ヨーグルトや発酵食品に含まれる「プロバイオティクス」というと乳酸菌をイメージする人が多いかもしれませんが、実は酵母の中にもプロバイオティクスとしての性質を持つものがあると考えられています。今回紹介する研究では、アルジェリアの伝統的な発酵食品からSaccharomyces属の酵母を分離し、その性質や安全性が詳しく調べられました。パンの発酵種として知られる「サワードウ」や、マリネしたピーマンといった、地域に根差した発酵食品が対象になっている点も興味深いところです。
研究チームは、これらの伝統的な発酵食品から酵母を分離し、遺伝子解析によって菌株を同定しました。その結果、サワードウとマリネしたピーマンのサンプルから、合計15株のSaccharomyces cerevisiae(サッカロミセス・セレビシエ)が得られたと報告されています。
研究でわかったこと
分離された15株について、プロバイオティクスとして働く可能性があるかどうかを調べるため、いくつかの実験室内(in vitro)試験が行われました。まず、体温に近い37℃で増殖できるかが確認され、すべての菌株がこの条件で生育できたとされています。また、消化管を通過する際に想定される胆汁酸(0.3%の濃度)や強い酸性環境(pH2.5)への耐性も調べられ、いずれの菌株も高い耐性を示したと報告されています。
腸内で定着するために重要とされる性質についても調べられました。菌同士がまとまる「自己凝集能」は24時間培養後に最大93.90%に達し、また15株のうち7株はキシレンに対する高い疎水性(44.60〜58.90%)を示したとされています。これらの性質は、腸の粘膜に付着しやすい可能性を示すものと説明されています。
さらに、すべてのS. cerevisiae株が良好な抗酸化活性を持ち、抗菌活性についても菌株ごとに強さは異なるものの一定の効果が見られたとされています。ただし、Listeria innocuaという菌に対しては効果が見られなかったと報告されています。
安全性に関わる項目も確認されており、溶血性、ゼラチン分解酵素、プロテアーゼ、ホスホリパーゼといった、有害となりうる性質はいずれの菌株にも見られなかったとされています。一方で、フィターゼという酵素の強い活性が全菌株に共通して見られ、これは植物性食品に含まれるミネラルの吸収しやすさを高めたり、栄養の吸収を妨げる成分の影響を減らしたりする可能性があるものとして紹介されています。
これらの結果を総合し、15株の中から5株のS. cerevisiaeが、プロバイオティクスとしての性質と安全性の両面で有望であると評価されました。研究では、これらの菌株が機能性食品分野や医療分野での活用候補になりうるとされています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
今回の内容は、実験室内での培養試験(in vitro)に基づく結果であり、実際にヒトが摂取した場合の効果を確認したものではない点に注意が必要です。あくまで一つの研究であり、結論が確定したわけではありません。今後、より詳しい検証が積み重ねられていく分野だと考えられます。
まとめ
この研究では、アルジェリアの伝統的な発酵食品から分離されたSaccharomyces cerevisiaeの中に、耐酸性・耐胆汁性、自己凝集能、抗酸化活性、安全性など、プロバイオティクスとして望ましいとされる性質を兼ね備えた菌株が見つかったと報告されています。地域の発酵食品が新たな機能性素材の探索対象になりうることを示す一例として、興味深い研究といえるでしょう。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:アルジェリアの伝統的発酵食品から分離されたSaccharomyces酵母株のプロバイオティクス特性と安全性に関するin vitro研究(モレキュールズ・2026年07月)