お酒を飲み始めた年齢は、その後の健康にどんな影響を及ぼすのでしょうか。未成年のうちからお酒に親しむことが、何十年も先の寿命に関係しているとしたら、少し意外に感じる方もいるかもしれません。今回紹介するのは、中国の高齢者を対象に、19歳未満で飲酒を始めた人とそれ以降に飲酒を始めた人、まったく飲まない人とで、その後10年間の死亡リスクに違いがあるかを調べた研究です。

研究でわかったこと

この研究は「中国高齢者健康長寿調査(CLHLS)」のデータを用いた前向きコホート研究で、2008年から2018年にかけて65歳以上の7,187人を10年間追跡しました。参加者は、初めて飲酒した年齢(AFD:Age at First Drink)に基づいて、「飲酒しない人」「19歳未満で飲み始めた早期飲酒群」「19歳以降に飲み始めた非早期飲酒群」の3つに分類されました。なお19歳は中国における法定飲酒年齢にあたります。研究チームは、社会人口統計学的な要因や生活習慣、食事の質(植物性食品優位の指標であるhPDI)、BMI、慢性疾患の有無などを段階的に調整したうえで、全死因死亡率との関連をCox比例ハザードモデルで解析しました。

その結果、飲酒しない人と比べて、19歳未満で飲酒を始めた早期飲酒群では、全死因死亡のリスクが16%高いという関連が示されました(ハザード比1.16、95%信頼区間1.01〜1.32)。一方、19歳以降に飲酒を始めた非早期飲酒群では、統計的に有意な関連は見られなかったとされています。

さらに早期飲酒群の中で飲酒量と死亡リスクの関係を調べたところ、1日1杯以下を基準とした場合、1日3杯以上飲む人では死亡リスクが38%高いという用量反応関係が観察されました(ハザード比1.38、95%信頼区間1.06〜1.79、傾向性のp値=0.015)。この関連は特に、75歳未満の比較的若い高齢者、心疾患を持つ人、認知症を持つ人、配偶者と同居している既婚者において、より強く見られたと報告されています。また、慢性疾患のある人や追跡開始後まもなく死亡した人を除外した解析や、傾向スコアマッチングといった感度分析を行っても、結果は大きくは変わらず頑健であったとされています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は中国の高齢者を対象とした観察研究であり、飲酒開始年齢と死亡リスクとの間に統計的な関連が示されたものであって、早期飲酒が死亡の直接的な原因であると断定するものではありません。研究チームは、中国人集団はアルコール代謝に関わる遺伝的変異を持つ人が多いことを研究の背景として挙げていますが、他の地域や集団でも同様の関連が見られるかどうかは、この要旨だけからは分かりません。あくまで一つの研究であり、これだけで結論が確定したわけではない点には注意が必要です。

まとめ

今回紹介した研究では、中国の高齢者7,187人を10年間追跡した結果、19歳未満での飲酒開始が全死因死亡リスクの上昇と関連していることが示唆され、特に多量飲酒者や比較的若い高齢者、心疾患・認知症を持つ人においてその関連が強い可能性が報告されました。飲酒習慣と健康の関係を考えるうえで、興味深い知見を提供する研究といえそうです。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:19歳未満での飲酒開始と中国高齢者における全死因死亡率:10年間の前向きコホート研究(フロンティアーズ・イン・ニュートリション・2026年07月)