著者の所属・活動拠点の国は、ブラジルです。
掲載誌:Ciência na Prática
ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文掲載ページ
研究の目的
ブラジルでは、野菜や果物の皮や茎などが、栄養価が知られていないために大量に捨てられています。著者らは、こうした普段は捨てられがちな部分まで調理に使う「食品の丸ごと活用」を広めれば、食品ロスを減らし、食事の栄養を高め、家計の節約にもつながると考えました。
研究チームは、食料を寄付企業から福祉団体へ届けるフードバンク事業「Sesc Mesa Brasil」のエスピリトサント州プログラムが支援する家族を対象にしました。目的は二つです。一つは、家族の食料不安の程度と、食品の丸ごと活用に関する知識を調べること。もう一つは、家族が実際にそれを実践できるよう講習を行うことです。
調べた方法
研究は、調査と実践的な働きかけを組み合わせる「アクションリサーチ」として行われました。州都ビトリアを中心とする大都市圏で、プログラムが支援する3つの団体に通う家族の代表33人が参加しました。うち32人が女性です。データは2024年9月から10月に集められました。
参加者とは3回会いました。1回目はオンラインのアンケートで、年齢、学歴、世帯収入などの基本情報と、食品の活用や廃棄に関する知識を尋ねました。食料不安の程度は、ブラジルで使われる調査票「EBIA」で測りました。EBIAは過去3か月の食生活について14の質問に「はい・いいえ」で答えるものです。「はい」の数に応じて、食料が足りている状態から、軽度・中等度・重度の食料不安までに分類されます。
2回目は参加者同士の話し合いの場でした。食品ロスが環境や経済に与える影響、リサイクルや家庭での堆肥づくり、皮や茎、種の使い方などを取り上げました。最後に、ズッキーニを丸ごと使ったケーキを試食しました。3回目は2団体の調理場で料理講習を開き、計18人が参加しました。メニューは、トマトのケーキ、じゃがいもとブロッコリーのコロッケ、バナナの皮を使ったマヨネーズ、にんじんの手作り炭酸飲料です。食材は、プログラムで多く寄付される野菜や果物から選ばれました。参加者は顔の表情の絵を使った評価票で味などを評価し、講習の最後には25のレシピを載せた電子書籍を受け取りました。
主な結果
食品の丸ごと活用について「聞いたことがある」と答えた人は39.4%で、60.6%は知りませんでした。皮、茎、種などをまったく利用していない人は57.6%でした。家庭で最も多く捨てられている部分は皮で、60.6%が挙げました。使わなかった部分をごみとして捨てる人は54.5%でした。
世帯収入が最低賃金1か月分以下の人は57.6%でした。EBIAの結果では、81.8%の家族が何らかの程度の食料不安を抱えていました。そのうち中等度の食料不安に当たる家族は全体の39.4%でした。中等度とは、食料が尽きないよう食事の量や質を減らさざるを得ない状態を指します。
料理講習のメニューは、いずれも参加者に高く受け入れられたと著者らは報告しています。「とても気に入った」と答えた人の割合は、じゃがいもとブロッコリーのコロッケが83.3%と最も高く、手作り炭酸飲料が72.2%、トマトのケーキとバナナの皮のマヨネーズがそれぞれ66.7%でした。話し合いの場で出したズッキーニのケーキも、味や食感が家族の予想を上回ったと述べられています。
この研究が示すこと
この研究は、食料不安を抱える家族の多くが、皮などの食べられる部分を活用する方法を知らずに捨てている実態を描き出しました。そのうえで、身近な寄付食材を使った手軽な料理を、参加者自身が作って味わう講習が好意的に受け止められたことを報告しています。食料支援の現場で、食材を届けるだけでなく、その使い方を実地で伝える取り組みの一例を示した研究といえます。
原著論文の著者・所属:Janine dos Santos Martins(Centro Universitário Salesiano)、Paula Regina Lemos de Almeida Campos(Centro Universitário Salesiano)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Janine dos Santos Martins, Paula Regina Lemos de Almeida Campos. AVALIAÇÃO E CAPACITAÇÃO DE PESSOAS EM VULNERABILIDADE SOCIAL SOBRE O APROVEITAMENTO INTEGRAL DOS ALIMENTOS ATENDIDA PELO MESA BRASIL-ES. Ciência na Prática 2026-10-29. DOI: 10.65458/v5n1.0120. 原著ライセンス:CC BY.