著者の所属・活動拠点の国は、メキシコです。
掲載誌:Foods
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
腸内細菌叢は、食事、体格や年齢などの体の特徴、腸にすむ微生物の存在が互いに関わり合って形づくられると考えられています。食事は腸内細菌に影響する大きな要因とされ、加工度の低い食品や食物繊維の多い食事は細菌の多様性の高さと、高度に加工された食品中心の食事は多様性の低さと関連すると報告されてきました。
腸には細菌以外に、単細胞の真核生物も住んでいます。その一つであるブラストシスチス(Blastocystis)は世界中の人から頻繁に見つかります。かつては病原体の可能性があると考えられていましたが、現在も評価は定まっていません。消化器症状との関連を示す研究がある一方で、症状のない保有や、腸内細菌の多様性の高さとの関連を報告する研究もあります。
研究チームは、食事とブラストシスチスが腸内細菌叢の異なる側面と関係している可能性に注目しました。そこで、メキシコの大学生を対象に、食事の傾向とブラストシスチスの保有がそれぞれ腸内細菌叢の多様性や構成とどう関連するかを調べました。あわせて、ブラストシスチスを持つかどうかで、食事と腸内細菌叢の関係が変わるかも検討しました。
何をどのように調べたか
対象は、保健科学部の医学・栄養学課程に在籍する学部生のうち、データがそろった41人です。直近3か月に抗生物質を使った学生は除外されました。平均年齢は約21歳で、7人(17.1%)からブラストシスチスが検出されました。検出には、便から取り出したDNAを対象とする遺伝子検査(リアルタイムPCR)が使われました。
食事は、妥当性が確認された食物摂取頻度質問票を使い、訓練を受けた栄養士が対面で聞き取りました。食品群ごとに摂取エネルギーへの寄与割合を求め、精製穀物、菓子パン類、飲料、油脂、アルコールなどを「工業化食品」、全粒穀物、果物、野菜、豆類、魚、卵、乳製品、肉類、ナッツ類などを「非工業化食品」に分類しました。両者を標準化し、その差を「ダイエット比」という連続的な指標にしました。値がプラスなら工業化食品の比重が大きく、マイナスなら非工業化食品の比重が大きいことを示します。
腸内細菌は、細菌が共通して持つ16S rRNA遺伝子を便から読み取る方法で調べました。主に二つの見方で分析しています。一つは、一人の腸の中にどれだけ多様な細菌がいるかを示す「アルファ多様性」です。もう一つは、人と人の間で細菌の顔ぶれがどれだけ違うかという「全体の構成(ベータ多様性)」です。年齢、BMI、性別、腹痛の有無なども考慮しました。さらに、データ処理の方法を変えても結果が保たれるかを確かめる「感度分析」も行いました。
主な結果
ダイエット比、年齢、BMIを組み合わせたモデルは、属レベル(細菌を「属」という分類単位でまとめた水準)の主要な分析で腸内細菌叢の全体構成と統計的に有意に関連しました。ただし、このモデルで説明できた構成のばらつきは約9%にとどまりました。また、どの要因も単独では有意な関連を示しませんでした。この関連は、腹痛の有無を加えて調整すると弱まって有意ではなくなりました。属にまとめる前の細かな配列単位のデータで分析した場合にも、関連は保たれませんでした。
ブラストシスチスの保有は、腸内細菌の全体構成とは関連しませんでした。一方で、保有している人ではアルファ多様性が高いという関連が見られました。この関連は、腹痛の有無を加えた調整や、読み取り量をそろえる処理をした分析でも有意なままでした。ただし、ほかの感度分析では一貫性が下がったと報告されています。
個々の細菌の属とダイエット比との相関は、多数の比較を行ったことを考慮して補正すると、有意なものは残りませんでした。また、ブラストシスチスの保有によって食事と腸内細菌叢の関係が変わるという相互作用も検出されませんでした。ただし、著者らは、保有者が7人と少なかったため、この点を十分に評価できなかったと述べています。
この研究が示すこと
著者らは、食事に関わる関連は主に腸内細菌の「顔ぶれ」の違いに、ブラストシスチスに関わる関連は一人の腸内の「多様さ」に現れている可能性があると解釈しています。つまり、二つの要因は腸内細菌叢の異なる側面と結びついているかもしれない、ということです。
この研究は一時点の状態を比べた小規模な探索的研究であり、示されたのは関連であって因果関係ではありません。結果の一部は分析方法によって変わりました。著者らは、これらの知見を確かめるには、より大規模な研究が必要だとしています。
原著論文の著者・所属:Alejandra Méndez-Hernández(Instituto de Ciencia y Medicina Genómica, Torreón 27000, Mexico)、Claudia Muñoz-Yáñez(Faculty of Health Sciences, Juárez University of the State of Durango, Gómez Palacio 35050, Mexico)、Faviel Francisco González-Galarza(Department of Molecular Immunobiology, Center for Biomedical Research, Universidad Autonoma de Coahuila, Torreón 27000, Mexico; School of Engineering and Sciences, Tecnologico de Monterrey, Torreón 27000, Mexico)、Adria Imelda Prieto-Hinojosa(Department of Molecular Immunobiology, Center for Biomedical Research, Universidad Autonoma de Coahuila, Torreón 27000, Mexico; School of Engineering and Sciences, Tecnologico de Monterrey, Torreón 27000, Mexico)、Janeth Oliva Guangorena-Gómez(Faculty of Health Sciences, Juárez University of the State of Durango, Gómez Palacio 35050, Mexico)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Alejandra Méndez-Hernández, Claudia Muñoz-Yáñez, Faviel Francisco González-Galarza, et al. Dietary Gradient, Blastocystis Colonisation, and Gut Microbiota Ecology in Mexican University Students: An Exploratory Cross-Sectional Study. Foods 2026-09-23. DOI: 10.3390/foods15193383. 原著ライセンス:CC BY.