プロバイオティクスといえば、ヨーグルトや発酵食品でおなじみの乳酸菌を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。しかし近年、Bacillus属という胞子(芽胞)を作る細菌の仲間が、プロバイオティクスの新しい候補として注目されているといいます。今回紹介する論文は、この芽胞形成プロバイオティクスと乳酸菌を組み合わせることで、発酵食品にどのような変化が生まれうるのか、また安全性の面でどのような課題や工夫があるのかを整理したものです。
「ポストバイオティクス」という言葉も本論文のキーワードです。これはプロバイオティクス菌そのものだけでなく、菌が発酵の過程で作り出す成分や、菌の働きによって生じる機能性に着目する考え方を指します。
研究でわかったこと
この論文によると、Bacillus属の芽胞形成プロバイオティクスは、多様な酵素を持ち、胞子を形成することで環境ストレスに対する耐性が高いという特徴があるとされ、こうした性質から新しいバイオテクノロジー的な応用の候補として期待されていると述べられています。
さらに、Bacillus属のプロバイオティクスと乳酸菌(LAB)を組み合わせて用いることで、互いの代謝活動を刺激し合ったり、基質の変換において協力し合ったりすることを通じて、発酵食品中のポストバイオティクス含有量を高め、風味などの官能特性や安全性を向上させる可能性が示されているといいます。こうした特徴を活かし、Bacillus属と乳酸菌を意図的に組み合わせて発酵させる「共発酵」が、機能性や成分の生体利用性を高めた食品を作るための戦略として応用されてきたことが紹介されています。
また、動物を用いた研究(in vivo研究)では、Bacillus属菌の単独投与、あるいは乳酸菌プロバイオティクスとの併用投与によって、抗生物質の使用に伴う腸内細菌のバランスの乱れや下痢、代謝性疾患や肥満、炎症性腸疾患、アレルギーや免疫力の低下といった、さまざまな状態の改善に関わる効果が報告されているとまとめられています。
一方で、Bacillus属プロバイオティクスの利用は、体が弱っている人など一部の消費者にとって健康上のリスクとなりうる可能性があることにも論文は触れています。そこで代替策として挙げられているのが「パラプロバイオティクス」、すなわち不活化された菌体です。これは生きた菌ではないものの、さまざまな生体機能を調節することが示されているといい、機能性食品やサプリメントの安全性を高める選択肢になりうると論じられています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この記事で紹介した内容は、Bacillus属プロバイオティクスや乳酸菌との組み合わせに関するこれまでの知見を整理した論文に基づくものであり、特定の食品や成分の効果を断定するものではありません。動物実験で報告されている効果についても、ヒトでの効果を直接保証するものではない点に注意が必要です。あくまで一つの研究・レビューであり、これによって結論が確定したわけではありません。
まとめ
芽胞を作るBacillus属の菌と、なじみ深い乳酸菌を組み合わせる「共発酵」は、発酵食品の機能性や風味、安全性を高める可能性がある手法として紹介されています。同時に、生きた菌を使うことのリスクに配慮し、不活化した菌体(パラプロバイオティクス)を活用するという安全性への視点も示されており、プロバイオティクス研究が広がりを見せていることがうかがえます。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:乳酸菌および芽胞形成プロバイオティクスのポストバイオティクス機能性と安全性評価(ジャーナル・オブ・ファンクショナル・フーズ・2026年08月掲載予定)