著者の所属・活動拠点の国は、ロシアです。

掲載誌:KSTU News

ライセンス: CC BY 4.0 確認元: 論文掲載ページ

研究の目的

南極海に豊富なナンキョクオキアミは、漁業資源を広げる候補として注目されています。著者らによると、オキアミの主な加工品はゆでてから冷凍した肉で、多くはアジア料理向けの国際市場に出荷されています。一方、ロシア国内で需要が伸びている魚肉の成形半製品(形を整えて冷凍した魚団子などの調理前食品)には、オキアミ肉を使った製品がありません。生のまま冷凍したオキアミのすり身については研究がありますが、ゆで冷凍したオキアミのすり身を成形品に使った報告はなかったといいます。

これまでの研究では、オキアミのすり身にイカやアジを混ぜる方法が主に検討されてきました。しかし、これらの魚種は近年価値が上がっているため、代わりの原料が求められています。そこで研究チームは、深海の中層にすむハダカイワシに着目しました。目的は、ゆで冷凍オキアミのすり身と混ぜて成形品をつくる際に、ハダカイワシのすり身がアジのすり身の代わりとして技術的に使えるかを確かめることです。比較は、食感を整える添加物を加えずに行われました。

何を調べたか

材料には、中国製のゆで冷凍オキアミ肉を実験室で挽き、遠心分離で水分を除いたすり身を使いました。ハダカイワシとアジは2025年秋に調査船で冷凍状態で確保され、頭と内臓を除いてから、骨や皮をこして身をすり身にする装置にかけられました。著者らが測った成分値では、ゆでたオキアミ肉の水分を保つ力はハダカイワシやアジより低く、ゆで冷凍オキアミのすり身は崩れやすい性質をもつと説明されています。

研究チームは、魚のすり身の割合を0%から100%まで変えてオキアミのすり身と混ぜました。食塩を1%加えた混合すり身を2℃で12時間置いてから、重さ35gの魚団子を手で成形し、冷凍しました。加熱する試料は解凍してポリ袋に入れ、沸騰したお湯で15分間ゆでました。

評価では、加熱前の団子について、どのくらいの力で形が崩れ始めるか(限界せん断応力)と、縦と横の直径の比から見た形の保ちやすさを測りました。加熱後の団子については、円すい形の器具を一定の重さで押し込み、その沈み込みから硬さ(針入応力)を求めました。あわせて、混ぜたすり身ののびやすさ(可塑性)を調べ、見た目やにおい、食感を点数で評価する官能評価も行いました。

主な結果

著者らによると、魚のすり身を10%加えただけでも、加熱前後どちらの団子でも構造や力学的な性質に大きな影響が見られました。魚のすり身はゆでたオキアミのすり身よりずっとのびやすく、オキアミの粒どうしをつなぐ役割を果たすと考えられています。

ハダカイワシでは、団子の性質が急に変わる境目の割合が、加熱前では40%、加熱後では20%と報告されています。加熱後の硬さは、オキアミだけの団子で12840Pa、ハダカイワシ10%で2230Paまで下がり、20%で4020Paへと急に上がりました。形の保ちやすさでも20%で値の跳ね上がりが見られました。

アジと比べると、ハダカイワシを使った団子は全体に性質が劣りました。加熱前の形の保ちやすさは、ハダカイワシが40%未満では85%を超えなかった一方、アジでは常に95%を上回りました。加熱後もアジを使った団子は同じ配合割合で硬さが高く、アジ10%で5000Pa、30%を超えると6550Paに達しました。この差は官能評価の食感や形の点数でも確認されています。なお、どちらの魚でも80%で硬さが大きく上がった理由は、まだ分かっていないと著者らは述べています。

においについては、はっきりした魚くささがない状態(評価「良」)は、オキアミの割合がアジとの組み合わせで60%以上、ハダカイワシとの組み合わせで80%以上のときに見られました。えびのような香りが強く感じられる評価「優」は、アジ対オキアミ30対70、ハダカイワシ対オキアミ20対80の配合から記録されています。

研究が示すこと

研究チームは、脂の少ない時期にとれたハダカイワシであれば、ゆで冷凍オキアミと組み合わせた成形半製品に使えるとまとめています。ただし、ハダカイワシのすり身の割合は20%以下にすることが勧められ、必要に応じて食感を整える添加物で配合を調整することも挙げられています。価値が上がっているアジの代わりとなる原料の可能性を、具体的な配合の目安とともに示した研究といえます。

原著論文の著者・所属:A. V. Andriukhin(Atlantic branch of Research Institute of Fisheries and Oceanography ("AtlantNIRO"))、M. L. Vinokur(Atlantic branch of Research Institute of Fisheries and Oceanography ("AtlantNIRO"))、V. A. Galdukevich(Atlantic branch of Research Institute of Fisheries and Oceanography ("AtlantNIRO"))、I. O. Morozov(Atlantic branch of Research Institute of Fisheries and Oceanography ("AtlantNIRO"))、Ya. M. Morozova(Atlantic branch of Research Institute of Fisheries and Oceanography ("AtlantNIRO"))

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):A. V. Andriukhin, M. L. Vinokur, V. A. Galdukevich, et al. Prospects for the use of boiled-frozen krill meat and minced lantern fish in the technology of molded semi-finished fish products. KSTU News 2026-10-28. DOI: 10.46845/1997-3071-2026-83-43-56. 原著ライセンス:CC BY.