毎日の食事が体の中の「炎症」に影響することは、近年よく話題になります。では、炎症を抑えやすいとされる食事を続けている高齢者は、実際に長生きしやすいのでしょうか。そんな疑問に取り組んだ研究が、学術誌「フロンティアーズ・イン・イミュノロジー」に2026年8月に掲載予定です。
研究チームが着目したのは、食事の抗炎症性を数値化した「抗炎症食指数(AIDI)」です。野菜や果物、魚などを多く含み、炎症を促しやすい食品が少ない食事ほど、この指数は高くなります。
6,468人を7年間追跡した調査
今回の研究では、中国の高齢者長寿調査に参加した65歳以上の6,468人が対象になりました。参加者の食事内容は、簡易的な食物摂取頻度調査票をもとに把握され、AIDIとして数値化されました。
あわせて、日常の運動習慣についても、自己申告のアンケートで調べられています。その後、参加者は追跡調査を受け、期間中の死亡状況が記録されました。追跡期間の中央値は7年で、この間に4,117人が亡くなったということです。
研究チームは、年齢や性別など他の要因の影響を統計的に調整したうえで、AIDIの高さと死亡リスクの関係を分析しました。
抗炎症食スコアが高い人ほど死亡リスクが低い傾向
分析の結果、AIDIが最も低いグループと比べて、最も高いグループでは、全死亡リスクが15%低いという結果でした(ハザード比0.85、95%信頼区間0.77〜0.94)。
また、AIDIが標準偏差1つ分上昇するごとに、死亡リスクが8%低くなるという関連も示されています。
さらに興味深いのは、食事と運動を組み合わせた分析です。抗炎症食のスコアが高いことに加えて、定期的な運動習慣がある人、あるいは余暇の活動量が多い人では、死亡リスクがより低く抑えられる傾向が示されました。食事だけでなく、体を動かす習慣も合わせて考えることの意味が示唆される結果といえます。
この研究を読むうえでの注意点
この研究は、中国の高齢者を対象とした一つの前向きコホート研究です。食事内容や運動習慣は、いずれも参加者自身の申告に基づいて把握されており、実際の摂取量や活動量と多少のズレが生じている可能性があります。
また、これは病気や体質など他の要因を完全に取り除いた実験ではなく、あくまで「関連」を示した観察研究です。抗炎症食そのものが死亡リスクを下げる、と直接結論づけるものではない点には注意が必要です。今回の結果が他の国や地域の高齢者にも当てはまるかどうかも、この研究だけでは分かりません。
まとめ
今回の調査では、抗炎症食のスコアが高い中国の高齢者ほど、7年間の追跡で死亡リスクが低い傾向にあることが示されました。運動や余暇活動を組み合わせた場合には、その関連がさらに強まる傾向も確認されています。一つの観察研究から得られた結果であり、今後さらに検証を重ねていく必要があるテーマだと言えます。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:高齢者における抗炎症食、身体活動、全死亡リスク:前向きコホート研究(フロンティアーズ・イン・イミュノロジー・2026年08月)