著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。
掲載誌:Jurnal EMT KITA
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
インドネシアでは、零細・中小企業が経済を支える重要な担い手とされています。近年、金融とデジタル技術を組み合わせた「フィンテック」が広がり、こうした事業者にとって売上を伸ばす手段の一つとして期待されています。
研究チームが注目したのは、事業者に特に関係が深い二種類のサービスです。一つは「ペイメントゲートウェイ」です。カード、銀行振込、電子マネーなどによる支払いを、オンラインで安全に処理する決済の仲介サービスを指します。もう一つは「P2P(ピア・ツー・ピア)融資」です。銀行を通さず、お金を貸したい人と借りたい人をインターネット上で直接結びつける仕組みです。
著者らによると、南スマトラ州パレンバン市のスブラン・ウル地区では飲食系の小規模事業者が増えています。一方で、デジタル技術に不慣れな事業者や、P2P融資の利点とリスクを十分に理解していない事業者もいます。そこで研究チームは、この地区の飲食系事業者を対象に、二つのサービスそれぞれと収入の伸びとの関係、および二つを合わせたときの関係を調べました。
調査の方法
調査対象は、地区で公式に登録されている約1,200の飲食系零細事業者です。このうち、少なくともどちらか一方のサービスを利用したことがある事業主または運営者100人を無作為に選びました。
回答者には、5段階評価(「全くそう思わない」から「とてもそう思う」まで)の質問紙に答えてもらいました。決済サービスについては、使いやすさ、取引の速さ、安全性などを尋ねました。P2P融資については、借りやすさ、資金を受け取るまでの速さ、プラットフォームへの信頼などを尋ねました。収入の伸びについては、売上や利益の増加、経営の安定などを尋ねています。つまり、収入の変化は帳簿の数字ではなく、回答者自身の評価として測られています。
分析には「重回帰分析」を用いました。これは、複数の要因が一つの結果とどの程度結びついているかを同時に推定する統計手法です。研究の理論的な土台には「技術受容モデル」を置いています。これは、人が新しい技術を使うかどうかは、主に「使いやすいと感じるか」と「役に立つと感じるか」で決まるという考え方です。
主な結果
分析の結果、決済サービスとP2P融資はいずれも、収入の伸びと統計的に有意なプラスの関係を示しました。著者らはこれを「正の影響」と表現しています。
二つを比べると、決済サービスの係数は0.391、P2P融資の係数は0.183でした。決済サービスのほうが、収入の伸びとより強く結びついていたことになります。著者らはこの理由について、決済サービスの利点は取引のたびに直接感じられる日常的なものだからだと考察しています。具体的には、支払い方法が増えてより多くの客に対応できること、現金の回収が速くなること、取引記録が残って資金管理がしやすくなることを挙げています。
二つのサービスを合わせると、収入の伸びに関する回答のばらつきの57.3%を説明できました。残りの42.7%は、モデルに含まれていない別の要因によるものです。P2P融資の結びつきが比較的弱かった点について、著者らは、デジタル金融の知識やプラットフォームへの信頼、借入を管理する力などが関わっている可能性を指摘しています。また、P2P融資は銀行融資より金利が高く、借りすぎのリスクにも注意が必要だと述べています。
この研究が示すこと
この研究は、パレンバン市の一地区の飲食系事業者について、決済と資金調達の両面でデジタル金融サービスを活用することが、収入の伸びに対する事業者自身の評価と結びついていることを示しました。研究チームはこの結果から、二つのサービスを組み合わせて使うことが有効な戦略になりうると結論づけています。
ただし、著者らも認めているとおり、調査は一地区に限られ、質問紙による回答に基づいています。また、収入の伸びの半分近くは今回の二つの要因では説明できていません。それでも、身近な決済の仕組みと融資へのアクセスが小さな飲食店の経営とどう関わっているかを、現場の事業者の声から具体的に示した点に、この研究の意味があります。
原著論文の著者・所属:Anisa Padila(Universitas Bina Darma)、Andrian Noviardy(Universitas Bina Darma)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Anisa Padila, Andrian Noviardy. Pengaruh Payment Gateway dan Peer-to-Peer (P2P) Lending terhadap Peningkatan Pendapatan UMKM Bidang Kuliner di Kota Palembang. Jurnal EMT KITA 2026-11-01. DOI: 10.35870/emt.v11i1.7741. 原著ライセンス:CC BY.