この研究は、イギリスの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Food and Bioproducts Processing

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

液体の赤ワインを扱いやすい粉末にできれば、保存や輸送、他の製品への配合が容易になります。その手法のひとつが「フォームマット凍結乾燥」です。これは液体をあらかじめ泡立てて薄く広げ、凍らせたうえで真空下で水分を昇華させて取り除く方法で、泡によって表面積が増えるため乾燥が進みやすくなります。

この研究で著者らが調べたのは、泡を立てるための起泡剤と、粉末の骨格をつくる担体(キャリア)の選び方が、泡の質・粉末の性質・そして粉末を圧縮して錠剤にしたときの強さにどう影響するか、という点です。

何を比べたか

著者らが用いた起泡剤は、卵白アルブメンタンパク質(EP)とメチルセルロース(MC)の2種類です。担体にはマルトデキストリン(MD、でんぷん由来の糖質)を使い、これを加えた配合(EP.MD、MC.MD)と加えない配合を比較しました。

評価項目は、泡がどれだけ膨らむか(起泡力)と泡がどれだけ崩れずに保たれるか(泡の安定性、泡から液が落ちる量で測定)、できた粉末のかさ密度・流動性・吸湿性、湿気の吸い込み方を表す水分吸着曲線、そして異なる湿度条件下で成形した錠剤の強度と色です。

報告された主な結果

泡の性質では、卵白タンパク質が最も高い起泡力(約610%)を示した一方、泡の安定性はメチルセルロースのほうが優れ、40分後の液の落下量は約2.5 mLにとどまったと報告されています。マルトデキストリンも泡の安定性を高めました。

粉末の扱いやすさには、マルトデキストリンが決定的でした。著者らによれば、メチルセルロースをマルトデキストリンなしで用いると、粉末にならず一体に固まって処理できない材料になってしまいました。マルトデキストリンを含む粉末はかさ密度が高く(約0.25〜0.27 g/cm³、EP単独では0.17 g/cm³)、流動性も良く、吸湿性は低くなり、べたつきが減って扱いやすくなったとされています。湿気の吸い込み方はいずれもII型の等温線に従い、GABモデルとOswinモデルによく当てはまりました(R²は0.97以上)。マルトデキストリンを含む粉末では単分子層水分量が低く、水と強く結びつく部位が少ないことを示していると述べられています。

錠剤の強さは、水分量と配合の組み合わせで決まりました。相対湿度11%という乾いた条件では、卵白タンパク質のみの粉末が最も強い錠剤をつくり、マルトデキストリンを含む配合は弱い成形体になりました。著者らは、圧縮しやすさだけでは粒子同士がうまく結合するとは限らないことがここから分かると述べています。相対湿度33%では、水分による軟化で圧縮性が高まり、MC.MDの錠剤は卵白タンパク質のものと同程度の強さになりました。一方、担体を最も多く含むEP.MDは最も弱いままでした。この対比は、吸った水分による変形を粒子間の結合へ変えられるかどうかが錠剤形成を左右することを示していると報告されています。色については、卵白タンパク質を含む配合のほうが明るく、赤色の強さはメチルセルロース系の錠剤より低かったとされています。

この研究が示すこと

同じ赤ワインから出発しても、起泡剤と担体の選び方、そして粉末がどれだけ湿気を吸うかによって、扱いやすさと錠剤としての仕上がりは大きく変わります。著者らは、扱いやすさに優れ、しっかり固まる赤ワイン粉末をつくるには、配合と水分の取り込みを合わせて管理することが欠かせないと結論づけています。

著者:Maryam Sharifi(School of Health and Life Sciences, Teesside University, TS1 3BX, UK)、Walter Ishie(School of Health and Life Sciences, Teesside University, TS1 3BX, UK)、Manaswini Acharya(Surface Measurement Systems, London, UK)、Majid Naderi(Surface Measurement Systems, London, UK)、Rammile Ettelaie(Food Colloids Group, School of Food Science and Nutrition, University of Leeds, LS2 9JT, UK)、Ali Hassanpour(School of Chemical and Process Engineering University of Leeds, LS2 9JT, UK)、Amin Farshchi(School of Health and Life Sciences, Teesside University, TS1 3BX, UK)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Maryam Sharifi, Walter Ishie, Manaswini Acharya, et al. Production of red wine powders using foam-mat freeze-drying: Effects of egg white albumen and methyl cellulose on foam quality, powder characteristics, and tablet formation. Food and Bioproducts Processing 2026-09-01. DOI: 10.1016/j.fbp.2026.09.013. 原著ライセンス:CC BY.