著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:Foods
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
ステーキは好みに応じてミディアムやウェルダンなどの焼き加減で調理されます。著者らによると、加熱は牛肉のたんぱく質を酸化させ、その程度はたんぱく質の消化のされやすさと深く関わります。穏やかな加熱では構造がほどけて消化酵素が働きやすくなる一方、強い加熱では酸化と凝集が進み、消化を妨げることがあると説明されています。
ステーキには赤ワインが添えられることが多く、赤ワインには抗酸化作用を持つポリフェノール類(フェノール化合物)が多く含まれます。ただし、これまでの牛肉の消化研究は牛肉単独で調べたものが多く、一緒に口にする食品の挙動や相互の影響はあまり調べられていませんでした。
そこで研究チームは、焼き加減の違うステーキと赤ワインを一緒に消化させたとき、牛肉たんぱく質の酸化や消化のされ方と、ワインのフェノール化合物の挙動がどう関連するかを、双方向から調べました。
どのように調べたか
厚さ1センチの牛肉を約200度の電気グリドルで焼き、中心温度がおよそ61〜62度のミディアム、66〜67度のミディアムウェル、71〜73度のウェルダンの3段階を用意しました。これらを、胃と小腸の消化を模した試験管内の消化モデルで、赤ワインと一緒に、または水と一緒に消化させました。ワインだけを消化させた試料も比較に使いました。用いたワインは市販の赤ワイン1種類です。
たんぱく質については、酸化の目印となる「カルボニル基」の量、消化によってどれだけたんぱく質が減ったかを示す見かけの消化率、分解の進み具合、アミノ酸の量を測りました。ワインについては、ラジカル(反応性の高い分子)を消す能力と、没食子酸やレスベラトロール、エピカテキンなど選んだフェノール化合物の量を測りました。あわせて、消化後に液中へ溶け出し、吸収されうる状態になった割合を「見かけの生物学的接近性(バイオアクセシビリティ)」として算出しています。胃の段階と、胃から腸までの段階は、それぞれ別々に並行して実験されました。
主な結果
水と一緒に消化させた場合、カルボニル基の量は焼き加減が強いほど多く、胃の段階ではミディアムの6.6 µmol/gからウェルダンの14.4 µmol/gへと増えていました。赤ワインと一緒に消化させると、どの焼き加減でもカルボニル基の蓄積は少なく、胃の段階で13.1〜24.5%、胃から腸までの段階で44.5〜46.8%低い値でした。電気泳動による分析では、ワインと一緒の試料は胃の段階でたんぱく質の分解がより進んでいる様子が見られ、特にミディアムウェルで顕著でした。ただし腸の段階まで進むと、焼き加減による違いはほとんど見られなくなりました。
アミノ酸の量も、ワインと一緒に消化させた試料のほうが多く、ミディアムウェルとワインの組み合わせが胃の段階(80.6 mg/g)、腸までの段階(223.2 mg/g)ともに最も高い値でした。ただし著者らは、ワイン自体に含まれるアミノ酸や小さなペプチドの寄与を分けて測っていないため、この増加をすべて牛肉の分解促進によるものとは言えないと述べています。
ワイン側に目を向けると、ステーキと一緒に消化させた試料は、ワインだけの場合よりラジカルを消す能力が高くなっていました。ただし、ステーキだけを消化させた比較試料はこの測定に含まれていないため、肉由来の分解産物が寄与した可能性もあると著者らは注意しています。胃の段階では、没食子酸やレスベラトロールなど多くの化合物がワイン単独より多く検出された一方、エピカテキンなどは減っており、全体として焼き加減が強いほどフェノール化合物の量や見かけの生物学的接近性は低い傾向でした。腸までの段階では多くのフェノール化合物が胃の段階より減っていましたが、レスベラトロールの濃度はワイン単独のおよそ9.5〜12.3倍と高く、反対にp-ヒドロキシ安息香酸の見かけの生物学的接近性はワイン単独の47.2%から、焼き加減が強まるにつれ30.5%、26.7%、21.3%へと下がりました。
研究が示すこと
著者らは、焼き加減と赤ワインの同時摂取が、たんぱく質の消化とフェノール化合物の挙動の両方に異なる変化と関連していたと結論づけています。たんぱく質の消化の面では、ミディアムウェルが最も好ましい傾向を示しました。
一方で、使ったワインは1種類だけで、アルコールを除いたワインや精製したフェノール化合物との比較はしていません。そのため、観察された効果はフェノール化合物に特定されるものではなく、ワイン全体としての作用とみなすべきだと著者らは述べています。結果はあくまで試験管内の実験で見られた関連であり、仕組みの多くは推測の段階です。
それでもこの研究は、食品を単独で調べるだけでなく、実際の食事のように組み合わせた状態で消化を評価することの大切さを示しています。
原著論文の著者・所属:Taihong Liu(School of Food Engineering, Ludong University, Yantai 264025, China)、Shaoyun Xing(School of Food Engineering, Ludong University, Yantai 264025, China)、Shuyang Sun(School of Food Engineering, Ludong University, Yantai 264025, China)、Chao Du(School of Food Engineering, Ludong University, Yantai 264025, China)、Xinye Wang(School of Life Sciences, Ludong University, Yantai 264025, China)、Wenguang Jiang(College of Enology, Northwest A & F University, Yangling 712100, China; Ningxia Changyu Longyu Estate Co. Ltd., Yinchuan 750000, China)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Taihong Liu, Shaoyun Xing, Shuyang Sun, et al. Bidirectional Associations Between Steak Doneness and Wine Co-Digestion: Protein Oxidation, Digestibility, and Phenolic Bioaccessibility During In Vitro Gastrointestinal Digestion. Foods 2026-09-10. DOI: 10.3390/foods15183196. 原著ライセンス:CC BY.