著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。
掲載誌:International Journal of Economics and Management Research
ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
見学や体験を通じて地域の農業や文化、環境について学ぶ「教育観光」と、その土地の伝統料理を味わう「伝統食観光」は、旅行者に学びのある体験を提供しながら、地域の経済を支える手段としても注目されています。
研究チームは、インドネシア・スマランにあるスミリル集落(Dusun Semilir)を対象に、教育観光と伝統料理という地域の資源を組み合わせた観光地づくりの戦略を調べました。目的は、観光地としての魅力を高めながら地域住民の経済的な力を伸ばし、住民に十分な恩恵が届く持続可能な観光のあり方を明らかにすることです。
どのように調べたか
研究は質的記述的な手法で行われました。数値で検証するのではなく、現地の人々の考えや経験、地域の状況を詳しく聞き取り、全体像を描く方法です。
調査には四つの方法が使われました。一つ目は45人へのアンケートです。対象は観光・飲食の事業者、観光意識グループ(ポクダルウィス:住民がつくる観光振興の組織)のメンバー、村の行政関係者、集落を訪れた観光客で、地域の観光に詳しい人が選ばれました。二つ目は、観光地の管理者、伝統料理の事業者、地域の指導者、地元観光局の担当者など12人への詳しい聞き取りです。三つ目は3か月にわたる現地観察で、施設の状態、体験活動の内容、料理の種類、運営者と観光客のやりとりなどが確かめられました。四つ目は村の開発計画やグループの活動報告、観光客の訪問記録などの資料調査です。研究チームは、異なる情報源や方法で得たデータを突き合わせて、結果の確かさを高めたとしています。
主な結果
論文によると、スミリル集落には地域の知恵、スマランの多彩な伝統料理、観光客向けの体験に仕立てられる農業や畜産の活動といった強みがあります。アンケートでは、地元事業者の78%が教育観光の取り組みに参加することに強い意欲を示し、訪問した観光客の82%が文化の学びと本格的な伝統料理の体験を組み合わせた観光プログラムに強い関心を示しました。
体験型の観光資源を分野別に整理したところ、準備が最も進んでいたのは伝統料理でした。スマラン名物の春巻き「ルンピア」の料理教室、伝統菓子「ウィンコ・ババット」作りのワークショップ、ミルクフィッシュ(サバヒー)を使った料理「プレスト」の製造実演などがこれにあたります。料理教室やワークショップはこれまで不定期に開かれ、国内外の観光客から好評だったといいます。農業・畜産と環境学習は中程度、地域の芸術や竹細工、村の歴史語りといった文化・工芸の分野は準備が遅れていると評価されました。調査した18の飲食事業者のうち15は、2世代を超えて続く家族経営で、伝統的なレシピを守り続けていました。
一方で課題も明らかになりました。ポクダルウィスは25人で構成されていますが、多くは部分的にしか活動しておらず、観光地の運営、体験プログラムの企画、デジタルでの宣伝の力を伸ばす必要があります。行政や大学など外部との連携も限られていました。施設面では、駐車場が約20台分しかないこと、観光案内所がないこと、案内表示や観光地図が不足していること、写真撮影スポットが整備されていないことなどが優先課題とされました。屋台の衛生や接客の水準にも改善の余地があります。宣伝については、多くの事業者がInstagramやFacebookを使っているものの個別の発信にとどまり、デジタル発信の工夫やインフルエンサーとの協力を十分理解している事業者は40%にとどまりました。
提案された戦略とその意味
これらの結果をもとに、研究チームは総合的な戦略を示しています。テーマ別の体験ツアーや実際に手を動かす活動で教育的な魅力を強めること、伝統料理の本来の味や作り方を守りながら現代的な工夫を加えること、衛生と接客の水準を上げること、駐車場や案内所などの施設を整えること、ポクダルウィスと村営企業(ブムデス)による地域の運営体制を強めることが挙げられています。
さらに、行政、企業、大学、地域社会、メディアの5者が協力する「ペンタヘリックス」と呼ばれる連携の仕組みを生かすこと、SNSや料理フェスティバルを組み合わせて地域全体としてまとまった発信をすることも提案されています。
この研究は、ひとつの集落を詳しく調べ、伝統料理という既にある資源が観光の柱になりうる一方で、施設や組織、発信の面に課題が残っていることを具体的に示しました。著者らは、この成果がスミリル集落の観光づくりへの実践的な手がかりとなり、インドネシア国内の同じような地域でも参考にできる可能性があると述べています。
原著論文の著者・所属:Santi Santi(Sekolah Tinggi Ekonomi Pariwisata Indonesia)、Dyan Triana Putra(Sekolah Tinggi Ekonomi Pariwisata Indonesia)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Santi Santi, Dyan Triana Putra Strategy for Developing Man-Made Tourism Destinations Based on Culinary Tourism in Dusun Semilir, Semarang, Indonesia. International Journal of Economics and Management Research 2026-09-02. DOI: 10.55606/ijemr.v5i2.771. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.
本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。