著者の所属・活動拠点の国は、スウェーデンです。
掲載誌:International Journal of Gastronomy and Food Science
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
スウェーデンでは魚介類の消費が減っており、特に若い人の摂取量が少ないことや、よく食べられる魚の種類が限られていることが課題とされています。バルト海のニシンは栄養価があり、北欧の食文化で長く親しまれてきた魚ですが、現在は十分に活用されていないと著者らは指摘しています。
研究チームは、スウェーデンの人々がニシンをどう捉え、どのように食べているかを調べました。そのうえで、手間や調理といった実用面、味や食感などの感覚面、価格などの経済面、そして文化的な要因が、現代の食生活におけるニシンの位置づけや魅力にどう関わっているかを検討しました。年齢による違いと、バルト海のニシンを食品として活用する可能性に特に注目しています。論文はこの研究を、傾向や論点を探る「探索的研究」と位置づけています。
三つの方法で調べたこと
研究では三つの方法を組み合わせました。一つ目は、魚とニシンの消費についてのオンラインアンケートで、243人が回答しました。二つ目は、バルト海のニシンの生産、調理、消費に関わる人々を対象にした四つのフォーカスグループ・インタビューです。フォーカスグループとは、少人数で特定のテーマについて話し合ってもらい、意見や考え方を聞き取る調査方法です。三つ目は、1961年から2010年までに出版されたスウェーデンの料理本の分析です。
主な結果
アンケートの回答者は、食事の推奨量よりも少ない量の魚しか食べていないと報告しました。魚を食べる妨げとしては、価格、料理のアイデア不足、環境への懸念、味、手軽さが挙げられました。18〜35歳の回答者は、それより年上の回答者に比べて魚やニシンを食べる頻度が低く、アイデア不足やニシンが好きではないという回答も多くみられました。
フォーカスグループの参加者からは、ニシンに文化的になじみが薄れていること、魚の扱い方や調理法の知識が乏しいこと、味などに対する否定的な印象、商品の入手しやすさ、そしてニシンが時代遅れの食習慣と結びつけられていることが指摘されました。
料理本の分析では、魚を丸ごと下処理する必要があるレシピが年代とともに目立たなくなっていたことが示されました。著者らはこれを、魚の調理が料理本の中でどう描かれるかが変化したことを示すものとしています。
研究が示すこと
これらの結果をあわせて、研究チームは、ニシンの消費が実用面、感覚面、経済面、文化面の要因によって左右されていると述べています。また、日々の料理や食文化の中でニシンに触れる機会について、世代間に隔たりがあると受け止められていることがうかがえるとしています。
ただし著者らは、アンケートの回答者が人口を代表する集団ではないこと、またアンケートがバルト海のニシンに限らずニシン全般について尋ねたものであることから、結果はあくまで探索的なものとして解釈すべきだと注意を促しています。若い世代とニシンの距離がどこから生まれているのかを、多面的に描き出そうとした研究といえます。
原著論文の著者・所属:Maria Gauffin(Department of Food and Meal Science, Kristianstad University, SE 291 88 Kristianstad, Sweden)、Marcus Johansson(Department of Food and Meal Science, Kristianstad University, SE 291 88 Kristianstad, Sweden)、Pauline Camard(Department of Food and Meal Science, Kristianstad University, SE 291 88 Kristianstad, Sweden)、Sofia von Schéele Ekström、Viktoria Olsson(Department of Food and Meal Science, Kristianstad University, SE 291 88 Kristianstad, Sweden)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Maria Gauffin, Marcus Johansson, Pauline Camard, et al. “A lost generation” – searching for ways of increasing Baltic herring consumption among young adults in Sweden. International Journal of Gastronomy and Food Science 2026-08-22. DOI: 10.1016/j.ijgfs.2026.101625. 原著ライセンス:CC BY.