著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。
掲載誌:International Multidiciplinary Journal
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
手作業の記録と勘に頼る仕入れという課題
飲食業の零細・中小事業者では、売上の記録や在庫の把握をいまも手書きや簡単な記録方法で行っている例が少なくありません。研究チームによると、こうしたやり方では取引データが適切に残らず集計に時間がかかるうえ、入力ミスも起きやすく、経営者が売上の動きを正確かつリアルタイムに把握しにくくなります。
原材料の在庫管理にも課題があります。売上と在庫が自動で連動していないと、在庫の過不足が起きやすくなります。また、先に仕入れた材料から先に使う「先入れ先出し(FIFO)」という原則を手作業で徹底するのは困難です。飲食業では材料の品質劣化を防ぐうえで、この原則が重要になります。
著者らはフライドチキン店「Smile Chicken」を事例として、販売取引、在庫管理、報告書の自動作成、原材料の購入提案を一つにまとめたウェブ型のPOS(販売時点情報管理)システムの構築を目指しました。この店では、取引の記録、在庫の追跡、報告書の作成を手作業で行い、仕入れの判断も見積もりに頼っていました。
どのようにシステムを作り、確かめたか
研究チームは、製品を設計・開発しながら検証を進める「研究開発(R&D)」型の手法を用いました。まず店舗の日々の業務を観察し、店主から運営上の困りごとを聞き取り、取引履歴や原材料の使用データのサンプルを集めました。そのうえで、要件の分析、システムとデータベースの設計、ウェブアプリケーションの実装、機能テストの順に作業を進めました。
完成したシステムでは、商品、原材料、レシピ(どの商品にどの材料をどれだけ使うかを定めた「部品表(BOM)」)、販売取引、入庫と出庫、仕入れ、定期報告、利用者を管理できます。会計のたびに小計と支払総額を計算し、売れた商品のレシピに応じて材料の在庫を自動で差し引きます。その際、先に入荷した材料から優先して使うよう、先入れ先出しの考え方で在庫を整理します。
購入提案の機能は、過去の販売データをもとに材料の必要量を見積もり、現在の在庫量や、あらかじめ決めた最低在庫量と照らし合わせて計算します。研究の設計では、需要を予測する方法として、多数の決定木の結果を組み合わせる機械学習手法「ランダムフォレスト」も位置づけられています。
機能の確認には「ブラックボックステスト」を使いました。プログラムの内部構造には立ち入らず、入力に対して設計どおりの出力が返るかどうかを確かめる方法です。研究チームは34のテスト場面を用意し、それぞれ入力、期待される出力、実際の結果を比べました。
主な結果
著者らは、実際の運用に使える状態のウェブ型POSシステムが完成したと報告しています。レジ画面には商品が画像付きで並び、選ぶ時間を短くする工夫がされています。会計を確定すると、システムはレシピをもとに材料の在庫が足りるかを確認します。足りない場合は取引を自動で取り消し、警告を表示します。
購入提案の機能は、一定期間の材料の平均使用量を集計し、最低在庫量と比較します。在庫がその基準を下回ると、どの材料をどれだけ調達すべきかを管理者に知らせます。
34の場面のテストでは、ログイン、商品と原材料の登録、レシピの登録、販売取引、入出庫、購入提案、売上報告のいずれも設計どおりの結果を出したと報告されています。たとえば、誤ったログイン情報ではアクセスが拒否されました。価格にマイナスの値を入力しようとすると入力が受け付けられず、在庫が足りない場合は取引が成立しませんでした。日・月・年ごとに絞り込んだ売上の集計も正しく表示されたとしています。
この研究が示すこと
著者らは、このシステムによって取引記録が一か所に電子的に集約され、手作業による集計ミスの心配がなくなると結論づけています。購入提案についても、販売履歴と在庫の基準にもとづいて数量を示すため、原材料の調達を勘に頼らずに行えるようになると述べています。
今回の検証は、決められた場面でシステムが設計どおりに動くかを確かめる機能テストです。導入後に店の経営指標がどう変わったかを測ったものではありません。そのうえで本研究は、小さな飲食店でも、販売、在庫、仕入れの判断を一つの仕組みでつなぎ、日々の業務をデータにもとづいて進めるための具体的な形を示した事例といえます。
原著論文の著者・所属:Ardy Irwansyah Sitorus, Ardy(Fakultas Ilmu Komputer Dan Teknologi Informasi, Jurusan Teknologi Informasi, Universitas Muhammadiyah Sumatera Utara)、Farid Akbar Siregar, Farid(Fakultas Ilmu Komputer Dan Teknologi Informasi, Jurusan Teknologi Informasi, Universitas Muhammadiyah Sumatera Utara)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Ardy Irwansyah Sitorus, Ardy, Farid Akbar Siregar, Farid. DESIGN AND DEVELOPMENT OF A WEB-BASED POINT OF SALES SYSTEM FOR FRIED CHICKEN MSMES WITH AUTOMATED REPORTING AND RAW MATERIAL PURCHASE RECOMMENDATIONS. International Multidiciplinary Journal 2026-10-11. DOI: . 原著ライセンス:CC BY.