この研究は、トルコの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Food Science & Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

タルハナは、トルコで数百年にわたり広く食べられてきた発酵食品です。その発酵を主に担っている微生物は乳酸菌であることが知られていますが、研究チームは今回、あえて別の菌に注目しました。タルハナの試料からバチルス属(Bacillus)の菌株を分離し、種類を同定したうえで、プロバイオティクスとしての性質の一部を調べることを目的としたと報告しています。

プロバイオティクスとは、摂取することで人の健康に役立つと考えられている生きた微生物のことです。ただし体に入れて利用することを考えるなら、有用そうな性質があるかどうかだけでなく、その菌が害を及ぼす性質を持っていないかどうかを確かめる必要があります。この研究は、その安全性の確認と性質の評価を組み合わせたものです。

何をどのように調べたか

著者らは、さまざまな種類のタルハナの試料を集め、予備的なスクリーニング(ふるい分けの検査)を行ったうえで、53株の分離菌を選び出しました。これらはいずれもグラム陽性で、内生胞子(環境の悪化に耐えるための丈夫な休眠形態)をつくり、カタラーゼ試験が陽性で、運動性を持つという特徴を示したとされています。

安全性の確認としては、病原性に関わる生化学的な試験、すなわちレシチナーゼ活性、DNase(DNA分解酵素)活性、そして溶血活性の検査が行われました。さらに、菌が害を及ぼす働きに関係する10種類の病原性遺伝子(ビルレンス遺伝子)を全分離株について調べています。

プロバイオティクスとしての性質については、胆汁酸塩への耐性と、胃の中を模した条件での生存性が調べられました。これは、口から入った菌が消化管の厳しい環境を通り抜けられるかを見るための評価です。加えて、菌が腸の壁などに付着しやすいかの目安となる疎水性(ハイドロフォビシティ)、菌同士が集まる凝集性、バイオフィルム(菌が集まってつくる膜状の構造)の形成能、そして欧州の基準であるEUCASTに従ったバチルス属向けの抗生物質への感受性も評価されています。

報告された主な結果

病原性に関する試験では、53株すべてがレシチナーゼ陰性かつDNase陰性でした。溶血活性については、8株がガンマ溶血性(赤血球を溶かさない)で、残りはアルファ溶血性だったと報告されています。また、調べた10種類の病原性遺伝子は、どの分離株も保有していませんでした。

消化管環境への耐性は高く、胆汁酸塩に対する耐性は78.3%から97.3%、胃を模した条件での耐性は81.3%から99.5%という値が示されました。一方で疎水性はばらつきが大きく、14.6%から76.2%の範囲でした。24時間後の凝集性は50.4%から79.2%の範囲だったとされています。さらに、20株は強いバイオフィルム形成能を示し、EUCASTの基準によるバチルス属特有の抗生物質に対しては感受性を示したと報告されています。

この結果が示すこと

著者らは、この研究によってトルコのタルハナがプロバイオティクスとなりうるバチルス属菌株の供給源としての可能性を持つことが明らかになったと結論づけています。調べた分離株が病原性に関わる指標を示さず、消化管に近い厳しい条件でも高い割合で生き残ったという報告が、その根拠となっています。

身近な伝統的発酵食品の中に、これまで主役とされてきた乳酸菌とは別の、まだ十分に調べられていない菌の集まりが存在していることを示した研究といえます。

著者:Ayşe Avcı(Department of Food Engineering Sakarya University Sakarya Türkiye)、Esma Alemdar(Department of Food Engineering Sakarya University Sakarya Türkiye)、Elif Sezer(Department of Food Engineering Sakarya University Sakarya Türkiye)、İnci Cerit(Department of Food Engineering Sakarya University Sakarya Türkiye)、Fikriye Alev Akçay(Department of Food Engineering Sakarya University Sakarya Türkiye)、İbrahim Çakır(Department of Engineering Bolu Abant Izzet Baysal University Bolu Türkiye)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Ayşe Avcı, Esma Alemdar, Elif Sezer, et al. Safety Evaluation of Bacillus Isolates From Fermented Tarhana With Probiotic Potential. Food Science & Nutrition 2026-09-01. DOI: 10.1002/fsn3.72372. 原著ライセンス:CC BY.