思春期の食生活が心の健康と関係しているのではないかという指摘は各国で見られますが、全国規模の調査データを使い、実際に食べているものの組み合わせ(食事パターン)から検討した研究はまだ限られています。今回紹介する論文は、ブラジルの学校に通う13〜17歳の青少年を対象に、2015年と2019年に実施された「全国学校保健調査(PeNSE)」のデータを用いて、食事パターンとメンタルヘルス不良を示す指標との関連を調べたものです。
研究でわかったこと
この研究では、2015年調査と2019年調査という2つの独立した横断調査(ある一時点の状態を調べる調査)がそれぞれ別々に分析されました。2015年の分析については、調査対象の中でも「サンプル2」と呼ばれる集団に限定されています。それぞれの調査データから、主成分分析という統計手法を用いて、青少年の食事の傾向を表す2つのパターンが抽出されました。ひとつは「超加工/不健康型」、もうひとつは「健康/伝統型」と呼ばれるパターンです。
主な検討対象としたのは、各調査に特有の方法で作られた、メンタルヘルスに関連する複数の指標を組み合わせた非診断的な合成スコアのうち、最も高いカテゴリーに該当するかどうかでした。これは医学的な診断ではなく、あくまで調査上定義された指標である点に注意が必要です。統計解析では、調査の重み付けを考慮した「modified Poisson回帰」という手法を用いて、調整済みの有病率比(PR)が算出されました。さらに結果の頑健性を確かめるため、連続変数として扱う分析、順序尺度として扱う分析、2つの調査間での違いを検討する分析、別の指標を用いた分析、重み付けを変えた主成分分析、E値による分析など、複数の追加検証も行われています。
結果として、両方の調査年で「超加工/不健康型」と「健康/伝統型」という2つの食事パターンが同様に見出されました。超加工/不健康型パターンについては、最も摂取頻度が高いグループ(Q4)と比べて、最も摂取頻度が低いグループ(Q1)では、メンタルヘルス不良指標の該当者の割合が低いという関連が見られました(2015年:調整PR=0.85、95%信頼区間0.73〜0.98/2019年:調整PR=0.81、95%信頼区間0.76〜0.86)。一方、健康/伝統型パターンについては逆の傾向で、摂取頻度が最も低いグループ(Q1)で、メンタルヘルス不良指標の該当者の割合が高いという関連が示されました(2015年:調整PR=1.75、95%信頼区間1.45〜2.10/2019年:調整PR=1.34、95%信頼区間1.26〜1.42)。超加工/不健康型パターンについては2つの調査年の間で明確な違いは検出されなかった一方、健康/伝統型パターンの関連の強さは調査年によって異なっていました。ただし、追加の検証分析でも結果の方向性は一貫していたとされています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
著者らは、今回の2つの調査がいずれも横断調査であり、かつ各調査年に特有の方法で作られた指標を用いていることから、この結果だけでは食事パターンとメンタルヘルスの間に時間的な前後関係や因果関係があるとは言えず、また指標自体が調査間で不変のものではないため、時間の経過に伴う変化を示すものでもないと述べています。つまり、「食事がメンタルヘルスに影響を与えた」と結論づけるものではなく、あくまである一時点における関連の強さが示された、という位置づけの研究です。
まとめ
今回の研究では、ブラジルの学校に通う青少年を対象とした全国調査データを用い、超加工食品を中心とした食事パターンへの依存度が高いこと、また伝統的で健康的とされる食事パターンへの依存度が低いことが、メンタルヘルス不良を示す指標の高さと関連していることが示されました。2015年と2019年という異なる時期の調査で同様の傾向が確認された点は注目されますが、著者ら自身が述べているとおり、横断調査という性質上、これは一つの関連を示すデータであり、因果関係を証明するものではありません。今後、時間的な前後関係を追跡できるような調査による検証が期待されます。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:ブラジルの学校に通う青少年における食事パターンとメンタルヘルス不良指標との関連:2015年および2019年PeNSE調査の分析(ニュートリエンツ・2026年08月)