著者の所属・活動拠点の国は、スウェーデンです。

掲載誌:Appetite

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

食料の生産と消費は、世界の温室効果ガス排出のおよそ3分の1を占めるとされています。なかでも牛肉などの赤身肉や乳製品は排出量が大きく、植物性食品は排出量がずっと小さいことから、食事を植物性中心へ移すことが気候対策の柱の一つと考えられています。毎日多くの子どもが食べる学校給食は、こうした変化を進める場として注目されてきました。

学校給食で肉を減らす方法には、主に二つあります。一つは主菜をすべてベジタリアン料理にする「ベジタリアンの日」を設ける方法です。もう一つは、いつもの献立のレシピを見直し、排出量の大きい食材の割合を減らす方法です。これまでの研究は、生徒がどれだけ食べたか、どれだけ残したか、味の評価はどうかといった点で給食を評価することが中心でした。生徒自身がこうした変化をどう受け止め、どう意味づけているかは、あまり調べられていませんでした。

スウェーデンの研究チームは、この空白を埋めるため、生徒が気候にやさしい給食、つまり温室効果ガスの排出を減らすよう設計された給食をどう捉えているのか、そして肉を減らすことをどう解釈しているのかを調べました。

何を調べたか

研究の舞台はスウェーデン南部のルンド市です。スウェーデンではすべての児童生徒に給食が無料で提供されます。対象校では毎日、ベジタリアン料理と、肉・魚・鶏の料理の2種類の主菜から選ぶビュッフェ形式がとられています。市内の公立6校が参加し、2校ずつ三つの条件に分かれました。温室効果ガス排出を20%減らす新しい低炭素献立を導入する条件、同じ献立に加えて気候と食べ物の関係を説明する短い動画やポスターを用いる条件、従来の献立を続ける条件です。低炭素献立は、レシピの見直しと、ベジタリアンの日をわずかに増やすことを組み合わせたものでした。

研究チームは、数値で全体の傾向をとらえる調査と、生徒の言葉から意味を読み解く調査を組み合わせました。このように二種類の手法を併用するやり方を「混合研究法」と呼びます。献立の変更前には、4〜9年生(おおむね10〜15歳)を対象にアンケートを行い、1331人が回答しました。そのうち回答が揃った1268人のデータを分析しています。主な指標は「肉を減らす方向へのレシピ変更」と「ベジタリアンの日を増やすこと」への賛成度を合計した点数で、この点数と性別・学年・家庭や学校での食習慣・気候への関心などとの関連を統計的に調べました。

献立の変更後には、低炭素献立を導入した2校で、計20人の生徒と少人数の話し合い(フォーカスグループ)や個別インタビューを行いました。生徒たちの発言を、研究者が繰り返し読み込みながらテーマを見いだす手法で分析しています。

主な結果

アンケートでは、生徒たちは「ベジタリアンの日を増やす」よりも「レシピを変えて肉を減らす」ほうをやや強く支持していました。統計的に意味のある差でしたが、その大きさは小さいものでした。この傾向は女子にも男子にも見られました。

気候にやさしい給食に好意的な態度と結びついていたのは、食べ物を選ぶときに自分が気候を意識していること、学校でベジタリアン料理を選ぶ頻度が高いこと、そして女子であることでした。一方、学年が上がるほど、また家庭や学校で赤身肉をよく食べる生徒ほど、支持は低い傾向にありました。家族や友人が気候を重視していると感じているかどうか、友人の食べ方をどう見ているかは、統計的に意味のある関連を示しませんでした。なお、これらは関連を示したもので、原因と結果を確かめたものではありません。また、ベジタリアン食品のほうが赤身肉より排出量がずっと小さいことは、支持の度合いにかかわらず生徒たちに広く理解されていました。

話し合いからは、四つのテーマが浮かび上がりました。一つ目は、論文の題名にもなった「おいしければいい」という姿勢です。生徒たちは気候にやさしい給食を、まず普通の給食として評価していました。空腹かどうか、何が食べたいか、満腹になるかが判断の中心でした。パサパサした料理や味気ない料理への不満は、ベジタリアン料理を受け入れるかどうかを左右していました。

二つ目は「目に見える変化と見えない変化」の違いです。いつもの料理の肉を少し減らすような変化は、気づかれにくく受け入れやすいと語られました。それに対し、好きな肉料理がなくなるような目に見える置き換えは、慣れ親しんだ食べ物を失うことと受け止められがちでした。ナゲットやなじみのあるスープなど、普段の給食の形に収まるベジタリアン料理は受け入れやすいと考えられていました。

三つ目は、肉が「ちゃんとした食事」の基準として位置づけられていることです。肉には満足感や安心感といった意味が結びついており、ベジタリアンと分かる料理は劣ったものと見なされやすい傾向がありました。四つ目は、気候についての知識はあっても、給食の場面ではあまり意識されないという点です。生徒たちは肉の生産や輸送、牛のメタン排出などをよく理解していました。それでも、食べる瞬間には空腹やおいしさが優先され、気候のことは尋ねられたときに考える程度だと語っていました。

研究が示すこと

二つの調査結果を合わせると、生徒たちは気候にやさしい給食そのものを拒んでいるわけではないことが分かります。受け入れられるかどうかは、その変化が、おいしく、お腹が満たされ、見慣れた給食という日常の期待に収まるかどうかに大きく左右されていました。食べ物の排出量についての知識は支持を後押ししうるものの、それだけで受け入れを説明することはできない、と著者らはまとめています。

著者らは、味や慣れ、食事に関する規範が、環境への関心だけよりも強く給食での肉の削減の受け入れを形づくるという先行研究の知見を、今回の結果が裏づけていると述べています。そのうえで、目立たない形でレシピの排出量を減らす方法は、ベジタリアンの日を補う現実的な手段になりうると論文は示しています。

原著論文の著者・所属:Monica Hunsberger(University of Gothenburg, Institute of Medicine, School of Public Health and Community Medicine, Guldhedsgatan 5A, Gothenburg, Sweden. Electronic address: [email protected])、Razan Zaid A. Fatani(University of Gothenburg, Institute of Medicine, School of Public Health and Community Medicine, Guldhedsgatan 5A, Gothenburg, Sweden. Electronic address: [email protected])、Erik André(Chalmers University of Technology, Gothenburg, 412 96, Sweden. Electronic address: [email protected])

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Monica Hunsberger, Razan Zaid A. Fatani, Erik André. “As long as it tastes good”: Students’ perceptions of climate-friendly school meals in a mixed-methods study. Appetite 2026-09-23. DOI: 10.1016/j.appet.2026.108793. 原著ライセンス:CC BY.