牛肉やハム、ソーセージといった赤身肉・加工肉の摂取を控えるべきだという指導は多くの食事ガイドラインに登場します。では、鶏肉や魚だけを食べる「白身肉のみ」の食事や、肉を一切食べない「ベジタリアン」の食事は、実際に死亡リスクの低さと関連しているのでしょうか。アメリカがん協会(American Cancer Society)の研究チームが、大規模な追跡調査のデータを使ってこの疑問を検証しました。

約100万人を最長38年追跡した調査

この研究は、アメリカがん協会が1982年に開始した大規模コホート「Cancer Prevention Study-II(CPS-II)」のデータを用いています。ベースライン時点で30〜95歳だった参加者のうち、食事調査が不完全な人や身長・体重データに問題がある人などを除いた998,378人(男性45%)が解析対象となりました。追跡期間は2020年末まで、平均27.5年(最長38.5年)に及び、この間に626,017人が死亡しています。

食事の分類には、28種類の食品項目について週に何日食べるかを尋ねる簡易な質問票が使われました。このうち牛肉・豚肉・レバー・ハム・スモークミート・フランクフルト/ソーセージの6種類を「赤身肉・加工肉」、鶏肉と魚を「白身肉」として扱い、参加者は次の5グループに分けられています。赤身肉・加工肉を週6日以上食べる「高摂取」(37%)、週4〜6日未満の「中摂取」(31%)、週0.5〜4日未満の「低摂取」(31%)、赤身肉・加工肉をほとんど食べず鶏肉や魚は食べる「白身肉のみ」(1%)、そして肉も魚もほとんど食べない「ベジタリアン」(0.4%)です。白身肉のみとベジタリアンを実践している人は全体のごく一部にとどまりました。

解析には、年齢のほか性別・人種/民族・学歴・婚姻状況・居住地域といった人口統計学的要因、喫煙状況・飲酒量・身体活動量・睡眠時間などの生活習慣、さらに持病の有無や体格指数(BMI)まで段階的に調整したコックス比例ハザードモデルが用いられました。

肉の種類・量と死因別死亡リスクの関連

解析の結果、赤身肉・加工肉の摂取量が「高摂取」の人と比べて「低摂取」の人では、全死因死亡、心疾患死亡、がん死亡のリスクが複数の集団区分にわたって1〜5%低く、脳卒中による死亡リスクも全体で4%低いという関連が見られました(ハザード比0.96)。ただし、この脳卒中との関連については、性別・喫煙・BMI・年齢層による違いは確認されませんでした。

白身肉のみの食事については、対象者全体では明確な関連は見られなかったものの、特定の集団に限ると全死因死亡リスクの低さとの関連が示されました。具体的には、男性で5〜7%低いという関連(ハザード比0.93)、健康的な体重の人で同程度低いという関連(ハザード比0.95)、ベースライン時50〜64歳だった人で低いという関連(ハザード比0.94)が見られています。50〜64歳のグループでは、ベジタリアンの食事でもほぼ同様の関連(ハザード比0.94)が確認されました。また、80歳以上まで生存した参加者では、白身肉のみの食事は全死因死亡(ハザード比0.94)とがん死亡(ハザード比0.91)のリスクの低さと関連していました。これら以外の組み合わせでは、統計的に意味のある関連は確認されなかったと報告されています。

なお、参加者の食事内容を見ると、赤身肉・加工肉の摂取量が多いグループほど乳製品・マーガリン・卵・でんぷん質野菜・精製穀物の摂取量も多い傾向があり、逆に白身肉のみのグループは乳製品・マーガリン・卵・穀物全般の摂取量が最も少なかったことも報告されています。死因の内訳では、心疾患とがんが主要な死因で、がんによる死亡のうち気管・気管支・肺がんが24%を占め、大腸がん(9%)、乳がん(8%)、前立腺がん(7%)、膵がん(7%)が続いていました。

この研究を読むうえで押さえておきたい点

著者らは、白身肉のみやベジタリアンの食事を実践している参加者が全体のごく一部(それぞれ1%未満)にとどまったことを、この研究の制約として挙げています。少人数の集団を対象とした解析になるため、結果の精度には限りがあります。また、食事調査は簡易な質問票による自己申告であり、野菜全般・全粒穀物・柑橘類の摂取量などの重要な食事要因を十分に捉えきれていない点も、感度分析でのみ補足的に調整したと述べられています。

さらに、この研究は特定の食品を原因として死亡リスクを下げると証明するものではなく、あくまで食事パターンと死亡リスクとの「関連」を観察した結果です。著者らは、赤身肉・加工肉を除いた食事が特定の集団でリスクの低さと関連する可能性はあるとしつつ、こうした食事パターンを対象とした大規模な研究がさらに必要だと結論づけています。

まとめ

今回の研究では、赤身肉・加工肉の摂取を控えることが、全死因および心疾患・がん・脳卒中による死亡リスクのわずかながら統計的に意味のある低さと関連していたと報告されています。白身肉のみやベジタリアンの食事についても、性別や年齢層など一部の集団で死亡リスクの低さとの関連が見られましたが、これは一つの観察研究の結果であり、因果関係を示すものではありません。今後、こうした食事パターンを対象とした大規模な研究による検証が待たれます。

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Kelly C Cara, Joan Sabaté, Terryl J Hartman, et al. Associations between White Meat-Only and Vegetarian Diets with Mortality from All Causes, Heart Diseases, Cancers, and Stroke in the American Cancer Society’s Cancer Prevention Study-II. カレント・デベロップメンツ・イン・ニュートリション (2026). DOI: 10.1016/j.cdnut.2026.109438.