著者の所属・活動拠点の国は、ロシアです。

掲載誌:Philology Theory & Practice

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

アメリカの作家ファニー・フラッグの英語小説『フライド・グリーン・トマト』(原題は「ホイッスル・ストップ・カフェのフライド・グリーン・トマト」)には、食べ物や飲食に関わるさまざまな固有名詞が登場します。研究チームは、こうした名前のうち、食に関わる「エルゴニム」と「プラグマトニム」に注目し、その基本的な特徴を英語原作とロシア語訳の両方で明らかにすることを目的としました。

エルゴニムとは、店や企業、団体などの名前を指す用語です。プラグマトニムは、商品や製品の名前を指します。著者らは、飲食や食べ物に関わるこれらの名前を「食に関する(グルトニック)」名前としてまとめて扱っています。

何を調べたか

論文の抄録によると、研究チームは小説に現れる食に関する固有名詞を総合的に分析しました。調べた観点は、名前が表す意味、語の組み立て方とその類型、作品の中で果たす働き、そして翻訳する際に生じる特徴の四つです。

著者らは、文学作品の中でこうした店名や商品名が持つ意味・構造・機能・翻訳上の特徴を明らかにした点を、この研究の新しさとして挙げています。また、分析を通じて、これらの名前が作品の中で体系的にまとまっていることと、英語からロシア語へ移される際の変化の規則性を見いだせたと報告しています。

主な結果

著者らの報告では、小説に登場する食に関する店名や商品名は、意味の上でいくつかのグループに分かれます。そして、その働きは単に物や店に名前を付けることだけにとどまらないとされています。

名前の成り立ちについては、その名前が付けられた理由、つまり意味上の動機づけが、複数の要素を組み合わせた混成的なものであることが多いと報告されています。構造の面では、修飾語が中心となる語を説明する形の組み立てが最も主要な型だったとしています。

翻訳については、こうした店名や商品名をロシア語に移すには創造的な取り組みが必要だと著者らは述べています。具体的には、意味を補って説明する方法を使い、さまざまな翻訳の技法を組み合わせることが求められるとしています。さらに、ほかの作品や文化的な事柄をほのめかす名前を訳す場合には、翻訳者による追加の説明が必要になると指摘しています。

研究が示すこと

この研究は、小説の中の店名や商品名が、単なる名札ではなく作品の世界を形づくる要素の一つとして働いていることを示しています。同時に、そうした名前を別の言語へ移す作業は、言葉を置き換えるだけでは済まず、翻訳者の工夫や説明を必要とする営みであることを、具体的な作品の分析を通じて伝えています。

原著論文の著者・所属:Margarita Anatolievna Elizarova(State University of Education)、Olga Dmitrievna Tarasova(Moscow Technical University of Communications and Informatics)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Margarita Anatolievna Elizarova, Olga Dmitrievna Tarasova. Features of American ergonyms and pragmatonyms in Fannie Flagg’s novel “Fried Green Tomatoes at the Whistle Stop Café” and their transformation in the Russian version. Philology Theory & Practice 2026-10-30. DOI: 10.30853/phil20260512. 原著ライセンス:CC BY.