著者の所属・活動拠点の国は、ブラジル、イタリア、イギリスです。

掲載誌:UWL Repository (University of West London)

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF

研究の目的

コンブチャは、砂糖を加えた紅茶や緑茶を、酢酸菌・乳酸菌・酵母が共生する培養物(SCOBY)で発酵させた飲料です。茶由来のポリフェノールや有機酸を含み、近年は健康との関わりにも関心が集まっています。研究チームは、ブラジルの大西洋岸森林に自生する果実を加えると、果実特有の成分によって飲料の性質がさらに変わる可能性に着目しました。

この探索的研究の目的は、ジャボチカバ、グルミシャマ、ジュサラという3種の在来果実で風味づけしたコンブチャについて、三つの点を調べることでした。一つ目は、消化の過程で有用成分が溶け出し、吸収され得る状態にどの程度残るか(バイオアクセシビリティ)です。二つ目は、飲料中の微生物が消化を経てどの程度生き残るかです。三つ目は、健康な人の腸内細菌の構成や代謝物にどのような影響を与えるかです。調べた手段は人の体ではなく、消化管や大腸の環境を試験管内で再現するモデルです。

何をどのように調べたか

著者らは、緑茶に砂糖を加えてSCOBYで7日間発酵させました。その後、3種の果実パルプを等量ずつ混ぜて加え、瓶内で二次発酵させて「フレーバー・コンブチャ」を作りました。比較のため、果実を加えずに同じ手順で作った「ナチュラル・コンブチャ」も用意しました。

まず、フレーバー・コンブチャ3バッチを、口、胃、小腸の各段階を模した消化試験にかけました。段階ごとに、酵母、酢酸菌、乳酸菌の生きた菌数を測りました。あわせて、果実の色素であるアントシアニン、総ポリフェノール量、抗酸化能が消化前後でどう変わるかを調べました。抗酸化能は、ORACとFRAPという二つの方法で測っています。この消化試験と成分の測定は、フレーバー・コンブチャだけを対象に行われました。

次に、3人の健康な提供者の便から得た腸内細菌を使い、大腸の条件を模した培養装置で24時間の発酵試験を行いました。試料は、フレーバー・コンブチャ、ナチュラル・コンブチャ、発酵前の茶、市販のミックスベリー風味コンブチャの4種です。対照として、腸内細菌のえさとしてよく知られるイヌリンを加えた容器と、何も加えない容器を置きました。0、4、8、24時間の時点で、腸内細菌がつくる短鎖脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)と分岐鎖脂肪酸を測定しました。分岐鎖脂肪酸は、主にたんぱく質の分解に由来する物質です。さらに、細菌の遺伝子配列を読み取って、菌の種類と多様性を分析しました。

主な結果

消化試験では、酵母、酢酸菌、乳酸菌はいずれも口と胃の段階をほぼ耐え抜きました。小腸の段階では大きく減りましたが、生きた菌数は1ミリリットルあたりおよそ10の4.2乗以上が残りました。ただし著者らは、これは菌のグループ単位での生存を示すものだと述べています。どの菌株が生き残ったかや、腸に定着するかまでは分からないということです。

フレーバー・コンブチャの有用成分は、消化が進むにつれて減少しました。消化前の量に対して小腸段階の終わりに残った割合は、アントシアニンで約39%、総ポリフェノール量で約21%と報告されています。抗酸化能はORACで約31%、FRAPで約3%でした。

大腸を模した発酵では、全体に短鎖脂肪酸が24時間で増えました。特にフレーバー・コンブチャでは、酢酸の平均濃度が0時間の約1.6 mMから24時間で約10.1 mMへと大きく上がり、酪酸や分岐鎖脂肪酸も増えました。ただし、提供者による差が大きく、ばらつきの幅も大きい結果でした。24時間時点の酢酸量は、統計的に二つのグループに分かれました。一つはイヌリン、フレーバー・コンブチャ、ナチュラル・コンブチャのグループ、もう一つは茶、市販コンブチャ、何も加えない対照のグループです。ナチュラル・コンブチャは同様の傾向をより穏やかに示し、茶と市販コンブチャではほとんど変化がありませんでした。

腸内細菌の構成を最も大きく左右したのは、試料の種類よりも発酵時間でした。菌の種類の豊かさを示す多様性は時間とともに下がる傾向があり、その傾向はフレーバー・コンブチャで目立ちました。また、市販コンブチャを除くすべての条件で、大腸菌などを含む腸内細菌科が時間とともに増えました。フレーバー・コンブチャでは、一般に有益とされるビフィズス菌やフィーカリバクテリウムなどが減りました。一方で、肥満との関連が指摘されるコリンセラも減少しました。コンブチャ由来の菌は検出されませんでした。このことから著者らは、コンブチャが腸に定着するのではなく、間接的に腸内細菌に作用している可能性を示しています。

研究が示すこと

著者らは、果実で風味づけしたコンブチャが、試験管内の腸内細菌の発酵活動を最も強く動かし、酢酸などの産生を高めたと報告しています。その一方で、多様性の低下、腸内細菌科の増加、一部の有益とされる菌の減少も同時に見られました。そのため著者らは、こうした変化が必ずしも好ましい方向とは言えず、慎重に解釈すべきだとしています。

この研究は、3人の提供者の便を用いた試験管内の探索的な実験であり、人が飲んだときの影響を直接示すものではありません。それでも、果実で風味づけしたコンブチャについて、消化後に有用成分や微生物がどの程度残るかを具体的な数値で示しました。さらに、大腸を模した発酵では、配合によって短鎖脂肪酸の産生や腸内細菌の反応が異なることを示しました。これらの点に、この研究の意味があります。

著者:Kawany de Faria Forato、Vinícius dos Santos Domingues、Eduardo Lolato(Department of Food Science and Technology , State University of Londrina , Londrina , Brazil)、Silvia Turroni(IRCCS Azienda Ospedaliero-Universitaria di Bologna , Bologna , Italy)、Semeh Bejaoui(Unit of Microbiome Science and Biotechnology , Department of Pharmacy and Biotechnology , University of Bologna , Bologna , Italy)、Federica D'Amico、Volker Behrends(Centre For Innovation in Genomics and Microbiome Sciences , School of Medicine and Biosciences , University of West London , London , UK)、Solidea Amadel、Asia <1996> Pizzi(Beneficial Microbes Laboratory , Department of Pharmacy and Biotechnology , University of Bologna , Bologna , Italy)、Giselle Nobre Costa(Department of Food Science and Technology , State University of Londrina , Londrina , Brazil)、Adele Costabile(School of Life and Health Sciences , University of Roehampton , London , UK)、Karla Bigetti Guergoletto(Department of Food Science and Technology , State University of Londrina , Londrina , Brazil)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Kawany de Faria Forato, Vinícius dos Santos Domingues, Eduardo Lolato, et al. In vitro gastrointestinal digestion and gut fermentation of Atlantic forest fruit-flavored kombucha: gut microbiota dynamics and bioactive compound bioaccessibility. UWL Repository (University of West London) 2026-09-30. DOI: . 原著ライセンス:CC BY.