この研究は、スペインの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Applied Sciences
ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: Crossref
ブロッコリーを調理するとき、茎や葉、芯の部分は捨ててしまうことが多いのではないでしょうか。こうした「副産物」は食物繊維や、健康に関心の高い人々の間で注目される機能性成分(バイオアクティブ化合物)を含んでいるにもかかわらず、多くが未利用のまま廃棄されているといわれています。今回紹介する研究は、このブロッコリー副産物を酵素で処理したうえで、小麦グルテンを含まない「グルテンフリーサワードウパン」に配合し、栄養面や食感、消化のされ方にどのような変化が生まれるかを調べたものです。食品廃棄物を有効活用しながら、より栄養価の高いパンを作れないかという、循環型の食品づくりの発想に基づく研究といえます。
研究でわかったこと
研究チームは、ブロッコリー副産物に対して「Viscozyme® L」という酵素を用いた処理を行い、その効果を検証しました。比較のために、次の4種類のグルテンフリーパンが用意されています。何も加えない対照パン(BCT)、未処理のブロッコリー副産物を加えたパン(BBC)、酵素処理したブロッコリー副産物を加えたパン(BBE)、そして市販のグルテンフリーパン(COM)を参照として比較しています。
これらについて、栄養成分の組成、抗酸化活性、デンプンの消化されやすさ、そして官能評価(味や食感などの評価)が調べられました。その結果、ブロッコリー副産物を加えたパンは、市販パン(COM)と比べてタンパク質、総食物繊維、抗酸化活性が有意に高くなったと報告されています。しかも、これらの再配合パンはいずれもEUの「高食物繊維」表示基準を満たす水準に達していたとのことです。
さらに、酵素処理(Viscozyme® L)を行うことで、こうした特性がいっそう高まったとされています。具体的には、酵素処理したブロッコリー副産物を使ったパン(BBE)は、水溶性食物繊維が100gあたり2.66g、抗酸化活性を示すFRAP値が1gあたり13.51µM TEに達し、4種類の中で最も高い値を示しました。また、消化に時間がかかる「ゆっくり消化されるデンプン(slowly digestible starch)」の含有量も100gあたり20.39gと最も高く、消化のされ方という観点でより望ましい可能性があるプロファイルを示唆する結果になったと述べられています。
気になる食べやすさについては、官能評価によって、こうした栄養面の改善が消費者からの受容性を大きく損なうことなく達成されたことが確認されたとされています。つまり、栄養価を高めつつも、味や食感の面で大きな妥協をしなくて済んだ可能性があるということです。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、酵素処理したブロッコリー副産物が、グルテンフリーの焼き菓子・パン類において、栄養的に強化されたクリーンラベル(添加物に頼らない)原材料として活用できる可能性を示すものであり、農業・食品副産物の有効活用や循環型経済の枠組みを後押しする内容として位置づけられています。
ただし、これは一つの研究であり、結論が確定したわけではありません。ここで紹介した数値や結果は、あくまで今回の実験条件下で得られたものであり、健康効果や消化への影響を断定するものではない点にご留意ください。パンの原材料選びや食生活の参考にする際は、こうした研究が積み重ねられている段階にあることを踏まえたうえで、あくまで一つの知見として受け止めていただければと思います。
まとめ
本研究では、これまで廃棄されがちだったブロッコリーの副産物を酵素処理し、グルテンフリーサワードウパンに配合することで、タンパク質・食物繊維・抗酸化活性の向上や、消化性の観点で興味深いデンプンプロファイルが得られる可能性が示されました。しかも、こうした変化は食べやすさを大きく損なうことなく実現されたと報告されています。食品廃棄物の有効活用と栄養価向上を両立させる一つのアプローチとして、今後の研究の展開が注目されます。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):酵素処理ブロッコリー副産物を強化した機能性グルテンフリーサワードウパンの開発(アプライド・サイエンシズ・2026年07月)
著者:Jhazmin Quizhpe(Department of Food Technology, Food Science and Nutrition, Faculty of Veterinary Sciences, Regional Campus of International Excellence “Campus Mare Nostrum”, University of Murcia, Espinardo, 30100 Murcia, Spain)、Rocío Peñalver(Department of Food Technology, Food Science and Nutrition, Faculty of Veterinary Sciences, Regional Campus of International Excellence “Campus Mare Nostrum”, University of Murcia, Espinardo, 30100 Murcia, Spain)、Pablo Ayuso(Department of Food Technology, Food Science and Nutrition, Faculty of Veterinary Sciences, Regional Campus of International Excellence “Campus Mare Nostrum”, University of Murcia, Espinardo, 30100 Murcia, Spain)、Gema Nieto(Department of Food Technology, Food Science and Nutrition, Faculty of Veterinary Sciences, Regional Campus of International Excellence “Campus Mare Nostrum”, University of Murcia, Espinardo, 30100 Murcia, Spain)