方、米粉のマフィンにキヌア粉を加えた研究では、マフィンの膨らみが小さくなり、密度が高くなったと報告されています。

グルテンの網目構造が食感を大きく左右するパスタについても、多くの研究が紹介されています。米粉のスパゲッティに大豆たんぱくや卵白などを加えた研究では、硬さが4.99ニュートンから6.42ニュートンに増し、ゆでたときに湯へ溶け出す成分の割合が9.84%から2.90%に減りました。また、乾燥温度を高くすると食感が良くなり、溶け出す成分も減ったとする研究も取り上げられています。

総説から見えること

著者らは、グルテンの働きを一つの材料で置き換えることは難しく、食品ごとに穀物や補助材料を組み合わせ、加工条件を整えることが重要だとしています。あわせて、精製でんぷんに頼った配合では食物繊維や栄養が乏しくなりやすい点を指摘し、豆類や疑似穀物を活用することを勧めています。この総説は、グルテンフリー食品をおいしく、かつ栄養面でも充実させるためには、技術と栄養の両面から材料を選ぶ必要があることを示しています。

原著論文の著者・所属:Berhanu Jima(Department of Food Technology, Food and Beverage Industry Research and Development Centre, Addis Ababa, Ethiopia)、Yodit Demissie(Department of Food Safety and Quality, Food and Beverage Industry Research and Development Centre, Addis Ababa, Ethiopia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Berhanu Jima, Yodit Demissie. Formulation of Gluten Free Bakery Products from Cereals. Science Futures 2026-09-27. DOI: 10.11648/j.scif.20260205.13. 原著ライセンス:CC BY.