掲載誌:Panuntun.
ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的と背景
ホテルの評価は客室の設備や快適さだけでなく、提供される料理や飲み物の質にも左右されます。なかでもケーキやパン、プディングなどを作る製菓部門(ペストリー部門)の製品は、宿泊客の食事の満足度に関わる要素です。この研究は、インドネシア北スマトラ州のトバ湖地域にある4つ星ホテル、ホテル・ナイアガラ・パラパットの製菓部門が、スポンジケーキの品質をどのように保っているのかを明らかにすることを目的としています。
同ホテルのスポンジケーキは、レッドベルベット、モカケーキ、ブラックフォレスト、クレポンケーキ、ドリアンケーキなどがあり、売れ筋商品の一つとされています。一方、著者らは現場実習の際に、品質の安定性に関わる問題に気づいたと述べています。宿泊客からは、ドリアンケーキのドリアンジャムに虫が混じっていた、レッドベルベットからボルトが見つかった、クリーム層に異物の繊維が入っていたといった衛生面の苦情が寄せられていました。著者らは、こうした苦情の背景に、特定の原材料の制約や、製造中の従業員の注意不足・監督不足があると見ています。
調べ方
研究チームは、数値で測るのではなく、現場の様子や人々の言葉を詳しく記述する「記述的質的研究」という方法をとりました。データは、現場の直接観察、聞き取り(インタビュー)、記録資料の収集によって集めています。
聞き取りの相手は、研究の焦点に照らして意図的に選んだ5人です。製菓部門の運営を支え監督する総料理長(エグゼクティブシェフ)を中心的な情報提供者とし、その下で働く副料理長(ドミシェフ)と、日々の製造を担う製菓スタッフ3人が加わりました。勤務年数はおよそ3年から7年です。
主な報告結果
まず品質の保ち方について、論文はスポンジケーキの品質を味、香り、食感、見た目、清潔さの5つの観点から整理しています。スタッフは、以前から試されてきたレシピを守って材料を増減させないこと、材料を正確に量ること、決められた作業手順(SOP、標準作業手順書)に従うこと、オーブンの温度を基準どおりに保つこと、質のよい材料を使うことを挙げました。衛生面では、体調が良いことを確かめ、手と爪を清潔にし、指輪などを着けずに作業すること、そして清潔な器具を使い、作業場や保管場所をきれいに保ってほこりや汚れの混入を防ぐことが語られています。
次に、品質維持を妨げる要因について、著者らは内部要因と外部要因に分けて報告しています。内部要因として挙げられたのは、レシピや材料の分量が一定しないこと、オーブン温度の設定が適切でないこと、器具の状態や質がよくないこと、作業中の注意不足です。外部要因としては、原材料の質の変化、天候の変化、原材料価格の変動が挙げられました。論文は、内部要因が食感や形、仕上がりの安定性に直接影響しうると述べています。
さらに、苦情への対応と再発防止について、総料理長は、まず宿泊客の話を聞いて共感を示し、新しい製品と交換したうえで、原因の調査と内部での評価を行うと説明しました。そのうえで手順の厳格な運用、スタッフの研修、製造室の管理を進めるとしています。副料理長は、スタッフが抱える問題を探し、仕事ぶりを評価し、改善策をとる役割を担っていると語りました。結論では、製造工程の監督や、提供前の製品の点検も対応策として挙げられています。
研究から伝わること
著者らは、この製菓部門がスポンジケーキの品質と衛生を保つうえで重要な役割を果たしていると結論づけています。決められた手順の運用、材料の扱いへの注意、製造工程の監督、衛生管理、継続的な評価を通じて、ホテルの基準に沿った製品を保てるというのが論文の見方です。
一つのホテルの現場の声を丁寧に拾った事例研究であり、身近なケーキの品質が、レシピを守る、材料を正確に量るといった日々の地道な作業と、問題が起きたときの組織的な対応によって支えられている様子を伝えています。
原著論文の著者・所属:Lidia Natalia Manalu(Akademi Pariwisata ULCLA)、Rut Irmawati Gultom(Akademi Pariwisata ULCLA)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Lidia Natalia Manalu, Rut Irmawati Gultom Peranan Pastry Section Dalam Menjaga Kualitas Produk Sponge Cake Di Hotel Niagara Parapat. Panuntun. 2026-09-01. DOI: 10.61476/bna61a04. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.
本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。